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クソみたいなB級を求めて見たんだけど、何だかんだ結構しっかり作られてて真面目に見てしまった。
こういう映画の割にチープさは全然なく、見ていて「安っぽ…見続けんのつら…」となることはありませんでした。
全体で1時間15分くらいしかないのでダレることもなく、ラストも盛り上げてくれます。
ポルターガイストは生きてる人間がやることってのは初耳だけど(人間も起こすことがあるが、元は降霊術で霊に質問し、その返事として霊が物音を立てることをポルターガイストと呼んでいた)、概ね心霊現象の説明もちゃんとしてたし、監視カメラが勝手に動いたり、降霊術やる人がキアヌ・リーブスを彷彿とさせる外見だったりで(笑)、意外と引き込まれました。
ただ、静電気発生機?だか何か、機械にモザイクかかってたの何だったんだよ。
映画の仕様なのか、それともYouTubeの期間限定無料公開で見たせいなのか、いやそれにしても機械1台だけにかけるモザイクって何だよ。
本物を用意できなかったから適当なもん置いてモザイクかけてたんじゃないだろうな…
あらすじ:
妻のシンシアを亡くした少し後から怪現象に悩まされるようになったアラン。思春期の娘ケイトリンとまだ幼い息子ベニー、犬のゼルダを連れて引っ越すが、暫くするとまた怪現象に悩まされることに。弱ったアランは心霊現象を研究する科学者チーム(機械担当のポール、カメラマンや雑用もこなすエレン、ボスの精神科医ヘルザー)に依頼し、徹底的に調査をしてもらうことにするが…
これイギリスが舞台なんですが、ああ〜なるほどと思いました。アメリカのみたいに、具体的な説明は一切ない。
思春期の女の子が一番ストレスが強くポルターガイストを起こしやすいというのは実際に言われていることですが、ラストではこの家庭で起きたことは全て思春期で統合失調症の娘のせい、ということで調査隊は去っていきます。しかし、娘を病院へ運び、皆がいなくなった後、最後に監視カメラが勝手に上を向いて霊を映し出す。
実際はケイトリンが本当のことを言ってて、アランが(部分的にしろ)嘘をつき、全てを死んだ精神病の妻と思い通りにならない娘のせいにして逃げ切る…というストーリーなのでは。
シンシアのことはアランの口からしか語られないので事実はわかりませんが、作中で出てくるのは圧倒的にアランの主張ばかり。なので当然、アランの落ち度に関しては全く触れられません。
唯一、チームの雑用係エレンが、ケイトリンの話は本当なのでは…とヘルザーに切り出しますが、ヘルザーは「何かあったなら直接言えばいい」と聞く耳を持たない。
これ、少し前にレビューした『ガール・オン・ザ・トレイン』とテーマは同じで、「女の話を聞かない男」「不都合は女のせいにする男」の話なのかなぁと。
テキパキと家事をこなすポールがエレンに「いっそ主夫になれば?」と言われ、「いつか男達の人権が世界中で認められる日がくる、今に家事から解放され職場を牛耳ってやる、参政権も夢じゃない」とジョークを飛ばします。
これは言わずもがな、女性解放運動のことを揶揄していますよね。「女は家で家事育児と夫の世話」という押し付けから解放され、選挙に参加できるようになり、社会進出するために、何十年も前に起きた運動です。
しかし、未だにあらゆる先進国で、「会議中、男性は男性の話は遮らないのに女性の話は遮る」、「SNSで同じ内容を呟くと女性の方が圧倒的に叩かれやすい」など、女性の方が知能が劣っている、女は潜在的に劣っている(だから女の意見は聞く価値がない)という無意識の偏見による差別的な行為が後を絶たず、実際に調査研究もされています。
『ガール・オン・ザ・トレイン』はハッキリとそれが示唆されており、罪悪感から反抗できない女性を都合良く利用し、男性が平然と自分の罪をなすり付けるというわかりやすいストーリーでしたが、本作でも実は同じことが起きているのかなと。
アランは何もかも妻がクズだったせいで…と告白していますが、実際に妻がクズだったとして、それとは関係なくケイトリンをレイプした過去があるのでは?
「思春期の女の子だから父親を嫌うのは当たり前」という偏見によって、ケイトリンが父親を嫌う理由をボスのヘルザーは深く考えません。
が、ケイトリンがベッドで寝ている時、アランが起こしに行って布団を剥ぐシーンで、ケイトリンが「私に触るな!」と突然激昂します。
その後、ポルターガイストによって布団を剥がされるシーンがあり、そこではケイトリンのネグリジェ?の裾がすーっと上がっていく。で、そこにアランが凸ってケイトリンを起こすと、凄い形相で暴れてアランを突き飛ばす。
ケイトリンがポルターガイストを起こしているにせよ、幽霊がやっているにせよ、一度ケイトリンがこういう目に遭ったということを知らせようとして起きていることなのではないかなと。
ケイトリンが見たのはレイプ現場ではなく、母親の不倫現場。なので一応合意の上だったはず。母親の不倫を見て「自分はそうなりたくない」と思ったとしても、それだけでこうなるか?
