小さいおうちのレビュー・感想・評価
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松たか子VS黒木華 見事なまでの対峙
今作を語るうえでは、松たか子と黒木華の対峙を避けては通れない。
出かけようとする時子(松)とそれを止めようとするタキ(黒木)。
眼光鋭く睨む時子に対し、必死に、そしてとうとうと理由を説明するタキ。そして本来決して美しい所作とはいえない舌打ちをする時子に対し、ホッと安堵の面持ちを浮かべるタキ。
このシーンを撮影現場で見学する僥倖に恵まれたのだが、ピンと張りつめた本番……。
松が長いセリフを言い終えた直後、黒木がNGを出してしまい項垂れてしまう。
そんな黒木に、「大丈夫!」と肩をポン!と叩き、何事もなかったかのように元の位置に戻る松。
このシーンを見るためだけに、お金を払う価値があると感じた。
絵が面白くない
話は並。
よくある不倫話。
それを止めた女中の話。
ラジオドラマ的な、
「渡さなかった手紙だったんだ」
と、絵で観客はほぼ理解できるシーンも優しく丁寧に妻夫木がセリフで説明するのはホント蛇足だと思う。
全てセリフで話を進めて行くのは如何かと思う。
小さな幸福感
高台の洒落た一軒、「小さいおうち」かどうかは当時の市民生活を考えれば、ずいぶん恵まれた環境であることは確か。それは、冒頭のタキが上京するシーンとの対比で示される。それでも、遅ばせながら生活が厳しくなっていくテンポの違いを妻夫木が問いただすのが面白い。結局、明示されたものは召集令状と空襲だけだもんな。少なくとも、タキには幸せな「小さいおうち」だったと思う。
ドラマの起伏は奥様の不倫疑惑。ただ、それをサラッと、でも確信持てそうに示し、タキを悩ませる。「家政婦は見た」的な要素もあり、他人の家を覗く感じもする。そう、見てはいけないものを見てしまった感じ。想像する面白味があり、何もなくても何かを生む脚本の妙。
前半のおうちのシーンなんか、何気ないヒトこまを長めに映した感じは、小津作品へのオマージュなのか、松竹映画の伝統かなあ。
初見2015/7/5
2回目で良さが分かった
2度目の鑑賞
1回目は奥様がご主人の部下と不倫関係になったところに意識が行ってしまい
「どういう過程で不倫になったか、はっきりしない」
「時子にも板倉にも感情移入できない」
「山田監督としては失敗作では?」
という記憶が残った
今回2度目の鑑賞で、この作品の良さが分かった
これは奥様の不倫に気付いてしまった、女中の目線で見る映画だった
最後に会いに行こうとする時子を引き留め手紙を書かせるが
その手紙を板倉に届けることはしなかった
自信が結婚しなかったのはこのことを後悔してるのか
1回目見たままでは☆2.5くらいだったが
2度目の鑑賞で評価があがった
この物語は中島京子さんの原作本で浸るべき!
数年前にやはりTV放映で観た記憶が
あったが、妻の不倫のこと以外は
あまり印象に残っていなかった。
改めての鑑賞で、
戦争+不倫のパッケージ物としては、
例えば「イングリッシュ・ペイシェント」や
「ことの終わり」を思い出すが、
それらに比べてこの作品は
時間的に少し間口を拡げ過ぎて
平板になってしまったのではないか。
現代にまで話を拡げた結果、
長い上映時間にも係わらず
肝心の主要3名の情念の表現が希薄に終わった
印象を受ける。
時子の不倫もタキの想いも、
戦時下であったり格差社会の中では
それこそ命懸けだったはずである。
残念ながらその必死さへの演出が
映像からは感じ取れなかった。
ある意味、戦争中における市井の人々の
「あちこちのすずさん」的なエピソードの
ひとつの披露に感じられ、登場人物の思索に
肉薄出来ていなかった気がする。
西欧人に比べて何かと奥ゆかしく振る舞う
日本人の恋愛だからとか、
また戦時下だからとの時代背景を
割り引いても、映像作品としては
登場人物の感情表現不足と感じてしまう。
タキが時子を止めるシーン、
表面的にはあたかも世間体を気にしての
振る舞いの如くの演出で、
本来のタキや時子の想いを
表現しきれていないように思った。
原作でどう表現されているのかは不明だが、
タキが結婚しなかったのが
時子への罪滅ぼしだとしても、
