リンカーンのレビュー・感想・評価
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新たな発見なし
アメリカ合衆国第16代大統領エイブラハム・リンカーンの伝記ドラマだが、描かれるのは南北戦争終盤からで、奴隷制度廃止か否かを争う議会にスポットがあてられる。
ダニエル・デイ=ルイスの熱演は見応えあり、トミー・リー・ジョーンズの演技も渋い。
ただ、ストーリーとしては新鮮味がない。議会の投票や南軍との和睦の駆け引きをサスペンス・タッチに脚色し、じっくり構えながらもスピード感のあるカメラワークで見せるあたり、さすがスピルバーグだとは思う。だが、史実には大きく手を入れるわけにも行かず、映画としてドラマチックな面白みに欠ける。もちろん駄作ではないが、同じスタッフによる「戦火の馬」のほうが、先が読めないだけ楽しめた。
伝記ドラマは遊びを入れる余地がある人物や年代を扱ったほうが作品に特色を出せる。敢えて、史実がはっきり記録された人物を選択したスタッフ&キャストの力量は讃えたい。
それにしても奴隷解放から150年、未だにアメリカでは人種差別が尾を引いている。ハリウッド映画で白人と黒人のカップルが頻繁に出るようになったのは、ここ数年のことだ。
これから生まれてくる未来の為に
スピルバーグが描く、リンカーン大統領。
この映画の企画が始まったのは何年前の事だったろうか。製作が遅れたり、主演がリーアム・ニーソンからダニエル・デイ=ルイスに変更になったりと紆余曲折あったが、ようやく満を期しての公開、鑑賞だ。
映画はリンカーン大統領の“伝記映画”ではなく、奴隷制度廃止の法案を可決させるまでを描く。
なので、有名なあのスピーチや暗殺は直接的には描かず、南北戦争を背景にしていながら得意の派手な戦場シーンも無い。
偉業を成し遂げる姿をじっくり追い、史実を忠実に再現した円熟の演出は「シンドラーのリスト」や「アミスタッド」を思わせ、エンタメ派とは違う、スピルバーグのヒューマニズム溢れる良心が表されている。
ダニエル・デイ=ルイスが素晴らしい。
ダニエル・デイ=ルイスと言うと、インパクトある熱演が印象的。時には怪演と言ってもイイ。
だが本作では、グッと抑え、穏やかさと全身全霊を傾けた強い意志を体現。相手を煙に巻くウィットに富んだ例え話でユーモラスな一面を覗かせ、家族との関係で苦悩も滲ませ、一つ一つの名演に引き込まれる。
リンカーン夫人のサリー・フィールドを始め、実力派俳優たちによるアンサンブル劇は贅沢の一言に尽きる。
中でも、トミー・リー・ジョーンズはデイ=ルイスと等しく秀逸。
リンカーン以上に奴隷制度廃止を訴えるスティーブンス議員役で、場をさらう。何故彼は熱く奴隷制度廃止を訴えるのか、その理由にはしんみりさせられる。トミー・リーにもオスカーを受賞して欲しかった。
奴隷制度廃止と南北戦争の終結。この難題にリンカーンは挑む。
南部による奴隷制度存続が南北戦争の発端なので、奴隷制度廃止なくして南北戦争終結も有り得ない。
その道は非常に険しい。
実現の為に、時には駆け引き、取り引き、妥協、裏工作してまで奔走する。
理想だけでは実現出来ない政治の困難さ。
何故リンカーンはそうまでして戦うのか。
それは、ただ純粋に、人の自由と平等の為。
この一時だけではなく、これから生まれてくる者たちと未来の為。
その為に、多くの血と涙が流され、犠牲を出した。
それらを償う為にも、リンカーンが歴史に残した遺産は永遠であると切に願いたい。
映画は重厚で難しい部分もある。1世紀以上も昔の話でもある。
しかし、映画が訴えるメッセージは間違いなく未来に向けてのものだ。
このメッセージを受け止める意味と映画を見る意義は大いにある。
「声をかくす人」も見たら5点満点
まず最初に重要なことを述べます。一緒に「声をかくす人」も見ないとめっちゃ損すると感じます。
「声をかくす人」は「リンカーン」の続編的な位置にある話。リンカーン大統領が奴隷制度の改正や終戦に向けて命を張った行動はとても勇敢なものだった。
最終的に法改正は実現となるが・・・その後色々と話の続きがある。
続編に位置づけ出来る映画「声をかくす人」を見なければその後が見えてこないままである!
