凶悪のレビュー・感想・評価
全245件中、61~80件目を表示
悪とはなんぞや
大好きな白石和彌監督の作品。
話題となった本作をやっと観ることが出来たが、正直、白石監督作品とはいえ、内容が内容なだけに楽しむことはできなかった。
ただ、作品の中で、主人公の藤井の妻が言った台詞が
なるほどなーーと思わせる。
リリーさん、ピエール瀧さんらが演じた人間はこの世に多くは存在しないと思いたいが、それ以外の被害者役や、被害者の家族役のような人間はゴロゴロいそうだと思った。
先生と呼ばれた木村(リリー)は、大して賢くはないのだろうけど、人の弱みを見つけたり、弱みを持った人間を惹きつけたり、その人達を誘導する能力に長けていたんだと思った。暴力を振るシーンなんて、もはや意味不明。でも、人間がすることなんですよね。。。
正直観てる最中も、終わった後も、気分が良くなる映画ではありません。
リリーとピエールの犯罪手引き
山田孝之さんとピエール瀧さんというなんともタイムリーな2人の"凶"烈な一本。
流石、白石和彌監督、いい仕事してます。
これでもかというほど犯罪のてんこ盛りで、色々なエグいことが繰り広げられます。
主人公は山田孝之演じる週刊誌の記者。
個人的にあまり週刊誌の記者さんは好きではないですが、この主人公はなかなか魅力的でした。
あまり表情を変えず、淡々と喋る演技が上手いと思いました。
そして、ピエール瀧。
サイコパスヤクザ感が凄くて、本当に悪そう(本当に悪いですね)。
今はこんな瀧さんですが、是非復帰して欲しい。
あの狂気は決してアレのおかげだけではないはずです。
忘れてはいけない本作の本当の見どころリリー・フランキー。
冗談じゃなく、彼の笑い方やあの冷静さは鳥肌立つくらい恐ろしい。
いつもいい人役が多いだけに、すごい忘れられない強烈な印象が残りました。
それにしても、精神的に攻めてくるシーンの多いこと。
子どものすぐ近くでヤったり、子供に札束で遊ばせたり、プレゼントのランドセルからも札束が…
人肉を焼却した後のクリスマスのチキンも色々想像させてきます。
お爺さん殺しなど弱いものを痛めつけるのは本当に見苦しい。
一見、人命軽視のように思えますが、命の存在や大切さなんかも改めて実感させられる映画でした。
残虐と冷酷
冷静に考えると、残虐と冷酷は別なはずです。
この映画の描写に沿って説明すると、
・残虐…暴力や遺体への〝処置〟など一般的な人にとっては胸糞の悪くなる行為が平気でできる。
・冷酷…他人の苦痛(精神的、肉体的を問わず)について自分のこととしての想像力を働かせることなく、
見過ごすことができる。割り切ることが簡単にできない普通の人は、見過ごしたことに罪悪感を覚える。
ということになると思います。たぶん。
残虐性は、一種サイコの世界で相当程度は病理的な疾患(戦争中に残虐になるのも一種の精神疾患)なのだと思いますが、一方の冷酷さは、たぶん誰もが平時でも持ち合わせている人間性のひとつの要素です。
(普段自分に協力的でない同僚とか友達が上司や先生に叱られているのを見た時、ザマーミロ!と思って放っておくというような事象も冷酷さの一種の表れといっていいと思います。)
我々の社会は残念ながら、冷酷な犯罪(殺人に比べれば軽く見えてしまうような振込詐欺だって、ただの詐欺に留まらず、高齢被害者のその後の生活への精神的、経済的ダメージを想像できたら、その冷酷さが分かるはず)をゼロにはできません。被害者のことや手口の卑劣さを考えたら、もっと重罪にして欲しい、と思うことはあっても、犯人を殺してしまえ、とまで思う人は少ないと思います。
でも、残虐で猟奇的なバラバラ殺人などの犯人に対しては死刑を求める人が決して少なくないと思います。
冷酷な犯罪に関しては、誰もが状況次第で一歩間違えば自分が加害者になることもありうると理解しているし、ある程度軽重の判断や法的・制度的なことでコントロールできるという前提もある。
しかしながら、残虐性に関しては、社会という群れを維持する我々にとって、社会の平安を保つうえで絶対的に受け入れがたい要素であり、生理的に拒否反応が起きるようにできているのだと思います。
