「秘密と嘘・信頼と裏切り、でも生きる事は必ず希望を生む」真夏の方程式 Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)
秘密と嘘・信頼と裏切り、でも生きる事は必ず希望を生む
この映画の魅力は何と言っても、福山雅治が演じる湯川と言う風変わりなキャラの魅力が命だと思う。そしてその湯川キャラを創り上げている福山が実に巧いよね!
TVを日頃見ない私は、TV放送された時の、この湯川さんを知らないので、TVと比較して本作がどれ程、良い出来であるかの判断は出来ない。しかし、「真夏の方程式」と言うタイトルに相応しく、真夏の海の美しさは、画面一杯に溢れ出て来るし、これはやはり、シネコンの大画面で観るべき作品だと思う。
私は、富田靖子が好きだったので、市川準監督作品の「ほんの5g」を公開当時観ているのだが、あの作品で芸能界デビューした福山は、直ぐに大ブレイクしたと思っていたが、彼がスターになるまでの、下積み生活は意外と長かったとは驚きだった。人間の記憶とは時間が経つと曖昧になり、あまり当てにならないものだ。
この作品でも、15年前の或る事件で犯人を逮捕した塚原刑事が、退職後その事件には裏が有るのではと気が付き、自己の曖昧な仮設と記憶を頼りに、再び事件の真相を洗い直す事から、再び第2の悲劇が起こると言う作りは、ストーリー展開の方法としては、オーソドックスな展開では有るけれども、それを退屈せずに魅せてくれるのは、何と言っても、前田吟や、風吹ジュンなど脇を固める俳優陣の名演が有っての事だ。
そして、仙波の出番は少ないが、白竜の名演が涙を誘う!不倫関係であったにせよ、実の子の将来の幸せを願う父親の決心には、泣かされる。
2時間以上の作品だが、あっと言う間の2時間だった。
更に、私が最も好きな場面は、子供嫌いの湯川が、徐々に自分の信じる科学の素晴らしさを理解して貰おうとして、少年と心を通わせて行く、そのプロセスが、夏休みの子供の成長ドラマと言うだけで無く、湯川自身の成長のドラマにもなっている点が、面白いのだと思う。
人は幾多の過ちを繰り返しながらも、自分の護らなければならない誰かの為に、或いは守るべき物事の為に、必死に人生を生きていく。
そのプロセスの中で同時に、自分も知らず知らずのうちに、相手にも生かされていくと言う事を知る、その人間の関係性が感動的だった。
そしてこの映画のもう一つの大きなテーマは、自然と人間との共存関係。人間が自然を開発と言う名目で破壊ばかりするのではなく、自然に因って生かされている自己を認識し、共生の道を探り当てて行くプロセスにこそ、今後私達が生き延びて行くべき未来が有る。そして、守るべき子孫の、人生を救うのは、この自然との共生と言うテーマを1番に優先するべき事であると言うのも、この作品の大きなテーマだ。しかし湯川が発言する様に、只自然破壊を反対するのではなく、現在の生活では、科学文明は、必要悪で有り、その恩恵に皆が浴しているのだ。したがって科学的研究を重ね、科学と自然の融合を目指す事が今後の一つの明るい未来の可能性の扉を開く鍵を握っていると、湯川のキャラを通して伝えてくれていると考えるのだ。夏休みも近い今、海へ行けない人は是非この美しい海を映画館で体験してみては、どうだろうか? 日本の美しい名所を知るのは実に嬉しい体験だ。