両方見たら「ヤバイ」です!!
あんまり盛り上がらない
リンカーンがとてもフェアでユーモアもあり、かつ熱いハートの持ち主で、非常に好感度の高い人物であった。いろいろな問題で非常に苦労の多い人でもあり、とにかく四苦八苦していた。
しかし、法案を通すために部下がいろいろな交渉をしたりしていたが、ほぼ会話劇でドラマとしては非常に盛り上がりに欠けるものであった。また、髭のおじさん、おじいさんばっかりで見分けがつかないし、覚えられない。リンカーンの奥さんも年齢を考えない可愛らしいドレスの割に怒ってばかりで、リンカーンの苦労は議会だけでなかった。
ほとほと頭が下がる思いであったが映画が長くてつらかった。お芝居や美術は大変すばらしかった。
いま、大切なこと
本題にはいる前に、スピルバーグ監督が語る。
「リンカーン大統領は奴隷解放の憲法の法案を提出し、是が非でも通さねばならなかった。後世の人たちに笑われないように・・・」議会において法案を通すことしか、描いていない。悲惨だった南北戦争の戦闘シーンも、黒人たちの過酷な奴隷生活も描いていない。
だから、この映画はリンカーン大統領を英雄視していない。
それどころか、妻と間の確執。あなたは大統領なんだから、家族を戦場に出さないようにできるはずという妻の強情ぶりに手を焼く。逆に、僕をなぜ北軍戦士として戦場に出さないのかという長男との論争。
夫として、父として、大統領として悩むリンカーンを描いているのだ。
この映画は偉人伝としてのリンカーンではなく、人間としてのリンカーンに重点を置いているともいえる。
ハリウッド的な派手な戦争シーンがないから、正直言ってカタストロヒューはない。そのかわり、役者の演技力が試される。
主演のダニエル・デイ・ルイスはリンカーンになり切ってアカデミー主演男優賞を獲った。このルイスは映画だけでなく、日常生活においてもリンカーンになり切っていたという。家族の者たちにも、自分はリンカーンだから、そのつもりで対応すると言っていたらしい。
それにこの映画は日本に必要なものだと思う。
いま憲法改正の論議が持ち上がっている。憲法改正の発議を2/3から1/2にしようという96条の問題だ。
議論もされない憲法から、真剣に考える憲法へ
いや、
そんなに簡単に変えられるものであってはいけないとするのか。
この映画のように真剣に考えていいのではないかと思う。
リンカーンの素顔に触れ考える
南北戦争、奴隷解放という史実が丁寧に描かれていて、
大統領の苦悩と人柄がひしひしと伝わってきた。
議会においての対立、人々の抱える見えない葛藤を、
映画だからこそできる形で、具体できなシーンをもっと多く交えると
良かったかもしれない。
サリー・フィールドは、相変わらず良かった。
「自由」「民主」を得ることに、多大な時間と労力を要する現実に
気付かされ、またこれが決して大昔の話ではないことにあらためて驚く。
戦争はやめましょう
主演男優賞をとった程の映画だから興味あって鑑賞。
正直主演の人もあまり知らず、更にリンカーン大統領のことも良く知らず恥ずかしい限り。これを機に勉強し直すかな。
結果が分かっていても票を入れるシーンは興奮した。賛成って言え!って思った。
歴史を知らずに観た私には所々良く理解出来なかったのである程度歴史を知っていた方が更に面白いと思う。
悲しくて泣き、嬉しくて泣き、考えさせられて泣いた。
人は皆平等で自由。
現実を見ると世界はまだそうではないと感じる。日本はまだマシだが色々問題あるよね。
考えさせられる、歴史を振り返りたくなる、戦争の酷さを戦争起こしたいような人達に見せたくなる素晴らしい映画でした。
民主主義教育の教科書として高校生たちに見せたい
今の自民党などの96条改正は国管理の基本である憲法を自分たちの好きな戦前の復古調に近づけたい狙いが根幹にあると感じていますが、とりあえず、当面の狙いは曖昧にしておいて、悪いことは決してしませんから、変えやすくさせてください、とPRしているように見えます。「リンカーン」は米国憲法改正を軸とした映画です。米国大統領リンカーンは自由と平等の精神から黒人奴隷解放の項目を憲法に追加するために南北戦争の最中、力を注いだのです。この映画は米国民主主義の懐の深さ、人種差別の無意味さ、戦争の悲惨さを教えてくれます。旧体制を打破して一歩一歩、理想に向かって歩んでいくのがいかに大変であったか、米国の民主主義もそれらの歴史の積み重ねなのだと感心するばかりでした。 リンカーンの複雑な家庭が映画に奥行きを与えています。 改めて、監督のスピルバーグのヒューマニズムに脱帽しました。
