劇場公開日 2013年10月26日

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ハンナ・アーレントのレビュー・感想・評価

全44件中、1~20件目を表示

3.5アイヒマン・ショーの傍聴席から

2024年4月11日
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 おそろしく地味な映画です。ただ、その分考えることが、見えてくるはず。
 世紀の極悪人を、よそのクニから、かっぱらって来ました。ナチの残党よ!。我らの正義の鉄槌を、受けてみよ!。ハンナさん、ユダヤを代表して、胸がすくコメントをひとつお願いします。

 …あの人は、ただのおっさん。上役に逆らえない小役人。

 余りに的確すぎるコメントは、喝采を浴びるどころか、大炎上。皆様なら、どうやって鎮火します?。普遍、周りのヒトに合わせて修正、弁明するところ、ハンナ姐さん、正面突破。火元にニトロ投げ入れて吹き消しに挑みます。

 ハンナ姐さん、どうしてそんな冷静なの。
 どうして、加害者を憎まないの。
 どうして、被告人の板挟みの苦悩が理解できるの。
 身内の憎悪に呑み込まれないの。
 ハンナ姐さんなら、今のイスラエルをどう思うの。

 今こそ、憎しみのメビウスを超えた、ハンナ姐さんの思い、届いてほしいな。…どうしたら、届くのか、わかんないけど。

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機動戦士・チャングム

3.0存在とは思考する自己である

2024年3月7日
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鑑賞方法:DVD/BD

「サウルの息子」が衝撃的に面白く、今年はそれ以降ホロコースト関連の映画を追いかけている。
知らなかった世界の扉を開く行為に夢中になった、とも言えるだろう。
そんな中でも「ハンナ・アーレント」は「何故人類は残酷な行為に手を染めたのか」という問いに答えを示した哲学者を通して、新たな知見を得られた得難い映画だった。

この映画で重要なキーワードとなるのは「普通の人間」という言葉だろう。アイヒマンも普通の人間であり、彼の本質を看破したハンナもまた普通の人間である。
「ハンナ・アーレント」なのだから、彼女の日常を描くのは当然と言えば当然なのだが、アメリカで夫と暮らすハンナはごく普通の女性である。
気のおけない女友達がいて、夫に寄りつく女性を牽制してくれたりする。
友達を自宅に招いてお喋りしたり、倒れた夫に寄り添ったり、ごくごく普通。

一方のアイヒマンもまたごくごく普通の組織の構成員である。彼の主張は「命令だからその通りに行動した」というものだ。ある意味当たり前の事をした、ただそれだけだ、というものである。
アイヒマンの裁判での映像は記録映像で、ハンナが実際に目にしたものを私たちも見ている。果たしてアイヒマンは冷酷無比な異常者に見えただろうか。

ハンナの「アイヒマンは普通の人間」「時に平凡さが巨悪を成す」という分析が受け入れられなかったのは、主に感情論だ。
裁判のシーンでも被害者であるユダヤ人の証言はアイヒマンの有責を示すものではなく、「いかに自分が(または家族が)残酷な目にあったのか」が延々と語られる。
裁判に必要な証言とはおよそ呼べない情緒的な光景が繰り広げられる中で、ハンナとアイヒマンだけが「これは何の冗談だ?」と感じていただろう。

悪を成したのだから悪人であるべき、という主張は繊細過ぎるし感情的過ぎる。
感情を排して「何故人類は残酷な行為に手を染めたのか」を紐解こうとした時、感情論で向かってくる相手と同じ目線に立てないのは自明だ。
さらにハンナの主張は「善人であるあなたも巨悪を成す可能性がある」とあらゆる人に刃を向ける。

強烈な批判と友人たちの別離を受けてもハンナが折れなかったのは、「考えることを止めなければ正しい選択が出来る」という信念からだ。
そして「考える」という行為が人間の存在を人間たらしめているという矜持だ。
ラスト8分間のスピーチは、ハンナがその全存在をかけて紡いだ「人間への希望」である。

