劇場公開日 2016年3月12日

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「尽きることない表現力の追求」アーロと少年 ロロ・トマシさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0尽きることない表現力の追求

2016年3月15日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

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今回のピクサー、遂に恐竜モノです。来ましたね。ほう、そうかそうかと。本家ディズニーも『ダイナソー』やってるしね。アニメ作ってるスタジオが一度は手を付ける企画というか。遂にピクサーもかあ、と。まあ通る道だよね、とか色々思ったりしまして。うん。
ま。ただし、やっぱりピクサーなんですね。直球を嫌い、いつも斜め上を狙うアニメスタジオさんですから。設定が独自なんですね、今回も。地球が隕石衝突を免れ、恐竜達が言語を獲得し独自の文明を築いているというIFの世界。人間の方が野生ぼったいという(というか動物ですね、この世界では)。
ある日、ひょんなことから出逢うアパトサウルスのアーロ君と、人間の少年スポット君の冒険がこのお話の焦点でして。

でも、設定はピクサー的なんだけども、ストーリーは至ってシンプルなんです。あまりゴチャゴチャと展開をかき混ぜず(勿論、山場は沢山あるんですけれど)、アーロと少年を中心にして、あらゆる表現力、あらゆる演出力を駆使して見せ場を作っていく感じというか。ここがちょっと今までのピクサー作品にはなかった作りなんです。

なんていうんスかね。サクっと云ってしまうと、まるで実写と見紛うくらいの精緻な世界に、デフォルメされたキャラクター達を動き回らせてるんですよ。これがね、この上もない贅沢感を味わえるというか。しかもそれが全くミスマッチにはならず、どこまでもスムーズ、どこまでもナチュラルに溶け込んでいく画作りは、もう「お見事」の一言に尽きます。とてつもない新境地ですよ。いや本当に。
ピクサーに到達点限界点なし!なんですねえ。常に新たな表現力を追い求める姿勢には、新作観る都度に脱帽してしまいます。

特に感動したのは水!水ですね。あんなにリアルなやつ、どのアニメでも観たことない!てくらいに、水。川面に刻まれるさざ波が現実とまるで違和感なし!なんですよ。洞窟の壁に水面が反射されてる描写には、もう感動を覚えたくらいで。

そういった緻密さの連続体。表現と演出の洪水。シンプルなストーリーに高密度なメッセージを詰め込んで、ピクサーからまたまた大傑作が誕生しました。

ロロ・トマシ