劇場公開日 2016年3月12日

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「恐れや悲しみを乗り越える“優しさ”という強さ」アーロと少年 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0恐れや悲しみを乗り越える“優しさ”という強さ

2016年4月2日
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鑑賞方法:映画館

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幸せ

昨年夏に「インサイド・ヘッド」、今年の夏には「ファインディング・ドリー」、その合間にもう一本。
異例のハイペースのピクサー最新作。
全米では他のピクサー作品と比べ興行的に見劣り。
量より質のピクサーが話題作の間の繋ぎ?…と思いきや、これまた好編!
やっぱりピクサーは安心安定品質保証!

6500万年前、もし地球に隕石が衝突してなかったら…?
長い映画の歴史の中でこういう企画は幾度もあっただろうが、それを作り上げるピクサーの意欲的な所。

開幕早々画面に広がる、もはや実写にしか見えない映像の美しさ。
2000年のディズニー作品「ダイナソー」も映像の見事さには目を見張ったが、あちらは実写の映像にCGのキャラを合成したと聞く。こちらは背景も全てCG映像。
空も山も木々も川も、自然の雄大さと高クオリティの映像レベルを見せつける。
中でも、水。
雨に濡れた肌のリアルさと言ったら!
川、雨、洪水など“水”の描写も多く、ただでさえ難しいCGの水の表現へのピクサーの挑戦には驚嘆した。

隕石が衝突しなかった地球で、知能を持った恐竜たち。
農場を営むアパトサウルス一家の末っ子、アーロは、臆病で何をやっても失敗ばかり。
このアーロの成長物語が、オーソドックスだが実に魅力的に描かれ、共感を呼ぶ。
そのきっかけが、人間の男の子。
恐竜が知能を持った世界において、原始的な人間。
恐竜が人間なら、人間はさながら犬。
アーロにとって、この人間の少年は元凶の種。
アーロを襲ったある不幸も、川に落ち見知らぬ土地に流された事も。
だが、この少年との冒険を通してアーロは逞しくなっていく。
言わば少年は、アーロにとって乗り越えなければならない試練。
性格も真逆。臆病なアーロに対し、怖いもの知らずの少年。
実は、似た境遇でもある一頭と一人。
いつしか絆が芽生えていく。
少年を“スポット”と名付ける。
怖いもの知らずでも自分より遥かに小さいスポット。
小さな友を守る為に、大きな力がみなぎる…。

スリルやハラハラドキドキの連続の冒険。
ユーモアも勿論、悪いものに当たって見たシュールな夢の映像にはウケた。
多種多様な恐竜たちが出る訳ではないが、道中出会う恐竜たちはいずれも個性的。
仙人みたいなトリケラトプス、ワルなプテラノドンとラプトル、そして、粋な“西部のカウボーイ”ティラノサウルス一家。
長のブッチみたいな存在は若者に影響を与える。(松重豊の吹替も良かった)

冒険の終わり、一頭と一人の…。
オチは予想は出来るが、心地よい予定調和の着地。
温かい感動を呼ぶ。
恐れや悲しみを乗り越える力。
それは、何にも勝る“優しさ”という強さ。
最後のアーロは見た目的には変わってないかもしれない。
が、中身は間違いなく父のように大きくなっていた。

余談。
もし地球に隕石が衝突してなかったら、知能が発達し二足歩行の“恐竜人間”なるものが現れていた…という仮説を昔に聞いた事ある。
ドン引くような恐竜人間の予想図。
ああ、本作のような世界で良かった(笑)

近大