板倉や時子への情念を曖昧にしたままに
終わらせてしまった印象を受ける。
山田洋次監督は「寅さんシリーズ」
「たそがれ清兵衛」「息子」等で
私の大好きな監督の一人だが、
ここ10年は流石に年齢と共にその演出力が
衰えていると感じているのだが。
2022年7月21日追記
中島京子さんの原作を読んで
全ての謎が解けました。
この物語はタキと板倉による時子争奪戦。
映画ではすぐにタキが
時子と板倉の最後の逢瀬を阻止したかの
ように描かれるが、
原作ではタキの独白的表現なので、
板倉の下宿ではなく「小さなおうち」で
逢えたように表現される。
そして、時子の子供とのラストシーンで
初めてタキが二人を逢わせなかった真実が
ドラマチックに明らかにされる。
原作では、何故、タキが時子に恋したのか、
憧れたのかが充分に記述される。
結果、生涯独身を貫いたのかも良く解る。
更には、夫が性的に求めないために
時子が板倉に走った訳も。
長尺に語れる原作では
全てが良く描写されており、
この映画はそのダイジェスト版の域を
出れないで終わったイメージだ。
また、男も女も憧れる時子役は、
松たか子でも他の女優でも難しかったのでは
ないだろうか。
なにせ、二人の男女を
生涯独身で通す決断をさせるほどの
魅力を持った女性だったので。
この物語は、
直木賞受賞作の原作で浸るべき作品
と思った。
久石譲の音楽はなぜすぐに久石譲だとわかるんだろ・・・
坂の上の赤い屋根の小さな家。あ、自分の家もそんな感じだなどと思いながら、関東大震災直後に建てられたモダンな家は裕福な家庭の象徴みたいな存在にも思えた。玩具メーカーの常務である平井雅樹。その妻・時子(松たか子)は誰もが美人だと認めるほど美しい。5歳になる息子・恭一が小児麻痺に罹り、女中タキ(黒木華)の献身もあって入学が遅れたものの後遺症も残らず普通の暮らしをできるまでになった。
平和な一家であっても戦争の影が忍び寄る。おもちゃの会社は金属を使えなくなり、多くの社員が兵役に取られる。平井家に通うようになった独身の板倉(吉岡秀隆)には縁談話がいっぱい舞い込むのだ。
やがて、板倉に恋するようになった時子。同時にタキもひそかに恋心を寄せているが女中の身であるため、何もできない切り出せない。世間は狭いもので、板倉の下宿先に碁を打ちに来る男が平井家出入りの酒屋さんだったりするので、噂も徐々に広まるといった具合だ。
こうしたストーリーは、現代のタキ(倍賞千恵子)が自叙伝を書き連ねて、それを大甥の荒井健史(妻夫木)が校正することで明らかになっていく。そのタキも亡くなり、親戚が彼女の部屋を片付けているときに、一通の未開封の手紙を見つけるのだった。
『家族はつらいよ』のメンバーが多数出演しているので、混乱しがちな家族関係。橋爪功や吉行和子、中嶋朋子、林家正蔵、夏川結衣、妻夫木聡を見てるだけでほっこりさせらる(西村まさ彦は仲間外れか?)。
そんなほのぼのとした雰囲気も戦争が壊してゆく。そして倍賞千恵子が言う「私長く生きすぎたの」という台詞に、残された者の悲哀が伝わってくるのだ。そこには隠された罪悪感もあり、一生独身だったということも悲しさを増している。さらに、召集令状を受け取った板倉の生涯も彼女と似たような人生だったことに泣けてくる。そもそも不倫が発端でもあるが、見合い話の候補者の中になぜタキを入れないんだ?と、身分の違いがそうさせたのか、あるいは三角関係にも繋がる時子の嫉妬心も理由のひとつか?今よりもずっと身分の違いが重かった時代。結局は板倉の恋も実ることがなかったじゃないか!と、腹立たしい部分もあった。
しかし、板倉の個展を偶然見つけ、恭一の足取りもわかり、怒涛のラストは涙ちょちょぎれ状態になりました。あぁ、恥ずかしい。
小さいお家の中の小さな秘密
黒木華さんが日本アカデミー賞で最優秀助演女優賞
をとった本作。期待してみたら、なんでこれで最優
秀なの?と、過去の栄光にクエスチョンと意味の
ない事をしてしまいましたが、よく分からない。
演技は良かったし、役にもあっていたけれど、、、
お話も、演出も派手ではなく、ある家族の普通の
日常が描かれていた。ただ、そこに秘密の恋愛が
絡んできて、、、時代は昭和前半。
第二次世界大戦へと進んでいく様子が描かれている。
印象的だったのは、板倉(吉岡秀隆さん)が招集
