劇場公開日 2016年3月12日

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アーロと少年 : 映画評論・批評

2016年3月8日更新

2016年3月12日よりTOHOシネマズ日劇ほかにてロードショー

CGのリアルな景観が「実写超え」の域へ。ピクサーの進化は止まらない

第88回アカデミー賞の長編アニメーション賞が「インサイド・ヘッド」に決まり、ピクサー・アニメーション・スタジオ作品としては実に8度目の同賞獲得となった。1995年の「トイ・ストーリー」以来、常にCGアニメ表現を革新し高い評価を得てきたピクサーの最新作が、この「アーロと少年」だ。

ファンタジー作品の多いピクサー作品にしては珍しく、冒頭でSF風の前提が示される。6500万年前に巨大隕石が地球に衝突せず、恐竜たちが絶滅していなかったら――つまり、歴史のイフを起点にした、恐竜たちが文明を持ち言葉を話すパラレルワールドが舞台、というわけだ。

主人公のアーロは、大型草食恐竜アパトサウルスの家族の末っ子で、臆病な11歳。家族は畑で収穫した作物をサイロに貯蔵しているが、そこに忍び込んで盗み食いしていたのは、なんと人間の少年。そこから紆余曲折あり、アーロは川に流され見知らぬ土地でひとりぼっちになるが、くだんの少年が窮状を救う。こうしてアーロは少年と友達になり、家を目指して冒険を始める。

ピクサーがモデルとなる動植物や静物、自然の景観などを徹底的にリサーチする姿勢は良く知られるところ。本作のキャラクター造形でも、各種の恐竜の体形を忠実に再現しつつ、各キャラの性格に合わせ顔や体のパーツをデフォルメして魅力を高めた。さらに、アパトサウルスの四肢の動きに象の歩き方を反映させたり、Tレックスの疾駆をカウボーイが乗った馬のギャロップに似せるなど、親しみやすさを狙った工夫も目を引く。

だがそれ以上に驚嘆させられるのは、柔らかく光を反射させるさざ波から木々をなぎ倒す濁流まで表情を変える川、風にそよぐ草原の穂や木の葉、さらにはワイオミング州の広大な地形データに土や水や植生を加えて作り上げたという、極めてリアルな景観の描写。繊細な光の演出と巧みなカメラワークも相まって、実写を超えるほどの映像美が視覚的官能をもたらし、うっとりと楽しませてくれるのだ。

ピーター・ソーン監督をはじめとする製作陣は、ふたりの冒険に、成長物語、バディームービー、西部劇といった定番の要素を組み込んだ。その一方、シビアな弱肉強食の描写や、木の実を食べて幻覚を見る場面では、ファミリー映画らしからぬ大人への目配せも。ストーリーとビジュアルの両面で挑戦を続けるピクサーのアニメーションは、これからも進化を止めることはないだろう。

高森郁哉

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