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つとみ

4.0ユニークな構成ありきで、彼女の政治哲学への肉薄が薄れたかのような…

2023年4月21日
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鑑賞方法:DVD/BD

2013年のキネマ旬報ベストテンで
「愛、アムール」「ゼロ・グラビティ」に次ぐ
第3位に選出された当作品を、
ようやく観ることが出来た。

この作品、確かに
最後の講義でのスピーチは
彼女の政治哲学を集約的に示して見事だが、
盛り上がり感があるのはこの部分だけで、
映画作品としては全般的に平板に感じた。

私の理解が及んでいないのかも知れないが、
それは、
ハンナがアイヒマン裁判の当初から、
彼は凡人であったとの彼女の台詞もあり、
それはラストの講義での、
戦争犯罪は無知の成せるワザとの
スピーチの主旨に合致しているわけだから、
特段にこの裁判で彼女の思想が
大きく変化したものではないことと
符号しているためではなかったろうか。

更には、この映画で特徴的なのは、
この映画での撮影フィルムと
裁判当時の映像を重ね合わせた手法だが、
このユニークな手段が先にありきで、
何かアイヒマン裁判が彼女の思想の
エポックになったかのような構成に
無理があるように感じたことが、
今一つこの作品に乗りきれなかった理由にも
なったような気がする。

しかし、それよりも問題は、
ラストシーンでのユダヤ人の終生の友人
からの三行半の場面で、
昨今の世情で感じる、
当作品のハンナや
「夜と霧」のフランクルのような、
他者への寛容性が影を潜めると共に、
客観的な思考・立場の陣営は少数化して、
両極の思想のどちらかの陣営に属すことが
強要されているような世界観に繋がっている
ようで怖さを感じてしまった。

それにしても、
ハンナのヘビースモーカーぶりは凄い。
彼女の死因は心臓発作のようだが、
喫煙漬けも遠因となっていなかっただろうか
と余計な事が、頭をよぎった。

 4月23日再鑑賞
この作品への理解が出来ていないのでは
ないかと気になって再び鑑賞してみた。
ラストシーンでのハンナの講義内容には
最初の鑑賞時よりも感動を覚えると共に、
色々なことが頭をよぎった。
例えば、ハンナは確実にハイデガーの
同じ哲学を受け継いでいるが、
ハイデガーは戦中の人で、
ハンナは戦後の人であったため
評価が異なったこと、
また、彼女の、「思考停止の結果、
平凡な人間が残虐行為に走る」との哲学は、
後にキング牧師が引用したであろう、
映画「紳士同盟」の中の、
「最大の悲劇は、悪人の圧制や残酷さでは
なく、善人の沈黙である」との台詞にも
通じるものがあるようにも感じた。
いずれにしても、私のこの作品への認識が
少し高まったことにより、
🌟を1つ加えさせて頂いて、
🌟4つに変更させて頂きました。

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KENZO一級建築士事務所

4.5本物の学者

2022年8月17日
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鑑賞方法:DVD/BD

 食うために講義を行う職業学者ではなく、学問を追及するために生きている本物の学者だったのだろう。

 このドラマを見て思ったが、実際のアーレントは、ただひたすらに自分が目指すテーマについて考え、考え、考え抜いた人生だったのではないだろうか。

 本物の学者だったからこそ、 アイヒマンを異常なマゾヒストや悪魔としてではなく、 命令に従順な極めて凡庸な男であるとし、それこそがナチスが犯した恐ろしい悪の核心であり、人間の誰もが持つ非常に危うい一側面なのだと喝破できたに違いない。

 彼女を「傲慢」「裏切者」と罵る同胞たちの、嫌悪と憎しみに満ちた抗議は、実際、この作品の中で描かれている遥か以上に凄まじかったのではないかと想像する。

 そんな嵐の前に立ちはだかれたのは、職業的な使命感などではなく、 知性と探求心いう強靭な防護服を身にまとっていたからだ。 彼女は孤独の中で、ひたすら自分自身の中に映る真実と対話していたのだと思う。

 本物は他人に媚びない。 それだけに著書はなかなか難しくて読みづらいが、 この作品を観たのをいい機会に、ちょっと再挑戦してみようかと思っているところである。

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Garu

5.0最後の名言を理解できるか?

