リンカーンのレビュー・感想・評価
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偉業の内幕。千里の道も一歩よりの一里塚。(後半ネタバレ)
スピルバーグ監督の作品を鑑賞するのは、まだこれで11作目だが、監督作品に期待するような、想定外のカタルシスは、この映画では得られない。
監督のせいではなく、私が無知なためなのだが。
奴隷制廃止の法案を成立させるための攻防を、家族とのエピソードも交えながら描く。
法案成立、内戦終結、どちらが優先か。
人によって、その重点が異なる。
リンカーン大統領と国務長官はどちらも捨てたくない。終結した後では、法案は成立しない。それゆえに、ロビイストも使い、きわどい駆け引き・強引な指示・嘘を駆使して事を進めていく。
とはいえ、終結しなければ、無駄な血が流れ続ける。そのことに心が引き裂かれる思いを抱え、時に迷い、苦悩する。だが、否、だからこそ、強靭なリーダーシップを発揮して事を進める。
果たして、案は成立するのか?終戦は?最初に暗示される暗殺と、史実として「法案成立」を知っていても、ハラハラする作りになっている。
リンカーンの偉業が単独で語られることが多いけれど、実は周りにはいろいろな人がいて。
リンカーンよりも急進的な人。廃止はしたいけれど強く出られない人。そのままでいいじゃないかと思う人。廃止のために暗躍する人。そんな議員を選出した選挙民。その人たちの思いが結実した偉業。
それでも、あれだけのリーダーシップを発揮しなければ成しえなかった。人道的な思いがリンカーンとしての偉業なのではなく、その戦略・その実効性が彼を偉人たらしめたのか。
そして、”自由”の意味も。
”自由”のために闘ってきたけれど、”自由”を手にしたら、何をしたらよいかはわからない。
それでも、ケックリー(リンカーン家の家政婦)が言うように、人としての矜持なのだろう。
それぞれの役者も見事。
デイ=ルイス氏、フィールドさん、ジョーンズ氏は他の方も絶賛。
に加えて、私の推しはストラザーン氏。国務長官と言う懐刀をひょうひょうと演じられている。育ちのよさそうなふるまい。切れ者。大統領の側に控えて、視線を動かし、場の状況を見極めようとするさま。質問をはぐらしがちな大統領の本音を探ろうとする。つい、国務長官の視線がどこを向いているかに注目してしまった(笑)。
議員は、正直誰が誰やら。イェーマンを演じていらっしゃったスタールバーグ氏をはじめとした数人が見分けがつく程度。(スタールバーク氏って『女神の見えざる手』でロビイストを演じ照らした)でも、自分の政治家としての基盤と暮らし、国の行く末を賭けて、熱くなり、怯え、葛藤している様を熱演。迫力。
そして重厚な落ち着きのある映像。窓から漏れる光と、ランプだらけの部屋。
感情を先導・煽ることのない音楽・音響。
歴史絵巻を紐解く感覚。
と酔える要素は満載なのだが、鑑賞後は、それまでの歴史認識の間違いを正され、ショックを受け、カタルシスが吹っ飛んでしまった。
冷静に考えれば、そりゃそうだということなんだけれど。
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≪歴史的事実なのだけれど、以下内容に触れています。ネタバレになってしまっていたらごめんなさい≫
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南北戦争とは、奴隷制廃止を求める北軍と、奴隷制存続を求める南軍との戦いだと思っていた(本当はもっと複雑な思惑が絡んでいるらしい)。
えっ?!あの『奴隷解放宣言』て、戦時中限定のものだったの?!!!
だから、それを終戦後も永続させようとして修正案=奴隷制廃止法案が必要になるわけだが。それすらもUSAでは州が批准しないと有効ではないって…。尤も、どこぞの州は批准していないことに気が付かないまま奴隷解放が成立していたが。
そして、北軍は認めていないけれど、南軍はアメリカ合衆国から、アメリカ連合国として独立したことになっていて、独自の大統領も擁立している。
と言うことは、あの、下院に集まっていたメンバーは全員北軍?