憲法改正にかける執念
リンカーンと言えば有名な演説と奴隷解放…という基礎知識はあるのですが、実際にどの程度知っているかと言われると、詳細はほとんど知りませんでした。
去年から今年にかけて立て続けにリンカーンの映画が公開されましたが、本作は史実に基づく内容。
憲法を改正して奴隷廃止が盛り込まれるまでの議会でのやりとりが描かれます。
対立する野党に”独裁者”とまで言われてもなお、奴隷廃止を憲法に盛り込もうとするリンカーン。
私自身は生まれながらにして自由なのでピンと来ない部分もありますが、おそらく当時のアメリカでは、黒人奴隷を白人と同様に扱うことを「非常識」と考える人間が少なくなかったのだろうと、そういう描写がされています。
そして、奴隷制度廃止を争点としたアメリカ南北戦争。
自由を得るために武力による戦争をし、沢山の人間を犠牲にしたことが正しかったのか…?と考えてしまうのは、おそらく、そういった経験がないからだろうと思う次第。
振り返れば、日本国憲法は制定後一度の改正すらなく、自分達で権利を勝ち取ったという経験を持っていない。そこに書かれた権利群はおそらく、こういった闘争や犠牲の末に出来上がったものなのだと思いますが、我々にはその認識がない。
いや、日本国憲法制定後に出来た「環境権」や「プライバシー権」などの多くの権利ですら、解釈で条文に潜り込ませるという事を繰り返し、自分達の言葉で正面から議論することを避けているとも言える。
映画では一方で、リンカーンの家庭的事情も描かれます。
大統領として重い責務を果たす一方、家庭的にも問題が無かったわけではなく、仕事と家庭の間で板挟みになるリンカーン。
決して聖人ではない彼の姿が、そこにあります。
議会での答弁に多数派工作…
アクションでもサスペンスでもない史実映画の本作ですが、クライマックスはまさに「手に汗握る」という感じで、かなりドキドキしました。
リンカーンについて知ってからもう一度観たい
有名すぎるアメリカの大統領と有名すぎるアメリカの映画監督のコラボ(といっていいのか)ということで、飛びつくように久々に映画館へ行ったが、リンカーンって初代大統領だっけか?とすでにごっちゃになっている、歴史の知識が浅い自分が情けない。
奴隷制度を廃止するため、憲法条項の改正に向けてただひたすら邁進するリンカーン大統領の姿とそれに協力をする、また協力者となっていく周囲の姿が描かれる。それに伴い、闘いで一生癒えることのない傷を負った人々や生命を喪った人々の姿も随所に描かれ、戦争の悲惨さ無意味さもしっかりと伝わってくる。また、リンカーンの意外と複雑な家庭状況なども描かれており、トップに立つ者の孤独も微妙に垣間見せている。
ラスト近くの演説内容が、リンカーンの目指した理念やアメリカのあり方と照らし合わせ、あの有名なスピーチ「人民の人民による人民のための政治」よりも逆に心に沁みて感じた。
リンカーンやアメリカの政治の仕組みなどについて予備知識を仕入れて行くと、より分かりやすいし、きちんと勉強したうえでもう一度見直したいと思う。
人間味あふれる作品
リンカーンの人となりが、生き生きと伝わってきた。ドラマティックだけど、リアリティもあって、ダニエル・デイ・ルイスの演技力が素晴らしい。こういう作品を観ると、つくづく映画の力を感じる。
本物のリンカーンに会ってみたいと思わせる
予告編を見ていたときから、ダニエル・デイ・ルイスに惹きつけらていました。
真剣な顔、一転して笑う顔、どれも素晴らしく魅力的。絶対に見逃すまい、と早速劇場に伺いました。
そして見終わって思います。本作の最大の魅力はやはり出演している役者陣だ、と。
トミー・リー・ジョーンズ、こわもてで信念に殉ずるように思わせながら、憲法修正が成ったあとには、実に人間らしい裏側を見せてくれ、本作に温かみを添えてくれました。
