「ストーリーは良いのに組み立てが下手すぎる」嘆きのピエタ つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
ストーリーは良いのに組み立てが下手すぎる
物語の舞台になっている清渓川周辺の町工場エリアというのは、首都ソウルの中心に近い場所にありながら開発が取り残されたエリアだ。
昔ながらの雰囲気を残すべきとの声もあるらしく、ここを開発する是非はわからないが、作品内では、見捨てられたエリア、荒んだエリアの写し身として主人公ガンドがいる。
つまり、発展した母ソウルから見捨てられた存在、息子清渓川周辺の母子の物語であるが、これはまあ具体的なメッセージ性に欠けるので無視していいだろう。
街のメタファーとしてミソンとガンドがあり、その二人にはうなぎとうさぎというメタファーがある二重メタファーは面白いと思ったけれど、使い方が良くない。
生きた動物をしめて食べる、いわゆる血肉をむさぼる悪魔の表現として何度か登場する。ガンドがしめずに飼い始めた生き物がうなぎで、うなぎはミソンであるから、ガンドがミソンを母として受け入れた事を示す。が、比喩表現としてのうなぎは、まあここでは良いとして、いくらなんでもガンドが母に陥落するの早すぎるだろ。3回あったくらいでもう受け入れ始めちゃう。
それで次が一番の問題なんだけど、うなぎとうさぎがミソンとガンドなのはちゃんと観てれば誰でもわかるわけで、そうなるとうなぎとうさぎがどうなったか、うなぎはミソンの手でしめられ調理される。うさぎは車にひかれる。二人のこれからがモロバレすぎてサスペンスらしいハラハラ感が全く持続しないのはツラい。
物語の真ん中くらいでミソンが自死することがわかってしまえば、ミソンが何をしようとしているのか全部わかってしまうのだからもう少し考えるべき。
うなぎはミソンが死ぬ直前くらいに、うさぎはガンドがテントに行ったラストシークエンスの直前くらいにするのが最善だと思う。
あとは、母子関係のあり方とかその他、文化的、思想的な違いは理解していても、さすがに気持ち悪い。
これが映画の中だけではない事実もまた気持ち悪い。
良い面は大いにあり、そこだけ見れば星5。しかし悪い面も多く差し引きで星3だろうか。
あまり良いものがない韓国映画の中でも光るものはあった。