北軍の中にも奴隷制存続を求めるものがあんなにいるんだ。
私の認識は混乱する。
国務長官に「終戦よりも、法案成立が先」と決心させる陳情夫婦は、陳情に来るくらいだから北軍?それでも、終戦のために奴隷制廃止が必要と思っているけれど、終戦したら奴隷制は存続を希望するって…。
存続を願う理由。
南部が「財産が!」と叫ぶ。奴隷=財産と言うだけでなく、奴隷がいなくなったら、あの大農園の維持ができない。今の日本と同じ、働き手が確保できなくて廃業する企業。
”自由”を与えたら、暴徒化するからって。仕返しされるようなことをやってきたという自覚はあるのか。可能性はなくはない。着の身着のまま放り出されたら、生活が成り立たなくなったら、実力行使するしかない輩もいるだろう。
このあたりの理由は、他に解決策あるだろうと思うけれど、理解はできる。
それより信じられないのは、人種としての平等はあり得ないと叫ぶ輩!!!あんなにいるんだ。しかも議会で。ヤジではなく、”正論”と信じて叫ぶ・叫ぶ。
かつ、ここに再録したくないような発言・認識の数々。
なんだこれは?!!
人としての尊厳を認めているわけではないのか。
当然、選挙権も与えることも拒否。(女性もこの頃選挙権なかったけれど)
ここ、北軍の集まりだよね?
南軍も入っていたの?
そして、最終的に、法案は「人としての平等」ではなく、あくまで「法の下での平等」ということで、可決される。
え?!そうなの?
勘違いをしていた私は思いっきりショック。カタルシスがふっとび、後味の悪いものになる。
とはいえ、とりあえず、奴隷と言う制度をなくさないと始まらない。
そう、今に続く長い道のりの一里塚。そういう意味では、やはり偉業なのだ。(無理くり納得)
≪蛇足≫
☆息子ロバート。周りが戦場に行って、募る気持ちはわかるけれど、命かけて戦っているのは君の親父も同じだぞ。親父を側で支えんかい!とどつきたくなった。
演じられたゴードン=レヴィット氏が、これまた、青臭さを振りまいてくれる。
☆デハーン氏の出番てあれだけ?編集で削られたのだろうか?
では、この映画の中の誰と役を取り換えたらよいかと言っても、当てはまる役ないのだけれど。勿体ないなあ。
人類は一歩ずつ進んできたんだなぁ
奴隷制廃止法案って、そもそも黒人に参政権がまったくない時代に通ったんだ、という当たり前のことに気付き、ちょっと驚いた。
「こうすべきだとは思うが、まだその準備ができていない」と躊躇する人の気持ちは痛いほどわかるけど、それでも、まずは変えなきゃいけないんだ、という強い信念のもと、進む人がいないと世の中は変わらない。
先の先の結果は見えなくても、今この状況が良くないなら突き進まなきゃいけないこともある。
ものすごい孤独感にさいなまれつつも、勇気が出た。
トミー・リー・ジョーンズの役もよかった。
そして、ダニエル・デイ=ルイスがリンカーンに激似すぎる。
抑えるところと激高するところの使い分けが見事。
生き写し
まさにダニエルデイルイスの独壇場映画。
本当にリンカーンってこんなおっさんだったんだろうなっていうイメージの基礎になるレベルの演技力は圧巻です。
テーマとして為政者として、大事のために犠牲を厭わないといったところなのでしょうか。
内容は自分的にはかなり面白かったです。
国民の命を優先するか、将来の平等な社会を実現させるための今のチャンスを優先するのかという間に立たされた状況下における、大統領としてと、家族の父としてのリンカーン像が非常にわかりやすく描かれていたのが良かったです。
難易度が高い作品
特に映画の前半、歴史的背景の事前知識がないと、どんな人物関係で話が進んでいるのか分からず、戸惑う人がほとんどだろう。
映画のゴールは、奴隷制度廃止を意味する合衆国憲法修正第13条を、下院議会で批准させることだ。
そのための票集めが、映画の大半を占める。
したがって、誰かを説得するようなシーンが非常に多い。
しかし、説得の際に何かの逸話を引用するケースが多く、
これが、私たちにとって映画を分かりにくくする一因だ。
リンカーンが奴隷制度を成し遂げる過程において、
特に家族関係について、多くの自己犠牲を払う様子が描かれる。
修正案が下院議会で通り、ようやく家族の時間を大切にしようとしたとき、
リンカーンは暗殺されてしまう。
この映画の構成がよく出来ていると感じた。
個人的には、ジョーンズが演じるスティーブンスに注目していて、
その人物描写の繊細さ、
特に、修正案を通すために、人間の平等ではなく、法の前での平等を強調したシーンが心に残った。
映画の難易度が高く、理解度は60%くらい、
分かる範囲でまぁ楽しめたかな、といった感じだ。
公理1 同じものと等しいものは互いに等しい。
映画「リンカーン」(スティーブン・スピルバーグ監督)から。
アメリカ合衆国大統領・リンカーンが、若い機械技師に
「ユークリッドの公理を知ってるかね」訊ねるシーンがある。
そして、おもむろに説明し始めた。
「公理1 同じものと等しいものは互いに等しい。
数学的推論の規則の1つで、すべてに当てはまる。
今までも、これからもだ」と。
「奴隷制廃止」を訴え続けたリンカーンらしい例えである。
この考え方は「自明の理」だとも言い切った。
「自明の理」とは「あれこれ説明する必要のない明白な道理。
それ自身で明らかな論理」のことだから、発言は重い。
彼が訴える、人種差別反対(奴隷制度廃止)の根底には、
「我々の始まりは等しい。それが原点だろ?