サリー・フィールド、久しぶりにお目にかかりました。どうしても感情的になってしまうものの、心の底では夫を信じ、サポートする夫人像は印象的です。
なによりリンカーンのダニエル・デイ・ルイス。本物もこれほど魅力的な人だったのだろうか、叶うならば見てみたいと思わせるほどに素晴らしかった。
映画としてみれば、議会対策が話の中心のため、動きは少ないです。
「憲法修正案を可決させる」という目的に向けた駆け引きが筋としては見所でしょうが、個人的には、個々の立場が掴みづらくて眠気を誘われてしまった箇所も。
トータルでは、歴史のお勉強をしましたという印象で、評価はほどほどにせざるを得ません。
しかしながら・・・ただただ、役者が素晴らしかった。
楽しませていただきました。
政治家は信用できない
起伏のない会話劇の睡魔に勝つ忍耐力があれば、その後に待つ感動を得ることができる。名前を呼ばれた議員が奴隷解放に対する賛否を表明する。表決であんなにハラハラドキドキするなんて思わなかった。だれが賛成か反対か判るのだから、賛成するにしても反対するにしても覚悟が必要だ。それによって次回選挙の当落に影響する。国会議員の先生も落選すればただの人。政治家は清廉潔白では務まらない。立技(正論)も寝技(裏工作)も必要だ。リンカーンでさえ奴隷解放のためにはいろんな手を使っているようだ。オバマは演説で核兵器削減を説いただけでノーベル平和賞を授与された。何も実績をあげていないばかりか、アメリカ大統領であれば戦争で多くの死者を容認しなければならない。だから、政治家にノーベル平和賞はそぐわない。
スピルバーグは枯れたのか?
文豪や名作家と呼ばれる小説家の作品から面白味が消えるように、スピルバーグにも同じような滅びの現象が起きているのか?
ただ史実を垂れ流すだけなら、テープレコーダーにでも喋らせれば良い。
ドラマと呼べるような映像描写が何一つなく、全部説明ゼリフでお茶を濁す始末。
何故リンカーンが執拗なまでに奴隷解放にこだわり、自由と平等を謳ったかが、全くもって不明瞭。
伝記を読んだり、リンカーンの予備知識をもってこの映画を見ろと言う事か?
脚色するなら、ちゃんとリンカーンの内面も映像で補完しろ!
スピルバーグよ。
この作品から「今の日本人に必要なもの」とやらは、何一つ見出せへんかったぞ。
予告と本編の翻訳も違いすぎて、政治的な悪意すら感じる。
まるで計算されたかのような駄作やった。
文句なしに、個人的な今年のワースト映画の一位。
予想してたよりこじんまりした話
こんな感想をもってどうかと思われるかもしれないが、当初自分が予想していたより話がこじんまりとしていた気がする。
話としては、信念をちょいちょい曲げて、ズルいことを多少行ってでも大局で勝つことを目指したお話ってことなんだろうが、
でもなぜ彼がその法案についてこだわっていたのかには今一つ伝わってこなかったのもあって、妙に話に厚みがない気がした。
最も印象に残ったのは、嫁が最後まで自己中だったことだな。悪妻が賢者を育てるってことなんだろう。
中身はさておき、主演の人は驚くほどそっくりだった。あと、ジョーンズのかつらはかなり似合ってない。
こんな政治家、日本にも欲しい(と、みんな言うんだろうな)
アメリカで最も愛される大統領で、日本でも奴隷解放という歴史的偉業を成し遂げ、そして、アメリカ史上初めて暗殺された大統領として知られているエイブラハム・リンカーン。この映画では、奴隷解放を定めたアメリカ合衆国憲法修正第十三条の下院での可決に掛けた、リンカーンの情熱を描いている。
冒頭、このあたりの歴史的事情に疎い日本人のために、監督のスピルバーグ自身による、歴史的背景の説明があります。確かに、それが有るのと無いのでは、何をしようとしているのかの理解は、全然違うでしょうね。
改めて、南北戦争と奴隷解放、そして、リンカーン暗殺を時系列で示すと下記の通り。
1861年3月4日 エイブラハム・リンカーン第16代アメリカ合衆国大統領就任
1861年4月12日 南北戦争開戦
1862年9月22日 奴隷解放宣言(1回目)
1863年1月1日 奴隷解放宣言(2回目)
1863年7月1日~7月3日 ゲティスバーグの戦い
1865年1月31日 アメリカ合衆国憲法修正第13条議会可決<-今回の映画の話
1865年3月4日 二期目就任