降霊術中には、ケイトリン(に憑いた霊?)が「誰かいるか?」と訊かれ、「大勢いる」と答えます。そして「シンシアの死は事故じゃない」、「アランは娘に対し罪を犯した」と言いますが、アランが口を挟んだせいで降霊術は終わってしまう。
翌日、朝食の席で「なぜ…」とアランに何か尋ねようとしたエレンを、すぐにヘルザーが口を挟んで黙らせようとする。
次の瞬間吐いてしまったケイトリンを世話するのは、当たり前のようにエレン。男達は誰一人、父親ですらケイトリンを気にかけない。
ケイトリンは太ももに傷があり、心霊現象でないならそれは自傷だ、父親の罪を言外に訴えているのではとエレンは言いますが、ヘルザーは「普通に言えば良いのに何でそんな回りくどいことを」と一蹴。
「本人は記憶がなく、羞恥心と罪悪感のせいで言えないから、身体に傷となって表れてきたのでは」とエレンは考える。そして、アランから聞いた話でしかシンシアのことを知らない…と言われた後、場面が切り替わり、ヘルザーがアランのことをすでに調べており、「私は他人の話を鵜呑みにしない、必ず自分で検証する」と言う…これはエレンに言われる前から調べてたのか?
ヘルザーはアランに圧力をかけてシンシアのことを聞き出す。するとアランは、自分は精一杯やったのに娘は俺が悪いと責める、精神を患って何日も風呂に入らない女なんて抱けるわけない、周りには(精神病ではなく)普通の病気に見せ掛けようとした、娘は母親の不倫を目撃したにも関わらず売女だと認めようとしない…らしい。
ヘルザーが、ケイトリンは母親と同じで統合失調症だと言った瞬間、ブチギレケイトリンが家を破壊。
病院に運ばれるケイトリンに、何故かまた赤の他人であるエレンが付き添う。
残った男達はカメラを回収しながら、いつ真相に気付いたのか、エレンでさえ気づかなかったのにと言うと、ボスは最初からわかっていた等と話す。自分達は科学者で、弁護士や霊媒とは違うから、あらゆる仮説の検証が必要だったから解決が遅くなっただけで、自分だけは最初からわかっていたと。
家庭に問題があったうえ、思春期で性的な欲求が目覚める頃なので、売女だった母親と同じになるのでは、との恐れからポルターガイストを起こしていた…とドヤ顔で説明するが、男達が去った後、リビングの家の絵が勝手に落ちる。前は逆さになっていた。
最後に映る幽霊の顔はもちろんケイトリンじゃない。
ケイトリンは実際に統合失調症なのかもしれないし、ポルターガイストを起こしていたのかもしれないが、全部がケイトリンのせいではなかった。
が、母親がクズで、そのクズみたいになるのではと恐れを抱いたケイトリンが全ての問題の原因かのように言われて終わる。
元はと言えば死んだクズ母親が全ての元凶で、その母親みたいになりたくない生意気な娘が、誠心誠意世話してやってる父親に対し反抗したうえ面倒事を起こした、という風に調査隊のボスは偉そうに話を纏めるけど、結局はそうじゃなかったと主張して映画は終わり。ウワァ。
ただの間抜けな調査隊の話なのであれば、特に女性解放運動を揶揄する台詞を挟む必要はないし、多分そうなのかなあと。とかいって本当に間抜けな調査隊の話だったりして。
まあ、ホラー映画として最後に一発怖いシーンがあった方が盛り上がるだろうし、調査隊が間違ってたという話じゃないとそういうシーンを最後に入れられないからとか、そういう理由もあるんだろうけど。
あからさまな低予算映画でしたが、なかなか社会問題をぶっ込んだ(ように思える)真面目なストーリーでした。
この作品を見て、何の問題もないただの幽霊話だったと思う人の方が多いんじゃないかなという気もします。
ここ数年、コロナのせいか世間の月額制の波に押されてTSUTAYAも営業縮小しているそうで、貧乏勢には厳しい世の中になってきましたが(しかも同じ頃、何故か月額制最先端だったGYAO!がなくなるという今世紀最大の謎)、最近はYoutubeの中でGYAO!と似たようなことをやってるチャンネルがいくつかあり、そちらをたまに覗いています。
もはや図書館で真面目すぎる映像作品を見るしか手段がなくなるのか…とひもじい気持ちになっていたけど、まだまだ無料で見られる作品があることに一人大感謝祭を開きまくってます。
今後はYoutubeの無料映画チャンネルにお世話になりそう。