それが調和であり、公平さだよ。それが正義だ」という考えが流れ、
それは、説明するまでもない、とした。
軸がぶれない信念は、こうして生まれたのか、とメモをした。
そういえば、ラストにこんなフレーズがある。
「19世紀最大の法案が、アメリカで最も純粋な男が
仕掛けた『工作』で可決された」・・なるほどなぁ。
P.S.
参考に「ユークリッドの公理」を記録しておく。
1.同じものと等しいものは互いに等しい
2.同じものに同じものを加えた場合、その合計は等しい
3.同じものから同じものを引いた場合、残りは等しい
4.互いに重なり合うものは、互いに等しい
5.全体は、部分より大きい
靴屋になれない大統領。
本年度のアカデミー賞で、最多12部門にノミネートされながら
二部門しか受賞できなかった今作の、何が原因なんだろう?と
思いながら公開を待っていた。で、鑑賞したら理由が分かった。
リンカーンの功績を謳い上げると地味になるということだろうか。
何も史実に基づいて正確に描かずとも、よりドラマチックに描く
ことは幾らでもできたろうに、敢えてスピルバーグはしなかった。
これは好き好きになるので良いも悪いも鑑賞者の印象によるもの、
今作が面白かった派、つまらなかった派に分かれるのは仕方ない。
私もリンカーンそのものがよく描けていた点と、やはりダニエルの
ソックリさん^^;を上回る演技には魅了されたものの、ドラマと
しての躍動感やエンターテインメント性には欠けていると思った。
確かに彼が成し遂げた功績は(一方では)大きい。
今の合衆国大統領がオバマであることの意味がハッキリと分かる。
でも英雄じゃなし、南北戦争においては清廉潔白でもない。
正に普通の政治家であり、家じゃ奥さんに頭が上がらない温情派。
彼の強固な信念が大きな目的を成し遂げた。それが今日を作った。
偉大なリーダーとはどうあるべきか、を淡々と描いた作品だった。
それにしても面白かったのは、リンカーンを始め、ソックリさんが
多数登場しており、しかもそれを俳優が成り切って演じているのが
またハンパなく凄くて、先程の話の流れは地味でも、各々の個性は
とめどなく派手^^;、奥さん役のS・フィールドですら、生き写しか?と
思うほど似ている。(性格までもしっかりと)
この奥さん、こんな描かれ方で可哀想…と思われるかもしれないが
本当にこういう人だったらしい^^;リンカーン大統領、押されっぱなし。
家でも凄いドレスを毎回身に纏っていたが、お買いものが大好き♪
夫が暗殺されたらすぐ遺族年金を要求、噂と違いしっかり者だった?
資産家の娘だったというからさすがだわ、とも思うけれど、彼らが
口喧嘩を繰り返す今作でも、どう見てもリンカーンの方が歩が悪い。
役に成り切るのが定評のダニエルは、今回も怠りなく役作りに没頭、
奥様役のS・フィールドに対し、文通を申し出たそうだ(よくやるよね)
家でもリンカーン、役でもリンカーン、アクセントも巧かったもんねぇ。
靴職人になりたくて仕方なかったダニエルを映画界が放っておかず、
(なぜ神は彼を靴屋にさせないのだろう)
俳優に戻してみたらすぐにアカデミー賞をとっちゃうダニエルの才能。
なんならお次は壇上で語っていた女性著名人役をやっていただいて、
行き着く所まで役作り対決、米国メリルと競い続けていただきましょう。
日本では大人気のボス(爆)、トミー・リー・Jも鬘を被って大熱演。
彼のしかめっ面がいつ綻ぶんだろうと、そればかりを祈りながら…
彼らの票集めでの奮闘ぶり、採決でのやりとりは本当に面白かった。
「知るか!賛成」とか「クソ食らえ!賛成」とか枕詞がのるところなんか
面々の畜生ぶりに大笑い。死傷者のことを考えたら笑えないのだけど。
ラストがエ?と思うほど淡々と終わってしまうところも狙いなのか。
手袋のシーンは、最後まで粋で良かったなぁ。
(鑑賞後には「声をかくす人」を。隠された事件の真実が暴かれます。)
本当にスピルバ-グ映画なのか!