1865年4月9日 南北戦争終結
1865年4月15日 エイブラハム・リンカーン暗殺
と言う事で、日本でも有名なゲティスバーグの戦い(と、演説)よりも、後の出来事を映画では描いているんですよね。劇中、ゲティスバーグでの演説を聞いたと兵士たちが言っていて、しかも、暗唱しているので、そのことは自明ですが。
実は、映画で描かれているのは、たった28日間の話なんですよね。もっと長いような気がしますが。それだけ、濃密な議論が当時のアメリカ国内で行われていたということなんだと思います。
現代の人間から見ると、奴隷解放という偉業を成し遂げたリンカーンは、名大統領と呼ばれるわけですが、当時の人々から見ると、強引と思った人々が少なからず存在したのでしょう。それが故に、暗殺された時「Thus always to tyrants.(常にかくあれ、圧政者には)」と言われたんだと思います。今のTPPへの参加とかも同じ感じなのかもね。時代を経て、上手く行っていれば安倍総理は歴史に名を残す名総理だし、失敗したらヘボ総理になるわけです。
ところで、現代においても、大統領側が特定の法案を議会で通したい時は議会の説得工作を行います。流石に、職を提供するような、露骨な利益誘導はしないと思いますが、WIN-WINの関係でないと相互の利益にはならないでしょうから、どう言う交渉が行われているか、興味深い所ではあります。
さて、冒頭、戦闘シーンから始まるんですが、『プライベート・ライアン』で見せたような、色合いを落とした映像で、戦争の悲惨さなどを浮き彫りにする演出をしています。時代が時代なので、リアルな肉弾戦ですね。
それと、ダニエル・デイ=ルイスですよ! いやぁ、リンカーンは教科書などでも我々は顔を知っているわけですが、そっくりですね。ビックリです。ただ、そっくりなメイクだけではアカデミーの主演男優賞は取れないわけで、憲法修正(そして、戦争の終結)に掛けるリンカーンの情熱を、あたかもリンカーンが乗り移ったかのように演じています。この映画は、彼の熱演に尽きるね。
2013年の第85回アカデミー賞では、主演男優賞(ダニエル・デイ=ルイス)とアカデミー美術賞を受賞。同じく2013年第70回ゴールデングローブ賞で主演男優賞(ダニエル・デイ=ルイス)受賞。その他にも、沢山の賞を受賞しています。
下記で、“アメリカ連合国”と表記しているのは、国際的には正式にその存在を国として認めた諸外国は無いため。もっとも、戦時国際法における交戦団体としては、その存在と地位は認められているようですが。
アカデミー主演男優賞に納得。
隣で鑑賞されていた老夫婦は‘いい映画だったな’とつぶやかれていました。
俺的には‘…’。
‘奴隷開放制度の歴史的解決’という話には確かに唸らされる話題ではあります。
また、リンカーンの信念と行動もこの映画見て‘凄いな〜’とか、やっぱり困難な時代には強いリーダーが必要なんだってことも感じました。
けど、他の方のレビューにも書かれていますが、本当に全体的に地味。
歴史上の人物だから嘘は描けないけどスピルバーグならもう少しエンタメ性付けられたのではないかと…。こういう作品にそんなこと期待すべきないとも思うのですが…。
あと、俺に歴史的知識もないからお話について行けなかったというのもありますが…お恥ずかしい。
ダニエルデイルイースの名演はさすが!鈍い俺でもそれはひしひしと感じました。観客までも引き込むセリフまわしや演説口調はグイグイ引き込まれますね。サリーフィールドなんかもすっかりおばさんだけどいい味出してました。
艶っぽい恋愛も派手な救出劇もないのに感動
日本における第16代米国大統領エイブラハム・リンカーンは、奴隷解放宣言を発した人で、ゲティスバーグでの演説
"government of the people, by the people, for the people(人民の人民による人民のための政治)"
で知られている。というか、たぶんこれくらいしか知られていない。
ところが本作のリンカーンは、そこからしばらく後、南北戦争終結直前における憲法13条修正案が提出された下院が舞台。
日本人にしてみれば、憲法13条が何なのかも知らなければ、南北戦争の歴史すら知らない。
