「平凡で与えられた業務に忠実な男の罪」ハンナ・アーレント いくらさんの映画レビュー(感想・評価)
平凡で与えられた業務に忠実な男の罪
「とても素晴らしい作品だった」という言葉は、残虐な犠牲の上で起きた出来事と関わる媒体に対して使用すること自体を躊躇う。
しかしアドルフ・アイヒマンという男を「平凡」と呼び、彼の人格を実に忠実且つ客観的に捉えたハンナ・アーレント女史の功績には目を見張るものがある。
当時ホロコーストがどれ程の脅威であったかを想像することが容易であり、その一点に大衆の倫理道徳の基盤を向けるのが当たり前であったのに、彼女はアイヒマンの公開裁判で、自分の目で見た彼の人柄やユダヤ人迫害に対する意識などを、実に冷静に(冷淡さを持って)推理した。
それが如何に彼女自身の心を傷付けたことか、憎むべき相手が出廷していない裁判を傍聴し、裁かれるべき罪の意味すら不明瞭になっていく中、ハンナは毎日何を思っていたのだろうか?
個人的にはとても興味関心の深い内容であり、ハンナの出した論文及び考察には高い評価と共感を示した。
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