ラストシーンにおぞましさを感じるのは、本能的なレベルの欲求(群れから排除したい相手への殺意)について、お前は正義感的なモノサシで誤魔化してるんじゃないのか?と自分が言われているように感じたからかもしれません。
3人の凶悪
人を殺す事も暴力を振るう事もなんとも思わないヤクザのピエール瀧。
そのヤクザの裏にいるサイコパスのリリーフランキー。
犯罪を許さず犯罪者に罰を与えようとする記者の山田孝之。
映画が進むに連れ、どんどんピエール瀧とリリーフランキーの凶悪さが暴かれていきます。
見る人によっては、とても嫌な映像の場面も多々あると思います。
凄く凶悪な2人ですが、喋り方や内容は普通の人とあまり変わらないところもあり、そこがさらにリアルで怖さや凄みが増していきます。
山田孝之がピエール瀧に生きる希望を見出す事に強く糾弾し、最後にはリリーフランキーが山田孝之へのメッセージには実は凶悪な2人と同じように凶悪な自分がいた事に気づかされてしまう山田孝之。
怖いですね。
良かれと思っている自分も他人を不幸にし殺して地獄に落ちるように願ってるんですから。
凶悪な2人と変わらない自分がいたんですからね。
誰にでもオススメ出来る映画ではないかも知れませんが、周りに目もくれず一心不乱に打ち込んでしまってる時はハッと気付く為にも鑑賞するのも良いかもしれません。
好奇心というより正義感
良いらしいとはかねがね、なんだけどけっこうメンタルに響きそうで敬遠してた作品。
結論から言うと、『全員死刑』みたいな非日常感というか
こんな人も世の中にいるのか、といった割と乾いた感想が残った。
個人的には正直、そんなに後味悪くもないし、鬱展開でもないかなと。
ただ暴力とか死体とか、描写がかなりキツめなので見る人を選ぶとは思う。
内容というか作品としては、幸か不幸かピエール瀧の存在感がやっぱり際立つ。
彼がこの役をやったってこと自体に付加価値がついちゃったというか何というか。
タイトルについてだけど、僕はやっぱり「凶悪=正義の押し付け」だと思っちゃったなぁ。
ジャーナリストの藤井は「家庭を犠牲にしても殺人犯は許せない」だし
ヤクザの須藤はシンプルに「裏切りは絶対に許せない」。
先生の場合は「金儲けこそが絶対」みたいな。
傍観者になれとは言わないけども、野次馬根性というか
好奇心までを「悪」だと言い始めたら色んなものが死んじゃうような気がする。
だからラストシーンのあれはきっと観てる側が檻の中というよりは、
藤井が怒りとか恐怖とか、そういうネガティブなものに囚われてしまったっていう描写だと思ってる。結局ね、自分の正義を他人に押し付け始めたときに「悪」が生まれうるんじゃないかなって。
けっして好きな部類の作品ではないけど、心に残るものは確実にあった。
社会を変えるような大きな仕事ができなくたって、
何も不自由しないくらいの大金が稼げなくたって、
手の届く範囲の人たちを少しずつ幸せにしていければ御の字じゃないかなと。
だから今は見てよかったと思ってる。
白石監督はやはり外れないなー 重くてどよーんとしている空気感ながら...
白石監督はやはり外れないなー
重くてどよーんとしている空気感ながら芯がちゃんとあって、実はこの作品を見ていて楽しんでいる自分が一番のあくなんじゃないかという事を示してくる感じとか良かった。メイン三名のお芝居も最高でした。
ピエール瀧の件の前と後
騒動の前に見たときにはそんなに面白みを感じず、嫌悪感しかなかったけれど、騒動後あらためて見て、食い入るように見てしまった。あの演技はどこから来ているのかなどなど…。人間の興味なんて愚劣なものだなどと思ってしまった、まぁ自分自身の問題なんだけど─。
感情の伝染
SNSで言われている「他人のことで怒りすぎ」の映画
前半、長い再現VTRという感じで、同じように実際の事件を元にした「冷たい熱帯魚」と比べると盛り上がりに欠けるけど、ラスト30分はこちらの方が断然狂気を感じて良い。
事件の概要を知ってから見た方が良かったかな。
山田孝之の目は鹿みたい🦌
山田孝之、、主演映画。死刑囚の告発をもとに、雑誌ジャーナリストが未...