2022年5月1日
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鑑賞方法:DVD/BD

ハンナ・アーレントは、ドイツ系ユダヤ人で、女性の哲学者で、ナチス・ドイツの迫害により、フランス、アメリカへ亡命し、エルサレムで、アドルフ・アイヒマンの裁判を傍聴し、「イエルサレムのアイヒマン-悪の陳腐さについての報告」を発表した人です。
日本では、人気のない裁判映画ですが、実話です。
事前に「スペシャリスト 自覚なき殺戮者」を鑑賞すると理解が深まります。
ストーリーは、ハンナ・アーレントの学生時代の思い出が挿入されるくらいで、時系列に進むので理解しやすいです。
ハンナ・アーレント以外の登場人物については、知っていることが前提であるかのようにストーリーが進みます。
ハンナ・アーレント以外の登場人物については、鑑賞後、調べない限り、わかりません。
ハンナ・アーレント以外の登場人物の立場を理解していないと、この映画も理解できません。

ハンナ・アーレントは、哲学者として、最後まで考え続け、「人間が思考ができなくなると、人間が残虐行為を行う」という悪の汎用性を指摘しました。
ハンナ・アーレントは、ドイツ人もユダヤ人も人種に関係なく、大罪を犯す悪を持っていると指摘したので、一般的には受け入れられましたが、ユダヤ人からは非難されました。
ユダヤ人達の空気は、ナチス・ドイツは絶対悪で、ユダヤ人とは全く違うということです。

アドルフ・アイヒマンは、ユダヤ人課で、ユダヤ人たちの亡命と引き換えにユダヤ人たちの全財産を没収する巨額のビジネスを立ち上げ、この延長線上にユダヤ人虐殺があるのではと思うので、有罪で、死刑は妥当だと言えます。

日本の若い人の保守化が指摘されることがありますが「上に逆らっても状況は変わらない」、「抵抗したところで、どうせ成功はしない」と仕方なく考えるように、教育されているのではないのでしょうか?
いじめられようが、パワハラを受けようが、セクハラを受けようが、炎上しようが、自分で思考し、意見の言える日本人はいるのでしょうか?
いじめて、パワハラして、セクハラをして、炎上する日本人に必要なのは哲学を学ぶことです。

ナチス・ドイツに迫害され、亡命を余儀なくされたハンナ・アーレントが、アドルフ・アイヒマンを客観的に見て、普遍的な結論を導き出せた理由は、ナチス・ドイツに迫害され、亡命を余儀なくさせられる前に、マルティン・ハイデッガーから哲学も、不倫関係になり愛することも学んだからだと感じました。
マルティン・ハイデッガーは、後にナチス・ドイツに入党しました。
ハンナ・アーレントは、ナチス・ドイツが全て悪魔という考えはないでしょう。
教育は、重要です。

自分は、思考を停止し、民族として、日本人を愛する気はないです。
自分は友人を選ぶので、思考を停止し、民族として、日本人を愛する人を友人には選びません。
自分は、思考することで、自分が強くなりたいです。

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ノリック007

3.5思考することの大切さ。それを棄てた者はもはや人間とは言えぬ。 でも...

2021年10月23日
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鑑賞方法:DVD/BD

思考することの大切さ。それを棄てた者はもはや人間とは言えぬ。
でもそんな人いっぱいいますよね。上司や政治家、そして宗教指導者の言を鵜呑みにする権威に弱い人間。
気をつけよう…私は人間でいたい、そう思った。

ラストの8分間の演説は圧巻。だが、映画として面白かったかと言われれば、私にはクエスチョン。また見たいか?…???なのだ。夫とやたらチュッ💋するのもウザい(笑)

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はむひろみ

4.5【600万人のユダヤ系民族処分に関わったアイヒマンは”思考しない、凡庸な小役人”と見抜いたユダヤ人哲学者がシオニズム思想からの糾弾に屈せずに、”思考する大切さ”を貫いた姿勢を描く。】

2021年9月14日
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鑑賞方法:VOD

悲しい

知的

幸せ

ー アイヒマン逮捕にモサドが関わった経緯については、脚色はあるものの、「アイヒマンを追え」で描かれている。
  今作は、その後裁判に掛けられたアイヒマンの姿を見、言葉を聴いたユダヤ人哲学者のハンナ・アーレントが深い”思考”をして、ある結論に至る過程と、それによりシオニズム思想を持つ同胞たちから糾弾されながらも、自分の哲学者としての態度を貫く過程を、描いた作品である。ー