部屋で話し合いしているだけの映画。リンカ-ンが暗殺されるシ-ンも無く、インパクトに欠ける。今までと違う作り方に驚きました。私的にはつまらない映画でした。
歴史好きには良い
リンカーンの名言、人民の人民による人民のための政治
正しくその名言を達成した人だと実感しました。
私は歴史に詳しくないのですが、
リンカーンと言えば、名言、奴隷解放、暗殺といったことしか知らなく、
鑑賞しました。
最初は奴隷解放の第13条の修正案に向けての
賛成者を集うために、工作していく。
ところどころ、コミカルな部分もあったのですが、
テーマが重すぎてあまり笑えなかった。
前半は重たく長く感じられましたが、
後半では議決のときに、賛成者が増えていく賛同の声には、
観ながらも楽しみました。
最後にはトミーリージョーンズ演じる、奴隷制度への執着
の意味には涙がほろり。
リンカーンの暗殺のシーンは少ししか触れられませんでした。
レディスデーにも関わらず、男性が多く観ていました。
後半ずっとすすり泣きの観客もいました。
きっと西洋史を勉強していたら、もっと感情移入できたのかも知れません。。。
足を運んで良かったとは思う。
今日のアメリカ合衆国における、平等の基盤を築いた立役者を描く。非常に臨場感に溢れ、見る者を引き込む迫力があった。憲法改正をめぐる政党間の駆け引きには緊迫感があり、これぞアカデミー賞感はあった。
歴史を変える事の重過ぎる代償
スピルバーグが長年温めていた企画が遂に実現。
南北戦争末期、奴隷制廃止を法として制定させようと苦心する
リンカーン大統領と、それを取り巻く人々の1ヶ月間を描く。
映画冒頭でスピルバーグ本人が物語の背景を紹介してくれるが、政治に疎い人間には話がチョイと難しいかな。
それでも、かなり面白い。
奴隷制廃止を謳う“修正第13条”を議会で通過させる為に、
説得・買収・脅迫とあの手この手の政治工作が繰り広げられる。
正義だけでは勝てない。正義を為すために、腹の底まで泥にまみれる……
政治はシンドイね。
ダニエル・デイ・ルイスが物凄い演技で魅せる。
本人とそっくりかどうかは誰にも分からないけど、
上映中、僕はこれが役者の演技である事をしばしば失念していた。
『見事に演じられたキャラクター』ではなく、血肉の通った人間がスクリーンの奥に居るように思えた。
トミー・リー・ジョーンズも強面の活きる良い役。
なぜ彼はあそこまで奴隷制を憎悪したのか……その理由が判明するシーンに目が潤む。
黒人でも白人でも痛みを感じ、哀しみを覚え、
憎み愛する生き物であるという点で、何の変わりもない。
彼とリンカーンはそれを知っていた。
奴隷制廃止を決する投票シーンは、結果は分かっていてもスリリングだった。eigafreakさんも書かれていたが、
歴史の動く瞬間を目にしているような、厳粛な緊迫感と感動に溢れていた。
だが、その代償は?
嘘を吐き、信頼する人々をも裏切り、独裁者の如く権力を振るい、愛する家族さえ傷付ける。
数十万もの命を奪った戦争の終結を先伸ばしにした事実も変えられない。
それが人類の尊厳を守る為だ、後に生まれてくる何百万人の為だと固く信じていたとしても、
あののんびりと優しい物腰の男は、それを為すのにどれほどの恨みを買い、
そしてどれほどの呵責を感じた事だろう?
それはどんなに苦しかったろう?