山田孝之、、主演映画。死刑囚の告発をもとに、雑誌ジャーナリストが未解決の殺人事件を暴いていく過程をつづったベストセラーノンフィクション「凶悪 ある死刑囚の告発」(新潮45編集部編)を映画化。
リリーの素
先ずポスターが好き。特に先生(リリー)が。
あの素敵な不敵な笑顔が見たいと思ったが、劇中ではそうでもなかった。
筋ですが、そんなにテンポは良くなくて、
もう少しカットしてタイトに纏められるかなとも思った。
特に藤井(山田)が現場を取材する件とか、社内でのやりとりとか、
冒頭シーンのネタ晴らしとか、正直ちょっと長いなと感じた。
しかし、突然フラッシュバックして再現シーンになり、
やがて今に戻るところとかは無駄がなく、巧いと思った。
一番強く残ったのは、須藤(P瀧)が獄中で信仰を始めたところ。
「神は私に‘生きて償いなさい’と言いました」
ここに食って掛かる藤井。
「あんたは生きてちゃいけないんだ!」
このやりとり見てて、
韓国映画「シークレットサンシャイン」を思い出した。
あれで被害者は、信頼してた人(犯人)に裏切られ、自分の息子は殺され、
勧められるまま入信し、その教義から犯人を許そうと思ったら、
当の犯人も入信していて「神は私を許して下さいました」とほざく。
そして被害者は全く救われない、という話。何か似てる。
藤井も須藤の言われるまま事件を暴き、真相を突き止めるが、
自分は家族を顧みず家庭が崩壊し掛かる。
挙げ句の上、当の須藤は生きたいとか言う始末。
そしてラスト、「一番私を殺したいと思っているのは…」。
凶悪な事件を追いかけてる内に、
いつの間にか、誰が「凶悪」なのか分からなくなってる。
このオチは、藤井が自分の母を介護ホームに預ける所にもリンクしてて、
そこは嘗て先生が「まさに油田だよ」と吐き捨てた所。
結果として「油田」に母を預けてしまう藤井夫妻。
もう誰が「凶悪」なのか。みんな「凶悪」なのかもしれない。
話の作りの旨さが光る作品でした。
山田孝之はいつも通りの影有る演技。
リリーさんは巧いね。もっと怒るシーンとか見たかったが。
P瀧はヤクザ似合いすぎ。我王銀次を思い出した。
獄中で語るシーンはちょっと謙りすぎな気もするが、
面会でキレたシーンは凄みある。この映画で一番怖かった。
保険金殺人の妻はリアル。多分いざとなると夫婦はこんなもんw
でも息子はもっと良心に苛まれてもいいと思うが。
あと瀧の奥さんとか編集長が不細工でがっかりかなw
確かに「冷たい熱帯魚」程ぶっ飛んでないが、
ある程度リアリティ残していて、人間味有るホラー。
「冷たい~」は寧ろファンタジーホラー。
シャブが諸悪の根源
編集部記者の藤井修一(山田)は須藤(ピエール瀧)の告発する木村(リリー・フランキー)という存在が面白いと判断したのだが、不動産ブローカーの木村がやくざと組んで犯した事件なんて記事にならない・・・と、
前半は記者による地味な取材から始まって、後半にドラマ仕立てとなる構成の映画が多くなってきてるのかな。保険金を得るために暴力団と不動産屋の行動をリアルに普段は悪人面してない男が「ぶっこむ」(殺す)と言っていとも簡単に人殺しをする。
木村の殺人も相手が老人ばかりだったことで罪の意識が薄れていたのだろうか、人間としての感覚が無くなるサイコパスとも言えるのだろう。
【ある死刑囚の告発から暴かれていく戦慄の世界。邦画のフィルム・ノワールの傑作】
北関東の荒涼とした空気感の中、”先生”(リリー・フランキー)と須藤(ピエール瀧)は”楽し気”に凶行を繰り返す。
家庭を顧みずに彼らを追う、ジャーナリスト藤井(山田孝之)。須藤の告発状に魅入られてしまった男を哀し気に演じる。
数々描かれる凶行の中でも、ジジ・ぶぅ演じる牛場悟に無理やり酒を飲ませ殺害するシーンは未だに克明に覚えている。二人はゲラゲラ笑いながら、凶行に及んでいるのだ。
地獄絵図とはこの事だと思いながら、身じろぎも出来ずにスクリーンに見入ってしまう・・。
怖ろしいのは、凶行の裏には被害者の親族が”手を下さない”共犯者として存在している事実である。
この作品を観た衝撃は今でもしっかりと覚えている。
悲惨な出来事(事実)を描いているのに、観ていてどんどん引きこまれていく程の圧倒的な面白さ。
山田孝之は今作出演時、
”きつかった。1日エナジードリンク5本飲んでいた”
とコメントを残しているし、
白石監督の
”この作品は社会派と捉えられているかもしれないけれど、これぞ、エンターテインメントと考えている”
というコメントも凄かった。
<白石和彌監督の時代が始まったと認識させられた記念碑的作品。邦画のフィルム・ノワールの傑作でもある。>
<2013年9月22日 劇場にて鑑賞>
以前見たときよりは面白く感じた
殺人犯もそうだが家族を売る人たちの醜さも感じたし、そのお金で潤って幸せに暮らすような犯人の家族達にもどこかムカつきを覚えた。ピエール滝は雰囲気は出ていたが、捕まっている時の凄みが弱く感じた。
全245件中、61~80件目を表示