◆感想
 ・アイヒマンがイスラエルで裁かれる裁判シーンで、当時の実際の映像を絶妙のタイミングで挿入することで、
 ”アイヒマンは、”思考”しない只の凡庸な小役人であった。”
 と言う事を、観る側に対し、伝えようとする構成テクニックの妙。
 機械の如く、アイヒマンの口から繰り出される
 ”私は、命令に従っただけだ・・。伝達者だ。”
 というフレーズ。
 ー 今では、アイヒマンは只の小役人であり、悪の凡庸さを持った許されざる人間だったという説も認められるようになってはきたが、当時はそうではなかった。ー

 ・ニューヨーカーの特派員として、現地で裁判を傍聴したハンナ・アーレントが
 ”この男は極限状態の中、思考しなかった”悪の凡庸さ”の象徴だ。”
 ”ガラスの中の凡庸な幽霊だ。”
 と気付き、逡巡しながらも原稿に認めていく。
 ー ハンナ・アーレントが、哲学者として見抜いた事を逡巡しながらも、そして自らがユダヤ人でありながら、解釈の仕方によっては亡き600万人のユダヤ系民俗を冒涜するリスクを分かった上で、自分の考えを貫いて行く姿。ー

 ・その記事がニューヨーカー誌に発表された途端に、長年のシオニズム思想を持つ友人達や、ユダヤ系の人々や、ナチの行為を糾弾する人々達からの、脅迫紛いの多数の手紙。
 そして、大学からも辞職勧告を受ける、ハンナ・アーレント。
 だが、それに対し、敢然と”私は辞めない!”と言い放ち、満員の聴衆が見守る中、彼女が凛とした態度で、自説を述べていく姿。
 ー このシーンは、白眉である。
   ハンナ・アーレントが、満員の聴衆に雄弁に語った
   ”思考しない凡庸な悪”
   ”思考することの大切さ”についての数々の言葉。ー

<一部の人間が憮然として席を立つ中、多くの若者達からハンナ・アーレントに贈られる万雷の拍手。
 けれど、長年の友人からは厳しい言葉を受けてしまう。
 ユダヤ人哲学者として、ハンナ・アーレントが悩みつつも、”どのような状況であれ、思考する事の大切さ”を貫く姿勢に敬意を抱いた作品。
 言論の自由、思考の自由についても、考えさせられる作品である。>

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NOBU

4.0考え続けることをやめない姿勢に感銘

2021年5月8日
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記録

『顔のないヒトラーたち』
『アイヒマンショー』
など、ナチスやホロコースト関連の映画をたくさん見てから、もう一度観たいと思う。

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nico00

4.5女性が生き生きしている映画

2021年5月4日
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Tom

2.0書くとは、

2020年11月14日
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鑑賞方法:DVD/BD

知的

書くとは、他者に嘘をつかないこと以上に、自分を裏切らないことではないか。それはすなわち他者に本音を打ち明けることにひとしく、〈私〉が〈私〉を裏切らないことへの信頼である。

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bird_brunch

4.5絶対的な価値とは?

2020年10月23日
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鑑賞方法:映画館

最近の日本には、相対的な価値観が蔓延してると思う。

「俺は良くないと思うけど、まぁ、その人が良いと思ってるんなら良いんじゃない?」みたいな、何かを失うことを恐れて全ての価値を相対化する風潮。

そんな時代だからこそ観るべき映画。

ナチスのユダヤ人虐殺を実行したアイヒマンの裁判を論評した、同じユダヤ人の主人公ハンナ・アーレントにまつわる顛末。

この裁判自体、東京裁判なみに公平性の無い見せしめ裁判なので、日本人としての自分は論じる価値は無いと思うんだけど、ユダヤ人の感情的回復を図るには重要な「儀式」だったんだとは思う。

