「思考の重心がぶれない強さ。」ハンナ・アーレント キッスィさんの映画レビュー(感想・評価)
思考の重心がぶれない強さ。
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ユダヤ系ドイツ人でアメリカに移住した哲学者ハンナ・アーレントが、イスラエルで戦争裁判を傍聴した記録を出版したことから議論が巻き起こる。
ユダヤ人でパリで収容された経験をもつ彼女が、戦争裁判の被告アイヒマンやナチスを擁護するとも受け取れるような記事を書く。
それにはユダヤ人だからナチスやそれに加担した者を裁くのは当然という思考停止とも言えることから脱却し、アイヒマンを平凡だと表現する。役人として命令に従っただけという視点で記事を作成し、友人からも非難され、受け持つ講義の学生からも非難される。
それでも、彼女はユダヤ人指導者がナチスの協力者でもあったという衝撃的なことも書きながら自分の主張を曲げない。
最後の学生に講義する、というよりも自分の主張を高々に話す彼女は迷いは感じない。
「思考することをしなくなった平凡な人間が残虐な行為に走る。考えることによって得られるのは知識ではなく、善悪の判断であり美醜である。考えることによって人間が強くなる。」という最後の言葉は頭から離れない。
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