さよなら渓谷のレビュー・感想・評価
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ラストの問いかけにギクリ
夏、クーラーもないような部屋で暮らす男女。尾崎俊介とかなこ以外は、役名がはっきりしない。ここでは名前はどうでもよく、何者なのかが重要なのだ。その人物相関が明らかになるにつれ、男女のもつれた愛憎が紐解かれていく。
互いに愛情があるのか解らない男女。生活感を感じない部屋。互いに気遣っているようだが優しさは感じない。女が重そうに持つ買い物袋さえ男は持ってやらない。それでいながら、夜は獣のように交わる。
真木よう子と大西信満は、そうした雰囲気を漂わすにはグッド・キャスティングだと思う。
二人の過去に何があったのか、それを暴いていくきっかけに隣人による幼児虐待殺人事件を設定。一見、何の関係もない事件の解明に、かなこと俊介の過去を上手く絡めていく。しかも、事件の解明を単純に警察の捜査に任せるのではなく、多分に好奇心旺盛な週刊誌記者に委ねるところが巧い。この記者が物語の進行役となる。途中で二人の関係がなんとなく分かっても、大森南朋による記者が妻との関係や女性記者とのやり取りで間を持たせ、最後までテンポを変えることなく話を着地させる。彼の問いかけで終わるラストが作品を引き締める。
テーブルはホームセンターで安く買えるが、家庭は簡単には築けない。同じテーブルを挟んだとしても、男女の愛はそれぞれだ。
これで女優に甘さのない西川美和が「ゆれる」で見せたように、人の心の奥底にあるものを妥協なく引きずり出してくれたら、もっと見応えがあったことだろう。
モスクワ受賞に恥じない傑作
大森監督の客に媚びない観せ方は健在で、間違いなく氏の最高傑作だろう。
俳優の生々しい息遣いが印象深い。
真木よう子の矢のような鋭さと、血みどろになりながら真木を受け止める大西信満の毅然とした佇まいが秀逸。
両者の一歩も譲らない拮抗が、この作品に相応しい緊張感を生み出している。
鈍色の光を放つような大西の存在感、全身から零れ落ちる切なさに胸を締め付けられた。
語り部たる大森南朋と鈴木杏も良い。
いろいろ考えさせられる映画
こういう男女の機微を描くのは映画よりも小説の方が向いていると思っていましたが、この映画はよく出来ていて、観る人がそれぞれに解釈でき、いろいろ感じ、考えさせられました。男女の間のことは結局当人達にしかわからないし、周りがどうこう言う話ではないということを強く感じました。いろいろ考えさせられて興味深かったですが、結局真木よう子という女優を観るための映画のような気がしました。
夢や希望はないけど
こんな人生もあるなぁ・・・って思える。
「幸せになるために一緒にいるんじゃない!」と言ったかな子は
生きる気力をなくし、絶望の中でも
俊介からの愛や思いやりによって、癒されて生かされているような気がするし
2人のこういう関係は、どこかでまた続いてるような気がするし。
俊介すらも、かな子の理解できない行動や、悪意に満ちた行動によって
過去の罪の意識が少しづつ、薄れて、自分の心を取り戻しているのかも
知れないな。。と思います。
主役の2人は、本当に演技しているというよりは
かな子と俊介の人生になってしまったかのように、
とっても自然で、心を打たれます。
不幸のなかにあるかもしれないひかり
モスクワ映画祭で審査特別賞を獲ったこの作品。
前から気になる映画ではあったが、やっぱり、その受賞が
背中をおしたことには間違いない。土曜日に行ったのだが、
ほぼ満員の盛況。こういう映画にしては珍しいのではないか。
女の深い絶望。それでもかすかな生きたいというひかり。
取り返しのつかない罪を犯してしまった男の悔恨と希望。
一見ささくれ立っている男と女の光景が、荒い粒子の画面に
合っていた。抱き合うときだけ、一瞬、二人を解放区に誘う。
でも、湧き上がってくるどうしようもない感情に、
ある時は男を絶望のかなたに落しこむ。
でも、許してしまう。
女の絶望感をわかっている男だから。
許してくれた女に、男は幸せを求めようとする。
でも、そんな幸せを女は拒否する。
不幸から逃れるのを拒絶する。
絶望の中で、憎悪する自分と愛したい自分。
一体、どっちに転ぶんだこの物語、この二人。
どっちにいくかわからない、そんな人間の揺れ動きが
この映画のテーマではないかと思った。
さよなら渓谷
真木よう子のおっぱいを見せるためのストーリー付け、それにしては
乳首はみえなかったが、どこに渓谷が?ラストのシーンだけ?
久々日本映画を見たが、あいも変わらぬ体たらく、
金返せ!(新宿まで出て)
しかし、真木よう子はブツブツ言うか、叫ぶかしかできない
情けない女優だね。
俳優陣がすばらしい
原作も読んで見に行きました。ネタバレなかんじで映画も宣伝されてましたし、内容は分かっていたにも関わらず、見応えのある作品でした。さすが大森監督、好みの作品でした。
真木ようこの擦りきれぶりが凄いです。
ほとんどノーメイクに見える肌の質感、目の表情、全てが痛々しくて苦しくなりました。
大西信満さんも良かったです。表情と佇まいで俊介の苦悩を体現されていました。夫婦が抱き合うシーンも痛くて哀しくて効果的でした。
個人的には留置場で夫婦が会話をかわすシーンにぐっときました。あと、
井浦新さんとのDVシーンが生々しくて凄い迫力で、女性としてはほんとに怖かった。かなこの気持ちになって、見ててここはかなりしんどかったです。
新井浩文さんも少ないカットですが、印象的で、さすがでした。
しんどい映画ですが、見て良かったです。
男女関係の説明できない難しさ
つらい映画ですね。吉田修一原作でいうと、『悪人』の路線です。男女の言葉では説明できない感情を低い温度(なんか上手く表現できてませんが・・・)で描いています。
見ていてかなりツライ、哀しい・・・今回は真木よう子がとてもいいです。西川美和監督のように、登場人物が何を考えているかは一切説明しません。こちら側に託されるのです。ストーリーについては一切知らない方がいいので書きませんが、男女の関係、特に一緒に暮らしていく関係について深~く考えさせられます。先日観た『箱入り息子の恋』とは180度テイストが違いますが、どちらも周りの人に、もう少し優しくしていこうという気持ちにさせるんですねえ。
椎名林檎が書き下ろして真木よう子本人が歌うエンディング『幸先坂』(さいさきざか)と読みます。この曲、かなり切ないです。『悪人』の時もしばらくテーマソングの『Your Story』(歌:福原美穂)が頭から離れなかったなあ。
最後が始まり?
試写会で拝見しましたが、いい映画でした。見応えもありましたね。現実問題としては、償いでここまでする加害者はいないと思いますが、まあお互いが幸せになって欲しいですね。と最後は思いました。
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