そこに一石を投じたのが哲学者のハンナ・アーレント。

アイヒマンは官僚としての立場で機械的に虐殺命令を実行しただけで、そこに意志は無かった。悪いのは実行したアイヒマンではない、というのが彼女の主張。

彼女の言う「悪の凡庸さ」。
この恐ろしさを理解できるかどうかが、この作品を観る上での鍵。

今現在仕事をしていても感じる、官僚的な組織(会社)の思考停止状態。個人的な良心はあっても役に立たない。集合としての意志というのか、合成の誤謬とい うのか、誰も望まないのに何故か全体として悪い方向へ進んでしまう。別に当時のドイツ人が特別だったわけじゃなく、人間の組織であればどこでもどんな時代 でも起こりえる話。だからこそ恐ろしい。

そして、よくどこかの政治家が言う「絶対的な悪」など、くだらない宗教(空想)上の概念でしかない、ということが、この作品観るとよくわかる。

身の回りの友人関係を失ってでも真実を追求する、という哲学者としての彼女の姿勢に共感&感動する。
(・・作中のハンスとは後に和解したらしいけど。)

それこそが絶対的な価値だな、と私は作品を観て思った。

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yone

4.0危機的状況下においても対話し考え抜くこと

2020年8月11日
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20世紀を代表する政治哲学者、Hannah Arendtの1960年代前半を中心に描いた作品。

彼女は多くの名著を残しているが、本作では「エルサレムのアイヒマン」を描く前後の物語。実際のアイヒマン裁判の映像を織り交ぜ、まるでドキュメンタリー映画のように淡々と描いているところが、かえって作品のテーマ(“悪の凡庸さ“)を重く伝えている。

アイヒマン裁判の傍聴レポが雑誌で発表されると、アイヒマンの立場を擁護したと世界中の同胞者(ユダヤ人)から大バッシングを受ける。彼女は決してアイヒマンの行為自体を許していないが、彼が世間がみているような世紀の大悪人ではなく、ヒトラーの指示に忠実に従う単なる小悪人(悪の凡庸さ:the banality of evil)とみていた。

ヒトはひとたび思考不能(無思想性)に陥ってしまうと、「法」に従うマシーンと化してしまう。ナチスの暴走を招いた、一部のユダヤ人指導者にも同じ状況に陥っていたことを指摘している。

事の大小は異なるが、企業や官僚の不祥事でも同じようなことが繰り返される。
(深く考えずに)今あるルールや慣習に従うことは楽なことではあるが、もしかすると間違ったことをしている可能性に気づいていない可能性がある。

「思考とは自分自身との静かな対話である。考えることで人間は強くなれる。危機的な状況であっても考え抜くこと。」彼女のメッセージは現代の私たちにも強く突き刺さる。

社会の同調圧力の濫用に安易に屈することなく、言うべきことがきちんと言える社会の大切さ。

彼女は大学の講義のシーンで、決してアイヒマンを許すのではなく、私たちには「理解する責任」があると述べている。彼女のコメントからオウムの高級幹部の裁判を思い出す。なぜ彼らが麻原彰晃を盲目的に信じて、あのような暴挙に走ったのか、きちんと整理・理解することを行わず、結論(判決)を急ぎすぎてしまったのではないか。

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atsushi

3.0アイヒマンって、よく映画化されてますね・・・

2020年6月16日
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 まだ1960年代、ユダヤ民族の感情からすればバッシングを受けるのは当然。それを敢えて自らも抑留されていた本人から、擁護とも取れる内容を発表する勇気には感服する。

 アイヒマン“悪”は“凡庸の悪”であって、根源的な悪ではないと主張するハンナ。最後にいつもの大学で講義するのだが、頭の固い教授たちには伝わらず、学生たちは拍手喝采!どこにでも悪があるんだと喚起してくれる講義にはもっと具体例が欲しかったけど、中東戦争が始まるまではわからないですね・・・

 最後にはハンナの気持ちもよく伝わってくるが、映画としてはなってない・・・。単に彼女の論文をわかりやすくしただけの内容だった。ガチガチの反ナチ映画よりはいいかもしれんが・・・

