「たった一つの嘘で…」偽りなき者 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
たった一つの嘘で…
親友の娘の嘘で変質者の烙印を捺された男が無実と尊厳を貫き通す姿を描いた人間ドラマ。
周りの評判が良く、いつか見ようと思ってる内に今になってしまった。年の瀬に、胸に突き刺さる映画を見た!
これは、デンマークの小さな町で起きた小さな事件。
しかし、当事者の男にとっては一生ものの事件。
誰に罪があると言い出したらキリがない。
事の発端は少女クララでもあり、クララの想いを軽くあしらったルーカスかもしれない。
こんなに悲劇的になってしまったのは、クララの言葉を真に受けた園長であり、それを信じ込んだ町の人全員でもある。
(スーパーの奴らの冷たい対応は絶対に許さない(怒))
子供は正直者で嘘をつかないと言われている。
だが、もし、その無垢な口から発せられた言葉が偽りだったら…?
たった一つの嘘で、一人の人間の人生をいとも簡単に狂わす事が出来る。
言葉は時として、最大の凶器。
誰の身にも起こり得る。決して絵空事ではない。
自分が主人公と同じ立場だったら、誹謗中傷、周囲の偏見や憎悪で、頭がおかしくなってしまうだろう。
いやそれ以上に、誰のせいでこうなったか追求し、分かったら咎め続けるだろう。
それが、自分とルーカスの違い。
ルーカスはクララを咎めたりしない。
耐え忍ぶ事で自らの無実を訴える。
そこに、ルーカスの人間性と誇りを感じる。
マッツ・ミケルセンが素晴らしい名演。
ハリウッド映画では定番の悪役が多くあまりいい印象ないが、イメージがいい方向にガラリと変わった。
親友テオ役のトーマス・ボー・ラーセンは終盤のシーンも含め印象深い演技を見せてくれる。
父の無実を信じるマルクス役のラセ・フォーゲルストラムの存在に救われた。
↓↓以下、ネタバレ↓↓
最後はルーカスの冤罪は晴れた。
再び穏やかな生活が戻り、友と集う。
…が、そこに、かつてのような居心地の良さを感じられなかった。
そして、あのラスト。
ルーカスを狙った影は誰かなど、どうでもいい。
一度捺された烙印は消えない。
その現実味のある描き方に、恐ろしさと共に、感銘を受けた。