劇場公開日 2013年7月20日

「【宮崎監督が、現代日本への危惧を今作にて大いなる”警句”として描いた作品。】」風立ちぬ NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5【宮崎監督が、現代日本への危惧を今作にて大いなる”警句”として描いた作品。】

2020年1月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

難しい

幸せ

 私も含め、多くの観客は、宮崎駿監督の新作を”新たなるファンタジー作品”として待ち望んでいた記憶がある。

 だが、監督が描いたのは1920年代の”大正”から”昭和”へ元号が変わり、平和だった”大正時代”から

 ・不景気
 ・大震災
 ・そして、暗雲立ち込めるきな臭い戦争の影

 が、匂う”昭和初期”の時代であった。

 主人公は、零戦設計者、堀越二郎。(声:庵野秀明、今では慣れたが当時は何故この人?と思ったものだ・・。素人然とした訥々とした声である。)
 と二郎が尊敬するイタリアの設計士ジャンニ・カブローニ(声:野村萬斎、安定である)との時空を超えた尊敬と友情を軸に描かれる。

 だが、今作はファンタジー要素よりも、
 立花隆が資料に残しているように、
「これは、明治以来西洋に追いつき追い越せで、急ごしらえに作った富国強兵国家日本が、富国にも強兵にも失敗し、大破綻をきたした物語だ。」
 と喝破した当時の日本の様を描いた作品である。

 当然、宮崎ファンタジーを期待した多くの人々からの評判は芳しくなかったが(だって、幼子が今作を観ても面白くないでしょう・・)、宮崎監督の矜持を感じた作品でもあった。

 ー今作公開直前の参議院選挙で現政権が大躍進。ねじれ状況を打破し、現在の体制を築いたが、当時の新聞に掲載された、安倍政権を揶揄したヒトコマ漫画
 ”第23回参院選 ー風立たぬ やらねばー 今のところ左うちわ”
 で墜落する零戦に乗る当時の民主党のうなだれた顔
 に大笑いしながらも一抹の不安を覚えた記憶がある・・。ー

 そしてそれは2020年現在、現実的な問題として私たちの眼前に厳として存在する・・。

<2013年7月30日 劇場にて鑑賞>

NOBU