黒四角のレビュー・感想・評価
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前半は良い
難解で哲学的というよりは、SFと恋愛ドラマがうまくブレンドされたジュブナイル小説のような解り易い内容だった。
ジュブナイルを硬質で乾いた質感で撮っている。そこがとても新鮮だった。
特に前半が良い。
風景が美しい。人物描写も瑞々しい。緊張感を保ちつつ落ち着いた骨太さもある。
荒唐無稽な話ではあるのだが、それを感じさせない確かな手触りの映像であり、画力だった。
ただ残念なことに、後半、日本兵のシークエンスのあたりから画力が失速する。
演者が借り物の衣装を着ているように見える。室内の様子もまるで書割りのようだ。前半の映像の緊密さが、無くなってしまう。
非常に惜しい。
ストーリーの進行上、致し方ないのかもしれないが、後半のエピソードは説明的すぎ、理に落ちすぎである。「頭で考えた架空の話」の薄さが露呈してしまう。
日中戦争を差し込む意図は充分理解できるのが、その扱いはあまりに甘くナイーブだ。この部分の練り込みももう少し必要だったのではないか。
辛口の感想になってしまったが、奥原監督の過去作「青い車」などに比べて格段に進歩している。次回作に期待したい。
2012年のベスト3
2012年の東京国際映画祭で4本見た中の1本。その中でこの映画がダントツに良く、個人的に同年のベスト3に入る作品。
事前情報だけだと解釈をこちらに丸投げしてくる系の映画かと思っていたけど、良い意味で期待を裏切られる作品だった。
過去・現在・未来の3つの物語が交差する恋愛映画だけど、ふたりが徐々に接近する過程に引き込まれ、切ないラストはかなりグッときた。
中国のどこにでもありそうな町を舞台としながらも、どのシーンもすごく映画的でとても美しい。
シーンとシーンのつなぎ、物語の転換点に存在する映像的な間も気持ち良く、久しぶりに上映時間が終わることを惜しみたくなるような映画だった。
一般公開の話を聞かなかったので、されないないのではと思っていたけど、公開されることを知り思わずレビューを書いた。
もういちど観たい。
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