「力を尽くして生きる。」風立ちぬ ちゃーはんさんの映画レビュー(感想・評価)
力を尽くして生きる。
宮崎駿の最高傑作。ただただ美しいものを作りたかった。美しいものを見たかった。
宮崎駿といえば、すべての長編アニメーションが、誰かしらの最高傑作になり得る作品ばかりを世に送っている。自分の中で、その頂上に立つのがこの「風立ちぬ」
宮崎駿の言う「堪ふる限りの力を尽くして生きなさい」という言葉が映画では「君の10年を力を尽くして生きなさい」に変わっていた。宮崎駿が、生きてきた人生を堀越二郎に投影して描いていたのではないだろうか。
戦闘機を作るお金があれば、何百人もの子どもを救える。それでも、当時の日本は坂の上の雲を目指し、投資した。戦争は嫌いだが、戦闘機は好きという矛盾。
周りの人から、人間じゃないと思われ続けても、スタッフを怒鳴り散らしてでも、とことん納得のいく作品作りに邁進した宮崎駿に重なる。
風が吹いていれば、生きなくてはいけない。持ち得る10年をどう生きる?という問いかけが、現代に生きる我々には強く重く深く刻まれる。
最後の試験飛行の意味は、何だったんだろう。成功して、遠くの山をじっと見つめる二郎。あの瞬間、菜穂子は亡くなったのだろうが、風がやんだようにも感じた。風がやんだ。力の限り生きなくてよくなったのだ。
堀越二郎の生き方。最後の煉獄のシーン、敗戦の日本。美しいものを作りたかっただけなのに、人を殺し、戦争の道具になった。そして風はやんだ。だからこそ、最後の菜穂子の言葉「あなた生きて」は響くのだ。
生き抜いた。何も残らなかった。それでも、二郎は生きなくてはならないのだから。
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