劇場公開日 2013年6月15日

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「【”壮絶なる母の愛と復讐。そして、母の愛を知らずに育った冷徹な男が全てを知った時の選択。”今作は、故キム・ギドク監督が内包していた非人間的要素と、人間的要素を表現したかの如き作品である。】」嘆きのピエタ NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5【”壮絶なる母の愛と復讐。そして、母の愛を知らずに育った冷徹な男が全てを知った時の選択。”今作は、故キム・ギドク監督が内包していた非人間的要素と、人間的要素を表現したかの如き作品である。】

2024年7月9日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

知的

難しい

■生まれてすぐ親に捨てられ、天涯孤独の30年を生きてきたイ・ガンド(イ・ジョンジン)。
 母の愛を知らずに生きて来た冷酷な借金取り稼業の日々を送る彼の前に、突如母親を名乗る女ミソン(チョ・ミンス)が現れる。
 無償の愛を注ぎ続けてくるミソンに、初めは疑っていたガンドも心を開き始めるが、その矢先に彼女は姿を消す。

◆感想<Caution!内容に触れています。>

・2重の母性愛を持つ女を演じるミソンを演じたチョ・ミンスの姿が、鬼気迫る。

・イ・ガンドが、突然母だと言って近づいて来たミソンを最初は怪しむモノの、母の愛を受けずに暮らして来た彼は、ミソンの周到な仕掛けに嵌って行く。

■秀逸なのは、冒頭イ・ガンドが債権者から非情なる取り立てを行う工場に有った鉤の付いたチェーンが、ラストに再び現れるシーンである。
 更に言えば、ミソンがイ・ガンドの誕生日の為に縫っていたセーターの見せ方であろう。

<今作の、イ・ガンドに対するミソンの姿は、イ・ガンドの取り立てによって命を絶ったサングへの母性であり、それが劇中、ミソンが憎むイ・ガンドに対しても母性の発露が見られるような構成である。
 ミソンは誘拐された振りをして、廃屋のビルからイ・ガンドの眼前に身を投げ、息絶えてイ・ガンドが生前のミソンに頼まれて植えた木を彫るシーンも強烈である。
 ミソンとミソンの本当の本当の息子であるイ・ガンドの執拗な取り立てにより自死したサングのミソンが編んだセーターを着た死体。
 その二つの死体の脇に横たわる、只一人の生者であるイ・ガンドの姿を、空から映したショットの秀逸さには、驚く。
 ラスト、且つてイ・ガンドに対し深い恨みを持っていた女性が運転するトラックの下に潜り込み、鉤の付いたチェーンで身体を縛り、走り出したトラックの後にイ・ガンドの血が川のように道路上について行くシーンは、正にピエタを彷彿させるシーンである。>

NOBU