恨みを買って暗殺されたリンカーン。
暗殺後のシーンで僕は、紙に黒インクで印刷された歴史上の偉人ではなく、
親しい人を亡くしてしまったような、自分の中の何かが欠けてしまったような、そんな感慨に襲われた。
家族を愛する事、人間を愛する事に苦しみ抜いたひとりの男の死を悼んだ。
弱い人間、欠点のある人間でも歴史は動かせる。
歴史を動かすのに必要なのは、揺るがぬ意志。
そう教わった気がする。
〈2013/4/20鑑賞〉
迫力に押され、あっと言う間の2時間半だが、日本人には少しばかり難しいかも知れないね
アメリカの歴史の詳細や、政治情勢にも明るく無い私には、どうしてハリウッド映画界が、この1~2年に立て続けてリンカーン大統領を素材にした作品を多数撮る事にしたのか?
その背景には何が起因しているのか理解出来ていない。
まぁしかしそんな動機を知った処で、この作品の良し悪しの評価が変わる事も無いのかもしれないが、何故かそこがどうしても、私には引っかかるのだ。
黒人奴隷解放を行った彼は、最もアメリカ人に愛されている大統領の中の1人である。
しかし、元々大陸に永年棲んでいたネイティブアメリカンを多数大虐殺する政策をした事でも大変有名な大統領なのだ。
そんな彼の「人間は神に因って平等に創られた」と言う大いなる矛盾する、2面性を今のアメリカ社会は知りながらも、今日も英雄として祭り上げる、その今のアメリカ社会のマインドと言うか、世界観がどうしても気になるのだ。
黒人であるオバマ大統領が2期も続けて大統領に就任した事が、リンカーンブームの背景になっている理由とは、考え難いのだ。
この作品ではリンカーンが、今生きている黒人たち生涯だけでは無く、これから未来に生れて来る黒人をも、救う事になるのだと言うシーンがあったが、確かにリンカーン大統領が、この決議を成功させていなければオバマ大統領も存在していなかったのかもしれない。
そう考えると彼の政治的功績は大きいのだろう。
そして、本作をスピルバーグ監督は、大統領の生涯の伝記映画としては描かずに、彼の悲願である南北戦争の一日でも早い終結と、それに合わせて黒人奴隷を解放させる事を議会で、可決させる迄の日々を克明に追った心理ドラマとして描いた事は実に名案だったと思う。
そして、確かにリンカーンを演じたダニエル・デイ・ルイスは名優中の名優で巧い。
サリーフィールドも「ノーマレイ」に続いてオスカーを併せて2度も獲得しているので、文句の付けようの無いキャスティングだ。
だからこそ、スピルバーグが政治的な素材を主題にした作品を創ると、完全にオスカーをよこせと意識して撮った事が見え見え確実で、映画全体が嫌味に見えて、嫌いな作品になる。
それに引き換え、元々マイペースで、生真面目なロバート・レッドフォードが制作した「声を隠す人」には、スピルバーグの様な嫌味な処が微塵も感じられない。
そう言えばもう1点思い出したが、この「リンカーン」は、彼の政策が議会で勝利し、完全にハッピーエンドの物語で絶対に終わらせるべきだったと思うのだ。
その後の暗殺事件の事は誰もが周知の事であり、ましてや幼い三男息子の泣き顔のアップを長々と撮るなどは、完全に描く必要の無いシーンだ。どうしてもと言うなら、ナレーションか、テロップ表記で充分だ。
その前迄に映画が描き出して来た緊迫感溢れる、芳香な味わいの大人の映画を安っぽいお涙頂戴のバカな三文映画に貶めてしまう。やはりこれでは3度目の監督賞は絶対無理だ!
ちょっと長いけれど、、感動必至!
感動で泣きました!