令状を受け取り、平井家へそれを伝えにきたシーン。
なんとも悲しい気持ちになった。
「お国に尽くすなら、君など兵隊より、
絵を描いたり、漫画を描いたりした方が
よっぽど役に立つと思うけどね。
一番つまらない使い方だな」
と、美大を出たデザイナーの板倉へ平井の旦那が
掛けた言葉。
本当にその通りだと思った。
"使い方"というところがグッときた。
そうなんですよね。
国にとっては所詮国民は使われてしまうのです。
一人一人の人生が、戦争によって強制的に道を
変えられ、夢や家族や幸せを奪われてしまう。
本当に悲しい。
当時の人達の気持ちにはとてもじゃないが自分は
同じ気持ちになることは無理だが、映画を通して
いろんな立場の人の気持ちが表現されていることで
少しくらいは分かったつもりになれる。
二度と同じ事が起こらぬよう祈るばかり。
とてもよかった
現代劇だと思ってスルーしたのだが、おばあちゃんが青春時代を回想する時代劇だった。女中さんがあまり人間扱いされていないというか、一段低く扱われている。吉岡秀隆本人も黒木華を好いているのだけど、女中だから結婚を申し込むようなことはない。当時は家柄で身分制度みたいなのがあって、農村の出は身分が低いような描かれ方だ。それが言葉で示されていないので、見ていてもやもやする。黒木華も低い立場で当たり前のようにいる。今なら女中でもなんでも、若いしかわいいと言って身分の高いブスよりずっといいじゃんと思う。
黒木華もいいけど、松たか子もすごくよかった。
もやもやしてしまう
扱う時代や話の展開は、分かりやすいものだと思うが、映画でやる内容としては、単純に物足りなさを感じた。それは、作品としてのドラマ性や価値観。
役者の演技は大したものです。ただ黒木華さんはハマリ役という印象が割合的に強く、好感が持てるが評価されるまでのものは感じなかった。
松たか子が黒木華を田舎へ帰る見送りの時に見せた最後の表情はとても人間らしく狂気的なものを感じられた。あれは何かのメッセージなのか。
『小さいおうち』は秘密の不倫の恋の話に隠された秘密の悲恋の話ですって話
劇中の妻夫木聡が「イマドキの若いやつはこんなしゃべり方しねぇよ」と批判されたりしていた作品なんですけど、僕にはその妻夫木聡のしゃべり方こそが「昔の映画ザ・ライド」的な効果を出してたんじゃないかと思って好印象でした。
お話もなかなかおもしろかったですよ。
僕はこの映画、「3人の人間が6つの愛に苦しんで、1つも成就しなかった話」だと思いました。
時子は「板倉」と「夫≒家庭」への2つの想いがあって、どちらも成就できなかった。
タキは「時子」と「板倉」への2つの想いがあって、どちらも成就できなかった。
板倉は「時子」と「タキ」への2つの想いがあって、どちらも成就できなかった。
不思議ですね、この映画のど真ん中は時子と板倉の恋のお話なのに、その後ろで板倉とタキの悲恋物語が完璧なまでにきっちりとコントラストを描いてますよ。
違う言い方をすれば、「時子の秘密の恋の話に隠された、タキの秘密の恋の話」ってことですね。
観客に対してすら、秘密を残している「小出し感」が切なくてよかったです。
ついでに坊っちゃんは「時子という母親」と「タキという仮の母親」への2つの想いがあって、タキとは戦争で生き別れ、時子には不倫で裏切られた悲しみがありました。
またついでに旦那さんは、「仕事」と「戦争」の話ばかりだったけど、戦争は出兵もできずに負けて、仕事は戦争のせいでダメになった。
人間はいつの時代も、なかなか思うようにうまくは生きられないし、最高ではなくてもそれなりの幸せを良しとして生きていかなきゃいけない。
そんなことをちょっと考えさせられる映画でした。
テーマの割に静か
テーマの割には波乱がなく、静かにゆっくり丁寧に進むストーリーでした。
タキは時子奥様に思いを寄せていたように思いますが、そうではなくて板倉の方…?と最後は悩みました。
板倉もタキを何でこのタイミングでという所で抱きしめて、タキも時子も好きだったのかと混乱しました。
ですが、タキが時子の足をマッサージするときに緊張してる姿や時子の同窓生との会話から、時子を好きだったのに間違いないのかなと思います。
タキが手紙を渡さなかったことを、とても悔やんでいることに驚きました。