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kossy

4.5アーレントが提唱した「悪の陳腐さ」

2020年5月23日
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鑑賞方法:DVD/BD

小役人だったアイヒマンが、ユダヤ人600万人を虐殺する大悪党になってしまったのは、彼が思考を停止した凡人だったから。
彼はナチス党で出世するために与えられた任務を一生懸命こなしてこの恐るべき犯罪を犯しました。
アーレント曰く、現行のシステムがもたらす悪弊に思いを至らすことをせず、それをを無批判に受け入れることに「悪」の本質があると。
役人にしてもサラリーマンにしても、現行の仕組みやシステムに対して批判的な目線を持ち合わせていないと、誰もが悪人になる可能性があるということです。
この「悪」は特別なものではなく、その辺にありふれている陳腐なものだというアーレントの考えには賛同します。

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さばとら

3.5思考の重心がぶれない強さ。

2020年5月12日
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キッスィ

3.5凡庸な悪はだれでもが持っているもの?

2019年3月26日
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ナチスのアイヒマンの裁判を通して、悪人とは何なのかを問う。
アイヒマン自身が、自分の仕事を遂行しただけ。考えることを辞めて上官の指示に従っただけだと語る。
それは、凶悪な心を持った犯罪なのか?または、ただの凡庸な一市民が戦争という名のもとに思考停止になっただけなのか?

確かにアイヒマンのような人は、たくさんいた。
この映画では、ユダヤ人迫害を行なったナチスドイツについての罪を問いているが、
原爆を開発し、投下したアメリカの研究者たちも、そこに住む何十万人もの戦士ではない一般の人たちを一瞬にして殺してしまったことを凶悪な心を持って行なっていたとは思えない。

人は、自分の生活を中心に全てを考える。
自分の立場を守るため、自分のことだけを優先して考える。
そこで自分が人を傷つけているとか、殺人に手を貸しているとか、考えて行動出来るのは、自分の身が安全な時だけだと思う。
だからこそ、誰もが自分の中にある悪人の部分を意識して、人間になれているのかを常に考えていくことが必要。

思考停止して、自分の良心からも逃げてしまうことだけはしたくない。

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七星 亜李

3.5人間の悪の普遍性を認めるまで

2018年11月19日
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悲しい

知的

難しい

ユダヤ人の中にもナチスに手を貸している人がいた、という事実は、現代ではある意味常識(イスラエルや多くのユダヤ人はたぶん認めてないけど)になっている。自身が被害者でありながら、人間の悪を客観視したアーレントは凄い。やはり、今に名を残すだけある思想家である。1つの民族を愛したことはない、という生き方が、グローバル化した現代人に必要なものなのではないか。

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a0064

3.0予想どおりの内容。とくに良くも悪くも無く。ハンナ・アーレントという...

2018年3月2日
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鑑賞方法:DVD/BD

予想どおりの内容。とくに良くも悪くも無く。ハンナ・アーレントという人を知るきっかけとしては良い。

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まるぼに

3.0予想どおりの内容。とくに良くも悪くも無く。ハンナ・アーレントという...

2017年9月10日
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予想どおりの内容。とくに良くも悪くも無く。ハンナ・アーレントという人を知るきっかけとしては良い。

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まるこ

4.0平凡で与えられた業務に忠実な男の罪

2017年5月28日
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「とても素晴らしい作品だった」という言葉は、残虐な犠牲の上で起きた出来事と関わる媒体に対して使用すること自体を躊躇う。
しかしアドルフ・アイヒマンという男を「平凡」と呼び、彼の人格を実に忠実且つ客観的に捉えたハンナ・アーレント女史の功績には目を見張るものがある。

当時ホロコーストがどれ程の脅威であったかを想像することが容易であり、その一点に大衆の倫理道徳の基盤を向けるのが当たり前であったのに、彼女はアイヒマンの公開裁判で、自分の目で見た彼の人柄やユダヤ人迫害に対する意識などを、実に冷静に(冷淡さを持って)推理した。
それが如何に彼女自身の心を傷付けたことか、憎むべき相手が出廷していない裁判を傍聴し、裁かれるべき罪の意味すら不明瞭になっていく中、ハンナは毎日何を思っていたのだろうか?

個人的にはとても興味関心の深い内容であり、ハンナの出した論文及び考察には高い評価と共感を示した。

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いくら