なんのことやらさっぱり分からない中で進むストーリーは、政治サスペンスの様相を帯びて熱っぽく進んでいく。
これが逆にアタリではないかと思う。
政治的なワードが出てきてつまらんとかいう人もいるみたいだけれど、そういう人は知ってる内容だけで作られたディズニーでも見ていればよろしい。ストーリーを追う必要のないアクション映画なんかもオススメだ。
そういう作品は山ほどある。
しかし知らないからこそ、また逐一説明を入れずともドラマで仕立てる作品こそ、映画というのは盛り込まれるストーリーがふくらみ、感動も大きくなる。
そういう意味では、米国で育って周辺知識が既知の観客よりも、僕らはよりいっそう幸せなのかも。
今、日本でも憲法改正が論議されているけれども、米国における憲法修正も手続きのハードルは高い。議会で3分の2以上の賛成を必要とする。
リンカーンの共和党全員が団結しても20票足りない。まして共和党だって一枚岩じゃない。保守派もいるし、急進派だっている。簡単じゃない。
それをリンカーンは
「なんだ20票か(only twenty)」
と軽く言ってのける。
その自信はどこからくるのか。
憲法13条修正により奴隷制度が廃止され、南北戦争が終結するから。
すでに多数の犠牲を払っている同戦争を終わらせようと、みんな期待して憲法修正に期待したのだ。
しかし議会の行方如何にかかわらず戦争が終わってしまったら?
ここが本作のミソ。
打算的な理由がなくちゃ政治は動かないのか。
人が信じる平等とは何か、平和とは、公正とは何なのか。
目の前の低い課題に流れて、将来にわたって得られるであろうチャンスをフイにしてしまうのか。
劇中、リンカーンはほとんど命令しない。
自らが決断し、そして人々の良心に訴えかける。
だから人々に愛されたのだし、みんながついていったのだろう。
それはまた、思惑の違う人たちの狭間で苦しむ人生を歩む宿命でもある。
立派な息子の父親であり、ごくごく普通の女性の夫君であり、しかしみなが愛する大統領リンカーン。
いささかドラマチックに仕立ててあるのだろうけど、その辺に目くじら立てることはすまい。
この種の題材で伝記よろしくやられたら、それこそ観客はそっぽを向いてしまう。
政治に関するアレやコレやもトリビア的に楽しめるつくりになっている。
米国政治につきもののロビイストがどんな動きをしているのか、大統領と議会の関係、党内調整などなど。
目をつむって耳をふさいだらそれまで。なんだろうと関心を持てば応えてくれる。なにせスピルバーグ監督作品だもの。矮小な精神に逃げ込まなければ大丈夫。
わざとらしい恋愛もなければヒロインの救出劇もない。
だけどこみ上げてくる感動。
この映画はすごい!
では評価。
キャスティング:9(頭にくるバカと優柔不断と狭量の政治家たちがイキイキと。もちろん主演のダニエル・デイ=ルイスはいうまでもない)
ストーリー:10(艶っぽい恋愛も胸躍る救出劇もない。でも胸を熱くさせる)
映像・演出:8(戦争よりも議会をメインにすえたため少し地味。でも時代がかってて好き)
平等と公正:8(これほどガツンと自由について考えさせられる映画は久しぶり)
感動:10(ジワッとくるシーンがいくつも。どれも目から水が漏れ、鼻はワサビをかいだようになる)
というわけで総合評価は50点満点中45点。
日本人は「政治」というだけで遠ざけるきらいがあるから、その意味で本作は向かい風。
しかし鳥は羽ばたくとき風に向かう。苦手意識を押し込めてどっぷりつかってしまえば目が開く。
そしたら何か感じるものがあると思う。あると信じて鑑賞するのがオススメ。
寝る
正直、ここまで地味な作品とは思わなかった。
スピルバーグ監督、アカデミー賞でも旋風を巻き起こしアメリカで話題の映画。
ただしエンタメ要素は一切なし。南北戦争や奴隷制度に関する刺激的な描写は全く描かれず、小さい部屋でなにやら地味~な会話をする場面がとにかく多い。
当時の歴史背景に詳しいアメリカ人ならともかく、あんまり学生時代に勉強しなかった俺みたいな人が興味本位で見ると、2時間半の長尺の中睡魔と戦うだけになってしまうので注意(笑)
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