劇場公開日 2013年7月20日

「ちょっとちぐはぐ?」風立ちぬ kevinさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0ちょっとちぐはぐ?

2021年8月10日
PCから投稿

一番印象に残っているのは、菜穂子が亡くなった時、次郎がぼろぼろと泣いているシーンなんだけど、全編通じて淡々としていたので、なんかわざとらしく感じていまいちのめり込めなかった。すべてを捨てて、飛行機にかける人生を深く描くわけでもなく、戦史に残る零戦にまつわるドラマを深く描くわけでもなく、なんなんだろう、このとってつけた感は。誰かが書いていたように、予告編は素晴らしかったし、ユーミンのひこうき雲は涙が出るほど美しい。この曲を体現する映画を作ってくれていたら、きっと素晴らしい映画になっていたと思うのに。

思うに宮崎監督は、観客におもねるのがいやだったんだろう。だから、二郎というどこか非人間的な主人公を正直に描くことに執着し、観客が感情移入できなくても気にしなかった。戦闘機大好きなくせに、「戦争アカン」という、左翼思想にひきずられて、零戦の栄光と滅亡のドラマを描くこともしなかった。

美しいものは美しく、好きなものは好きと開き直って、もっと素直に監督の世界を展開してくれていたら、もっと良かったのにと思う。作品がすべてとするならば、これが宮崎監督の限界だったのかもしれない。残念。

kevin