「マリオン・コティヤール、あらためて素晴らしい」君と歩く世界 マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)
マリオン・コティヤール、あらためて素晴らしい
失意のどん底で生きる希望をなくしているところへ、あるひとりの人間が現れて、その人のお陰で立ち直っていく話はよくある。だが、この手の話に現れる人物は決まって献身的な手を差し伸べるものが多い。
ところが今作では、両脚を失った女性ステファニーの前に現れるアリという男性は、ステファニーに対して同情のかけらも見せない。
看護師たちは、脚を失くした身体を人前に晒したくないステファニーに、閉じこもっていてはダメだと諭す。要は肉体的にも精神的にも不健康だという理屈だ。
これに対し、アリは単純に「なぜ外に出ないのか?」というもっともな疑問をステファニーに投げつける。外は明るくて楽しいぞという理屈だ。
健常者か否かに関係なく、人は行きたいところに行きたいときに行く、そんなあたりまえのことに誘い出すアリの行動パターンが話の軸になる。
そんなアリの、ときに短絡的な思考に走る姿や、何ものにもとらわれない奔放でマイペースな行動に翻弄されながらも、どん底から這い上がっていくステファニーに演技力があるマリオン・コティヤールがぴったり重なる。
愚かなところもあるが、底に優しさを秘めたアリのマティアス・スーナーツも野性的な雰囲気がいい。
思いがけない展開からのラストもいいが、ステファニーが車椅子でシャチへの合図を繰り返すシーンにグッとくる。
ステファニーが徐々に義足の露出度を上げていく演出も効果的。
ただ、語り口がやや冗長だ。その割に端折られたカットや唐突な展開が目立つ。
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