板倉を吉岡秀隆が演じていたことに疑問です。
色気漂う一目で惹きつけられるような色男の俳優が演じた方がよかったように思います。
なぜ惹かれたのか理解出来ないので、奥様の恋にハラハラしなかっなので、物足りなかったです。
最後、坊っちゃんに会えたのは以外でよかったです。
でも、その流れで板倉とも会えると思っただけに残念でした。
時子が板倉の絵を持っていたこと、タキが女中としてかはたまた自分のために手紙を渡さなかったのか、真相は闇の中で考えさせられました。
私は板倉が戦争から戻ってから、タキは板倉を好きになり恋人同士になったので、あんなに後悔しているのかなと想像しました。
いろいろと思わせぶりです
死んだ大おばさんが残した自伝小説を追いながら、戦時中のある家庭に起こった出来事を描く。戦争、許されない恋、同性愛ときたら純文学的な匂いがプンプンしてくるが、嫌味な感じはなくて最後まで飽きずに観られた。その上ほのかな感動を味わえた。時代の雰囲気を素直にうけいれられるかどうかが楽しめるかどうかの分かれ道のような気がする。
半分寝ながら見ていたので
タキばあちゃんの部屋に何で板倉さんの絵がかかっていたのかよく分かんなかった。でも山田洋次の作品は安定してるなと思った。
女中はまともな職業だったし、嫁入り前の花嫁修業でもあった。
映画「小さいおうち」(山田洋次監督)から。
ストーリーとは、あまり関係ないかもしれないが、
昭和初めの頃の「女中」という職業に興味を持ってしまった。
年老いた主人公・布宮タキ(倍賞千恵子さん)が孫に語る、
「女中」という職業に対する定義に頷いてしまった。
「昭和の初めの頃はね、東京のサラリーマンの家庭では、
女中さんがいるのは当たり前だったのよ。
近頃は、お手伝いさんなんて言い方をするけど、私の若い頃は、
女中はまともな職業だったし、嫁入り前の花嫁修業でもあった。
奴隷みたいに思われたら、かなわないよ」
最近では「花嫁修業」という言葉も死語となりつつあるが、
男性の「徴兵制度」がなくなったように、
女性の「花嫁修業」も時代の流れとともに、なくなった。
どちらも、若い年代の大切な一時期でないかと感じている。
特に「花嫁修業」となっていたという「女中」という役割は、
ある意味、有料の社会奉仕(ボランティア)をしながら、
家事全般に必要な知識・基礎技術を、住込みで覚えるシステム、
そう考えることが出来なくもない。
長い期間でなくても、家族以外の人たちと一緒に住むことで、
いろいろなことを覚えさせてもらえる体験は悪くない。
しかし、これも中年男性の古い視点かもしれないなぁ。
奇妙な三角関係が活かせていない
昭和初期の中流家庭に奉公していた女中の視点で、戦争に突入する前後の日本社会を描きつつ、その家庭の平穏とそこで起きた小さな波風を描く。
『東京家族』で小津安二郎の映画手法を模倣した山田洋次。齢80にして、今更大先輩の作風を模倣しようというのだから、その貪欲さには頭が下がる思いで見たが、本作でも小津安二郎を意識していることは間違いない。
小津安二郎が徹底して描いた中流階級(中流というよりも、当時のインテリサラリーマン)の家庭が、本作の主な場面となる。まるで『早春』のように、その家庭で起こった不倫な出来事。窮屈な台詞回しと、形にはめた演技を役者に強要する演出。カメラワークでも、随所に小津の構図を取りいている。
しかし、もちろん完全に模倣するわけではなく、山田節は十分に加味してもいる。その辺が、どうにも中途半端にうつるのは、『東京家族』も『小さなおうち』も同様だ。小津の出来損ないという印象が、どうしても残る。山田洋次の悪い癖(例えば、必要以上に政治的メッセージを前面に出してしまう事による逆効果)が、あの窮屈な小津節によって、よりクローズアップされてしまう気がする。
この辺は、山田節をもっと抑えるか、逆に小津のオマージュをもっと整理するかしないと、解消しないだろう。80歳の監督に言うのも何だが、自作以降に期待するしかない。
また、山田洋次は、本作で昭和初期の日本社会を描きたい気持ちがあったことは明らかだ。それは、インタビューなどでも語っているし、そもそも本作の原作が(筆者は未読だが)、そういう意図で書かれているとの事である。