もうちょっと短くても よいかな というのと、
リンカーン のみで 話が展開している感はあったけれど、
最後の ほうは、音楽もよくて 涙が出ました。☆=
政治って、、なんというか、
雲の上の方のお仕事 という印象だけれど、
リンカーンの、奥様への、
「つらいことが多すぎた。これからしあわせになろう。」
というセリフが、(そしてそのすぐあとに・・><)たまりませんでした。
愛された政治家 リンカーン。
そのロマンと、優しさとが、たっぷりつまった作品です♪^-^
アメリカ人の心根を優しく撫でる映画
この2月、米国で、バラク オバマが大統領が再選されて、彼はリンカーンが所有していた聖書に手を置いて、大統領宣誓をした。米国にとって第16代米国大統領エイブラハム リンカーンは、「奴隷解放の父」と呼ばれ、アメリカンフロンテイア精神代表として、開拓精神のパイオニアとして尊敬されている。
丸木小屋で育ち、無学の両親に育てられ、斧で木を切ることに長けていた。独学で弁護士になり、大統領にまで登りつめた。祖父は、父が子供の時に、その目の前でインデイアンに惨殺されたが、その話を子供の時から聞かされて育ったために、土地所有権の争いを避けるために、法律を学んだと、言われている。大統領になって、インデイアンを保留地に追い込み、インデアン大虐殺を指揮し、それが南北戦争で北軍の勝利を導くことになった。黒人を解放して、労働者や兵士として確保するのは賛成だが、インデイアンは 民族浄化、皆殺しにしなければならないと考えていた。奴隷制度拡張に反対し、南北戦争を指揮、南軍のロバート リー将軍に降伏をゴリ押しして戦争を終結させたが、直後に暗殺。初めての、在職中に暗殺されたアメリカ大統領となった。
このリンカーンの役を、ダニエル デイ ルイスが演じ、その妻役がサリー フィールだと分かったとき、その映画を見るまでもなく、もう今年のアカデミー賞を誰が取るか、決まったようなものだ、と思った。二人とも すでにアカデミー主演男優賞、女優賞をとっている。ダニエル デイ ルイスに至っては、彼が主演する映画の、ほとんどの作品で、アカデミー主演男優賞にノミネートされている。
ロンドン生まれのユダヤ人。1989年「マイ レフト フット」で主演男優賞、1992年「ラスト モヒカン」と、2002年「ギャング オブ ニューヨーク」でノミネートされ、2007年「ゼア ウィル ビブラッド」で、再び主演男優賞を取っている。彼が出てくると、他の役者がかすんで見える。それほどカリスマテイックな役者だ。
ストーリーは
南北戦争が始まって、すでに3年。戦況は硬直し、人々は増え続ける重税にあえいでいた。共和党のリンカーンは 2期目の大統領として選出されると 奴隷制度拡張を叫ぶ民主党の圧力に対抗して、議会に圧力をかけて 何とか戦争を終結させようとする。すべての上院議員は、州議会によって選出されていたから 当時圧倒的多数だった 奴隷制度拡張主義の民主党は’、大統領の主張に同意しない。収入源である大土地所有者にとって、民主党党員の存亡をかけた戦いでもあった。リンカーンとその側近は 民主党の結束力に負けず、一人ひとり 取引、恫喝など、手段を選ばず取り崩していく。そして、とうとう議会で、奴隷解放を明記する条文を通過させ、戦争を終結させた。しかし、大統領は、オペラに出かけた夜、。
というお話。
ダニエル ルイ ルイスの上手すぎる演技の、独り舞台だ。リンカーンが、このようにして悩み、このようにして妻にガミガミ言われ、このようにして祈ったのだろう。
奴隷制度の欠陥を、民主党議員に向かって説得するとき、古代エジプトの哲学者ユークリッドを出して説得する。幾何学の原論の中から「同じものと等しいものは 互いに等しい」という あらゆる学問に通じる真理を語っていく。白人は'人間で、黒人は人間、ならば白人も黒人も同じ人間だ、という単純でゆるぎのない真理だ。彼の説得力を もの語るシーンだ。
サリー フィールドの妻役も、素晴らしい。「アメイジング スパイダーマン」で アンドリュー ガーフィールド演じるスパイダーマンの養母役で とても光っていた。今回は リンカーンをしっかり支える恐妻を好演、他の女優がやっていたら、嘘くさくなっていただろう。
共和党タデウス ステイーブンス議員をやった トミー リーは、奇妙なカツラ姿で出てきたが どうしてそんなものを被っていたのか、最後にわかる。この人が映画に出てくると、ほっと、映画に血が通う気がするのは 私だけだろうか。
息子のジョセフ ゴードン レビットも、ダニエル デイ ルイスとサリー フィールドの間の生まれて 大事にされて育つと、こんな息子になるだろう、というような素直な姿で好演している。
明るいシーン、華やかなシーン 楽しいシーンの全くない 重厚で 感動的なアメリカ南北戦争の歴史を語った映画。アメリカ人は この映画、好きだろう。アメリカ人の心根の底の底を優しくく撫でてくれる。
オバマの大統領宣誓を注目する 貧困層や移民たちやゲイや アフガニスタンに送られた兵士たちは、オバマの横顔に、このリンカーンの姿を重ね合わせて観ることだろう。そんな映画だ。
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