「エンターテインメント作品のお手本」オール・ユー・ニード・イズ・キル Minaさんの映画レビュー(感想・評価)
エンターテインメント作品のお手本
公開前に原作の小説と漫画を読破している。本作はある程度原作に忠実な部分もあるが、良くも悪くもザ・アメリカ映画風に仕上がっており、終盤の展開は原作とは大いに異なる展開であった。どちらが良いとは甲乙付けがたいが、原作を踏襲しつつオリジナル要素を展開させ、非常にエンターテイメント性が高まった所は評価に値する。しかし、終盤の展開に関しては切なさの残る原作の方が個人的には好みである。その辺は前述の通り良くも悪くもアメリカ映画の悪い所かも知れない。この手の作品が似たり寄ったりするのもそのせいだろう。
だが、どんな危機的状況でも「死ねば生き返る」という安心材料がある為、死ぬかもしれないという恐怖よりも死んで強くなるというゲームキャラ的な立ち位置の主人公の心理的な成長や繰り返すことによる鬱憤等も丁寧に描かれており、好印象を受ける。さて、肝心の侵略者である「ギタイ」についてだが、こちらも原作とは違う造形だ。原作では「太ったカエルの溺死体」というどうも格好良さを感じない表現だったが、本作に登場するギタイは触手が沢山あり、すばしっこい動きをする独特なデザインだった。ここは流石ハリウッド製の映画だろう。日本だったら本当にカエルの溺死体風なデザインにしそうだ。
ちなみに、主演のトム・クルーズとエミリー・ブラントらのスケジュールが合い次第、続編の製作に当たるとのことだ。「これまでにない続編作品としたい」と監督はハードルを上げているが、監督自身も十分に忙しそうにしている為、いつになるかは今のところ不明である。作品としては十分に期待できそうだが、スパンを開けすぎると熱が覚めていまうため、調整が難しそうに感じてしまう。