太平洋戦争に突入した以降の日本社会は、様々な映画やドラマで描かれているし、そこで描かれる時代の暗い雰囲気や社会の閉塞感は決して間違っていないだろう。山田洋次も『母べえ』などで描いてきた。
その一方で、満州事変前後の日本社会の雰囲気は、十分に現代社会に伝わっていないという批評は、以前からある。本作でも描かれているように、南京陥落をはじめとした日中戦争(支那事変)に対する日本全体の雰囲気は、厭戦ムードよりも、むしろ歓迎ムードであり、本作で松たか子が演じた「奥様」のように、日本の都市生活者は豊かな文化を享受していた。
そうした時代を描いたのは、山田洋次自身の原体験もあったことだろう。
この点は、山田洋次がしっかりと描いたことが評価されるべきだ。
さて、山田洋次が描こうとした「小津の模倣」「昭和初期の日本社会」という2つのテーマは、方や中途半端、方や成功ではあったが、では、肝心の物語がどうだったかというと……結論から言えば、凡作だった。
本作は、黒木華が演じる「女中」、松たか子が演じる「奥様」、吉岡秀隆演じる「青年」の3人が主要登場人物だ。女中の視点で語る奥様と青年の不倫関係が、物語の中心になるが、単純に不義密通がタブーだった昭和初期の不倫や背徳の恋愛物語ではない。この3人が、奇妙な三角関係であることが示唆されている。
ネタバレというか、これは筆者の解釈だが、たぶん女中と青年は、体の関係に発展している。そして、これは映像で描かれているとおり、終戦後、奥様が旦那様と一緒に戦死した後に、その関係を継続していたはずだ。そして、奥様へ裏切ったという思いから、二人は生涯結婚をせずに通した。
ここからは、完全に筆者の想像だが、二人は、青年の出征前日に体の関係になった。そして、青年は奥様の元に行かずに出征する。二人は戦後に再開し、再び肉体関係になるものの、女中が奥様への思いから結婚までは踏み切れず、間もなく別れた。やがて画家となった青年は、女中に「小さいおうち」を描いた絵を送り、女中は死ぬまで、奥様を裏切った後悔と、青年への思いを断ち切れないまま生きていた……そんな感じだろう。
しかし、これが正解かどうかは別にして、全ての観客にここまで脳内補完を求めるのは、あまりにも不親切だ。
年老いた女中(倍賞千恵子)は、自分を慕ってくれる妹の孫(妻夫木聡)から、女中時代の思いでを手記にまとめるように促され、当時を振り返る形でストーリーが展開する。
その最後の手記で、女中は「なぜ青年が奥様の元へ来なかったのか、今ではわからない」と断定する。その後、妻夫木聡演じる大孫は、年老いた奥様の「息子」(米倉斉加年)と出会うのだが、そこで二人は、青年と奥様の関係については言及するのに、女中との奇妙な三角関係には触れない。そして、物語はそのまま閉じて行く。女中と青年の関係性について、大事なラストシーンでほとんど何も匂わせないから、観客は「結局、奥様と青年の恋愛関係の話だったのね」と帰着するしかない。そして、年老いた女中が、この話をする時になぜ最後に嗚咽するほど号泣するのか、よく理解できない。要するに、「現代パート」が奇妙な三角関係に関して、まったく機能していない。これではダメだ。
例えば、女中の最後の手記が「青年が奥様の元を訪れなかったのは……」と、何か匂わせて未完成のままになっているとか、あるいは、画家となった青年の記念館に、明らかに女中と思われる(もちろん、松たか子ではなく、黒木華でもなく、倍賞千恵子の面影)の肖像画を見せるだけでもいい。
昭和初期の日本の雰囲気が明るい描写であることに対して、大孫から「嘘を書いちゃダメだよ」と言われる年老いた女中だが、ところが女中が手記に書いた当時の様子が正しいという描写が映される。ここで、観客は女中は嘘を書いていないと思わされる。ところが、女中は最後の手記で嘘を書いていた。なぜなら、女中は青年が奥様の元を訪れなかった理由を知っているからだ。だったら、「女中はやっぱり嘘を書いていた」という描写を入れないといけない。むしろ、「女中から見ていた、小さなおうちの出来事は、実は女中が都合良く記憶していただけに過ぎず、別の視点からみたら、まったく異なった『真実』が浮かび上がってくる」というような描写にした方が、作品としては深みが出る。せっかく、最後に出てくる奥様の息子という面白いキャラクターがいるのに、活かしきれていないのだ。息子が見た「小さいおうちの出来事」が、女中から聞いていた話と違うと大孫が知るだけでもいいのだ。
