「いちばんの映像シーンは……」風立ちぬ お水汲み当番さんの映画レビュー(感想・評価)
いちばんの映像シーンは……
「風立ちぬ」の劇場予告編は、4分間もの作品で、ユーミンの歌がまるまる一曲流れる、内容も感動の作品でした。
非常に良く出来た予告編だったと思います。
予告編を観て思ったこと。
日本の立場を世界中に映像芸術によって伝えられる人は、日本には宮崎駿しか適任者がいないのかも知れぬということです。
そして宮崎駿はその予告編の中で、「貧しかった日本」をキーワードとして、宮崎駿から見た歴史観を世界に伝えようと映画を作った……のだ、と私は予想していました。
関東大震災。相次ぐ銀行破綻。そして第二次世界大戦。
あるいは不治の病だった結核。高原のサナトリウム。
これらの要素が、予告編には一つのストーリーを構成するように散りばめられ、それもあって、私はこの作品を見たいと心から待ち望んでいたのでした。
作品を見る前に堀辰雄の「風立ちぬ」も読み、いっそうその思いを強くしていました。
で、現物を観て思ったこと。
こりゃ、予告編の方が、ずっと良かったな、ってことでした。
というよりもあの予告編こそが「珠玉の名作」だったのだ、と今は感じます。
堀辰雄の「風立ちぬ」は、愛する病人のために何年もサナトリウムに籠もるという、無職の(高等遊人の)主人公のお話です。
一方、堀越二郎は俊英中の俊英で、ゼロ戦の開発者でもあります。多忙を極めている人です。
この、まったく正反対のキャラクター、ありえない設定をどう力業で納めてしまうのか、私はほんとうに宮崎駿の腕前に期待していました。
そう。
たしかに予告編は素晴らしい作品だったと思います。
しかし、それに尽きていると思います。
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