劇場公開日 2013年5月25日

百年の時計 : インタビュー

2013年5月20日更新
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木南晴夏、長編初主演作「百年の時計」で感じた香川の魅力とは?

デスノート」や「ゴジラ」「ガメラ」シリーズなど、大作を手がけてきた金子修介監督が挑んだご当地映画「百年の時計」。香川・高松琴平電気鉄道をめぐり、現在と過去の記憶が交差するなかで紡がれる恋を描く。長編映画初主演を飾った木南晴夏が、「公開されるまでの道のりが長かった作品。香川で先行上映を10月にやって半年以上あいての公開なので、ようやく公開できるんだって。最初から公開日が決まっていた映画よりもうれしさは大きい」と満面の笑みを浮かべながら、撮影を振り返った。(取材・文・写真/編集部)

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高松美術館に勤務する涼香は、念願かなって現代芸術家・安藤行人の回顧展を担当することになる。しかし、行人は創作意欲を失っており、新しいアートを生みだすために思い出の懐中時計の以前の持ち主を探してほしいと打ち明ける。

木南は映画「20世紀少年」シリーズで注目を集め、テレビドラマ「勇者ヨシヒコ」シリーズのムラサキ役など独特の演技でブレイク。今作では学芸員役に挑み、家族とのきずなやアートの持つ意味を問いかける。スクリーンに映し出される木南は、「金子監督と脚本の港さんが脚本の時点で私に寄せて書いてくれた」と限りなく自然体だ。「監督は、口数が少なくて『どう思われているのかな』って最初の頃は不安もありましたけど、こっちがどんどん聞いていくと全部受け止めて返してくださったので、すごく尊敬できました」と初タッグながら生まれた信頼関係のなか、涼香を演じた。

本作は、「ことでん」の愛称で親しまれている高松琴平電気鉄道の開通100周年を記念し、動き出した。地元になじみのある商店街にはじまり、高松空港、高松市美術館といった現代の建造物から栗林公園、大丁場の庵治石など歴史を感じさせる観光名所で撮影を敢行。木南は「香川の観光地は全部回ったんじゃないかなと思うほど、いろいろな名所が出てきます。うどんもたくさん食べたし(笑)」と高松へ思いを馳せる。「香川って山も海もあってすごく気持ちいいんです。港の側にあったアトリエでは海を感じられたし、金毘羅山には自然がたくさんあってのどかな感じだけど、高松市という都会もある。全部そろっている県ってあんまりないから、すごくいいなと思いました」と本作を通じて体感した香川の魅力は尽きない。

3週間に及ぶ撮影では「全部地方ロケで撮影をさせていただけたのは、本当に恵まれていたと思います。その地に足をつけて撮影できるっていうのはいろいろな面ですごくありがたかった」とご当地映画ならではの現場を堪能。「東京にいるとみんなの距離がなかなか縮まらない。地方ロケだとスタッフさんや共演者にしか会わないし、みんなが同じサイクルで生活しているので、すごく一体感が生まれると思うんです」とチームワークを深めた。

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エキストラなど住民のサポートも厚く、「サポートクラブを作ってくださったり、みなさんに興味を持っていただけていました。香川全体で応援してくれている感じが強かったですね。10月の香川県先行上映の舞台挨拶では、ものすごい熱い歓迎をしていただいて、ご当地映画としては、最高の状態だったんじゃないかな」と晴れ晴れとした笑顔を浮かべる。なかでも、涼香と行人がアートへの思いを共有する場となるアトリエの撮影では、「(倉庫を改造したカフェで)2日くらい撮影させていただいたんですけど、足音とか全部響いてしまうので、撮影中は『お静かに』とお願いしたりお客さんにも迷惑をかけてしまったんですが、みなさん快く協力してださいました」と地元愛を感じることが多かったようだ。

本作のキーワードである高松琴平電気鉄道は、現在稼働中のものからかつて運行していた車両までもが登場。人々の生活を担う交通機関での撮影は、「『ことでん』は二両編成でちっちゃな電車。ダイヤで使ってない時間帯を考えながら撮影させていただくので、全部秒刻みでやらなきゃいけなくて、スタッフの皆さんも大変そうでしたね」。苦労の甲斐あって、「ご当地映画って風景が1番大事」と自信をのぞかせる景色を収めることに成功した。

本作は、高松の穏やかな空気とともに、さまざまな形のきずなを浮き彫りにしている。涼香は、芸術にひたむきな情熱を傾ける半面、母親の死をきっかけに父親との間に確執を抱えた女性だ。木南は、個性的な役をはじめ、さまざまなキャラクターを演じてきたが「私自身、16歳で上京して家族と一緒に過ごした時間が短く、涼香と父親のように距離が離れているタイプの人間だったので、変なざわざわ感みたいな違和感が残ったままやった方がいいんじゃないかと思って。最後、涼香はお父さんに対して一歩前に進むけど、それで全部埋まるような関係ができるわけじゃない。親子のきずなって簡単なものじゃないと思う。見てくれた人が、何かを感じてくれたらうれしいですね」と思いを託した。

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