そういう面白そうな設定があるにもかかわらず、効果的になっていないのは、決定的に本作が失敗している点だと評価せざるを得ない。
役者について言えば、何と言っても松たか子が良い。黒木華も良い。その一方で、吉岡秀隆と妻夫木聡が今ひとつ。
ということで、何となく面白そうなのに今ひとつという凡作の出来栄えという作品だった。
深く、切ない物語
感動。素晴らしいストーリー、脚本。
松たか子の奥様はピッタリだし、
黒木華の初々しい、でもレベルの高い演技力のとりこになった。
滝ちゃんの板倉さんへの恋心が切なかった。
あの苦しさは奥様の不倫を隠してるからではなくて、自分の嫉妬心。渡せなかった手紙。
そしておばあちゃんとなったお部屋に掛けられた板倉さんの描いた小さいおうち。
二人とも独身を貫いたけど、2人は板倉さん帰国後あっていたのだと思う。
レビューをみると、その辺のその時代の女性心、全く分かってないで低い評価つけてる
薄っぺらい人多いのに驚きます。
改めて戦争時期の不条理さを感じた。
とても深く素晴らしい作品。
山田洋次監督だから・・
山田洋次監督という事でみました。
松たか子は、どうなんだろう・・。
北の国からの吉岡秀隆さん、どうも苦手で・・。そんなにイイ役者なのかな?
で、晩年のタキさんの部屋に、板倉の小さな家の絵画が掛けられていたのがミソなんでしょうね^^;
タキさんの、苦しみは、実は、板倉に恋して、嫉妬で手紙を届けなかった事じゃないかしらん。
で、戦後、板倉とタキさんは、会っていて、だから、二人独身を通したって言うのは、想像し過ぎかな^^;
黒木華さんに釘付け♡タキを観る作品♡
「小さいおうち」題名だけでは、まったくストーリーの想像ができなく・・・観てみたらなるほど!って感じです。
今でいう「お手伝いさん」。タキは「小さいおうち」に女中として働くんですが・・。
タキを演じる黒木華さんがとっても良かった。
女性らしく、所作が美しい。
物を扱う姿、人に接する姿、会話、しぐさ、全てが凛としていて素晴らしかった。こんなに女性らしく振る舞えるなんて羨ましい。
タキはすっかりおばあちゃんになり、孫役?の妻夫木聡くんがいいナビゲーター役で見やすかった。
「昭和」はこんな時代だったのかなー。と、しかし戦争だけは心が痛い。
「小さいおうち」燃えた時は・・・せつなくなってしまった。
ストーリーはトキコの不倫と、タキの隠していた真実にクローズアップしていくが
私は、それよりも女中だったタキの「小さいおうち」での働きぶりに終始釘付け。
時代を感じながら・・・タキがここで努めてきた姿を見れて納得。
「長く生き過ぎた・・・」と号泣するタキの老後も涙をそそる。
シニア世代にもウケる作品なのではないかと思う。
松たか子さんより黒木さんのほうが光ってました。
正統派で素敵な作品です。
原作の肝が抜けてる気がする、と、原作ファンは思った。
タキちゃんが好きだったのは、時子奥様であって、板倉さんではないのよ。タキちゃんはもう少し腹黒でいて欲しかったし、時子奥様の夫は女が嫌いで、奥様はさみしい思いをしていて、しかも、恭一ぼっちゃんは奥様の連れ子で、旦那様とは生さぬ仲…
と、原作の肝と思っていたエピソードが削れていて、ファンとしてはハンカチ噛み締めたくなる部分があったのは事実。
あと、東京家族とキャストかぶりすぎじゃね?ってところに既視感あり(鑑賞時期が近かったせいでもあるけれど)
でも、わがままで楽しいことが好きな奥様、素朴で可愛いタキちゃん、おばあちゃんの面倒を、自分がみているつもりだけど、ほんとは自分が甘えている妻夫木くんが、印象的でよかった。松たか子、黒木華、うまい。
それと、恭一ぼっちゃんの贖罪が、完全に割愛されたのは、尺的に仕方なかったんだろうなーと思う。残念ではあるけれど。
中島京子さんの、独特の毒を忍ばせて欲しかったけど、山田洋次の映画にしたんやねぇ。
松たか子のあの髪型、前髪くねくねしたまとめ髪、よく映画でみるけど、あれやってみたい!
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