「パウパウが可愛い感じがして、心がキュンとなる」ザ・フューチャー Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)
パウパウが可愛い感じがして、心がキュンとなる
この作品の監督・脚本・そしてヒロインのソフィーを演じているミランダ・ジュライの映画を観るのは初めての事なのだが、彼女の不思議な魅力のファンになってしまいそうだ。
彼女はこれと言って、凄く綺麗で魅力あふれる女優さんではない。しかも監督としての演出でも、抜群のキレの有る演出もない。しかしこの映画には不思議な魅力が溢れていた。
映画にするような派手な処が全く無い、ありふれた普通の日常を送っている若い一組のカップルのジェイソンと、その彼女のソフィーが、そろそろ中年期を迎えようとしているところから、この物語は始まる。
今迄、主人公の彼らは、2人だけの気ままな暮しを4年間も送って来たのだ。
だが捨てネコを飼う事になり、以前の様に気ままな2人だけの生活が出来なくなると言う。ほんの小さい日常の変化に因って、突然芽生え出した2人の将来の生活への不安。そしてその不安に襲われ始める事から起きる、心の変化と、葛藤を浮き彫りにする、切なくもあり、哀しいけれど、或る意味どこか笑える物語でもある。
拾ったネコのパウパウを動物病院で診てもらうと4週間程、ネコを引き取るまで治療入院をさせなければならない事になる。
そこでこの2人だけの自由な生活は、残り4週間のみの猶予になる。2人は改めて将来の為に悔いの残らない様にと、やりたい事をこの1カ月で始める決心をするジェイソンとソフィー。そして彼らは、仕事も止めて、本当に好きな事を始めようと行動を起こす。
しかし、人間とは厄介なもので、常に不満を抱いて生活をしている生き物で、現在の自分の生活に不満が有って、自由が無い為に、その不自由な生活に終止符を打ち、新たな選択をする事が幸福かもしれないと行動を起こして見る。実際いざ、行動を起こすと、その新しい選択は幻想だった事に気が付くと言う事は案外多い。
世の人々は常に青い鳥を求めているが、青い鳥は他には無く、現在こそが青い鳥と生活している場所と言う現実を知る事が必要だと言う、そんなテーマを、女性の目線で描く。
しかし、驚いたのはこの主人公のジェイソンが、いわゆる草食系の彼氏で、一方ソフィーは気が付いてみたら、彼女は結構肉食系である自分の本質に目覚めると言うお話だ。アメリカにも草食系男子がいたのだ!そして草食系男子を受け入れる女子がいたとは驚きだ。
どちらの人間がいけないと言う訳では決してなく、結婚もせずに、只単に気楽にパートナーとして同棲生活を続けている2人には現実の重みを受け止めるだけのパワーが無かったと言う物語なのだ。しかし、その事を時に、ネコのパウパウの目線を通して描き出す。
そしてこの映画では、ハッキリとは物語のラストを見せないで幕引きになる。つまりこの作品のラストは、観客自身が、このジェイソンとソフィーの2人の未来の結果を好きに描いて行けば良いと言う事なのだろう。
こう言うバシッと自分達作り手の意見を言わずに引導を、こちらにアッサリと投げてしまう処が、如何にも今風で時代を言い当てていると逆説的に感心した今日的な映画なのだ!