「描写はおもしろいのだが・・・」アンナ・カレーニナ マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)
描写はおもしろいのだが・・・
舞台で演じられる「アンナ・カレーニナ」と現実描写をリンクさせた手法で、出演者が舞台の袖に引っ込むとそこは大きなお屋敷だったり、舞台の頭上のキャットウォークを渡ると安ホテルの一室になっていたりと、からくり屋敷風でおもしろい演出だ。
大道具だけでなく、互いの気持ちを探ったり打ち明けたりするのに、積み木のようなものを使った文字遊びも小道具として活きている。
旋律の美しい音楽に乗ってアンナとヴロンスキーが踊るシーンは、同じく一目惚れから発展する「ロミオとジュリエット」(1968)のダンスを思い出すが、はるかにスピードがあり、優雅さとダイナミックさを併せ持った振付は、それを見逃さないカメラワークとともに見応えがある。
何もかも捨てて恋に生きる覚悟をしたはずのアンナだが、社交界の華としての過去から抜け切れない。彼女の建て前と本音の間に生じる矛盾は、ヴロンスキーにアンナのことを煩わしく思う心を育ててしまい、いっそうアンナを苦しめることになる。
破局していくアンナと、かつては社交界に憧れていたが農業を営むリョービンと結ばれるキティを対照的に描き、慎ましく暮らす幸せの大切さを説く。
このキティを演じたアリシア・ヴィキャンデルをはじめ、プリンセス・ベッツィやヴロンスキー伯爵夫人など脇を固める女優陣がいい。
それに比べアンナのキーラ・ナイトレイは痩せ過ぎのせいか品がない。ぽかんと開けた口と少しにらみを効かした目のワンパターン演技で相変わらず表情に豊かさがない。せっかく凝ったおもしろい描写も台無しだ。
衣装ももう少し期待したがそれほどでもなかった。石岡瑛子さんが担当した「白雪姫と鏡の女王」のほうがずっと綺麗だ。画質も粗く、大きなスクリーンには向かない。