「いま、大切なこと」リンカーン xtc4241さんの映画レビュー(感想・評価)
いま、大切なこと
本題にはいる前に、スピルバーグ監督が語る。
「リンカーン大統領は奴隷解放の憲法の法案を提出し、是が非でも通さねばならなかった。後世の人たちに笑われないように・・・」議会において法案を通すことしか、描いていない。悲惨だった南北戦争の戦闘シーンも、黒人たちの過酷な奴隷生活も描いていない。
だから、この映画はリンカーン大統領を英雄視していない。
それどころか、妻と間の確執。あなたは大統領なんだから、家族を戦場に出さないようにできるはずという妻の強情ぶりに手を焼く。逆に、僕をなぜ北軍戦士として戦場に出さないのかという長男との論争。
夫として、父として、大統領として悩むリンカーンを描いているのだ。
この映画は偉人伝としてのリンカーンではなく、人間としてのリンカーンに重点を置いているともいえる。
ハリウッド的な派手な戦争シーンがないから、正直言ってカタストロヒューはない。そのかわり、役者の演技力が試される。
主演のダニエル・デイ・ルイスはリンカーンになり切ってアカデミー主演男優賞を獲った。このルイスは映画だけでなく、日常生活においてもリンカーンになり切っていたという。家族の者たちにも、自分はリンカーンだから、そのつもりで対応すると言っていたらしい。
それにこの映画は日本に必要なものだと思う。
いま憲法改正の論議が持ち上がっている。憲法改正の発議を2/3から1/2にしようという96条の問題だ。
議論もされない憲法から、真剣に考える憲法へ
いや、
そんなに簡単に変えられるものであってはいけないとするのか。
この映画のように真剣に考えていいのではないかと思う。
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