ハングオーバー!!! 最後の反省会 : 映画評論・批評
2013年6月25日更新
2013年6月28日より丸の内ピカデリーほかにてロードショー
思いがけない感動も待っている“原点回帰”の完結編
お馴染みのパターンで突き進む手もあっただろうが、この人気シリーズ完結編が選んだのは、ラスベガスへの“原点回帰”。角度を変えたストーリー展開に少々違和感を抱く部分はあるものの、今回のテーマは、ついにあのアランにも“変化”が起きるということ。なにしろ、第1作からはたった4年だが、その歳月はブラッドリー・クーパーをビッグにしただけでなく、絶対かかわりたくないタイプだったはずのアランや見るからに俗物だったスチュなど、ウルフパックへの愛情を観客に抱かせるに十分すぎる濃い時間だった。相変わらずのアランにはオープニングからハラハラ&爆笑させられるけれども、ファンにとってはアランが騒ぎを起こすのは当たり前の日常。むしろ、そんなアランに変化が起こることが衝撃的。まさかのラブストーリーは、ザック・ガリフィアナキスとメリッサ・マッカーシーとのケミストリーが最高で、恋が生まれる瞬間からして、スチュが吐き気をおぼえるほどにドラマティック(笑)。そもそもシリーズ化を狙っていたとは思えない第1作の事件をモチーフに今回の騒動を練り上げてくれたおかげで、ウルフパックが出会った人々の“現在”に、胸も目頭も熱くなるという思いがけない感動も待っているのだ。完結編としての収まり具合は、いい感じ。
とはいえ、もちろん、お楽しみの破天荒騒ぎも満載。シリーズ全作登場のミスター・チャウのブッ飛びぶりは、ケタ違いのスケールアップ。なかでも、べガスの美しすぎる夜景の中で繰り広げる逃亡劇は、このシリーズの面目躍如。おバカコメディなのに、「ここに行きたい!」と女子の気分もアゲずにいられないゴージャスで洗練されたビジュアルも、シリーズ大ヒットの大きな要因だったことは声を大にして言っておきたい。考え直して、ウルフパックにはもう1回、彼ららしい大騒ぎをしてほしいってこととともに。
(杉谷伸子)