ルビー・スパークスのレビュー・感想・評価
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「トリセツ」にガタガタ言わずに、婚活男子はこれを観ろ。
「ルビー・スパークス」
19歳で天才作家として華々しくデビューしたものの、その後10年間にわたりスランプに陥っているカルヴィンは、夢で見た理想の女の子ルビー・スパークスを主人公に小説を書き始める。するとある日、目の前にルビーが現れ、カルヴィンと一緒に生活を始める。しかし、ルビーが自分の想像の産物であることを隠そうと、カルヴィンは周囲と距離を置き、そのことに寂しさを覚えたルビーは、新しい仲間たちと交流を広げていく。そうして次第に関係がぎこちなっていく2人だったが……。(映画.comより)
というストーリーはあるものの、よくある妄想が現実になった、妄想男子の映画かというとちょっと違う。
映画を観て思ったのだが、本作のストーリーは男の発想でなく、女性によるものだろうな、となんとなく思ったら、なんとルビー役のゾーイ・カザンが脚本を書いたという。しかも、相手のカルヴィン役のポール・ダノは実の彼氏だという。
なるほど、これは「彼女」の、「彼氏」に対する、
「男ってバカねえ、という可愛らしい気持ちと、甘えてんじゃないわよ」
という警告の思いの詰まった物語だ。
序盤の展開だが、10年もスランプに陥ったところに、夢に理想の女の子が現れる。これは作家でいうところの、「神が降りてきた」ことを意味するのだろうか。脚本のゾーイ・カザンはこれを「恋におちること」と「ホンを書くこと」と同様に、それらはある種のマジックにかかることだと、したのだろう。
主人公が、その女の子の事を書けば、その子が現実に現れ、書いた内容がそのまま彼女に反映されるという、ファンタジー設定で進んでいく。周りのみんなにルビーの存在が見えてくるのだが、要はそれだけ思いが強くなった、カルヴィンの中でより具体化したというだけであり、実際に彼女が見えているのか、カルヴィンの妄想の中なのか、は正直どうでもよくて、「ハッピー」は周囲に波及する、ということで良いと思う。
だが、ルビーの設定がある程度固まり、カルヴィンが書かなくなるにつれ、ルビーがだんだんと外の世界、というか、カルヴィンから距離を置くようになる。
それはそうだ。
書いてこそ、本の神様が降りてこそ、のルビーの存在故、書いていない状態のカルヴィンに、ルビーを引き留める、つなぎとめる力はない。
人間力がないのだ。
カルヴィンはそれに気づき、試行錯誤するも、徐々に束縛力の高い設定をルビーの性格にあてる。その束縛が段々とエスカレートし、カルヴィンはルビーを操り人形のように扱い、次々と自嘲気味に人間性を欠いた行為に及ぶ。タイプライターに没頭するほど、彼女の心は離れていく。。。
そして、そんなことをしても、カルヴィンは満たされることなく、ついにルビーを束縛から解き放つ。思い通りにすることが、相手の愛を得られることではないことが、そこでようやくカルヴィン自身が学ぶ。
カルヴィンの、その性格については、元カノのライラとカルヴィンが別れた理由に「私自身を見てくれなかった」という元カノのライラが言い分がここではっきりと、「女の子のこと、分かってねえなあ」とこちらも理解するのだ。
元カノ、ライラの消えた理由は
「カルヴィンは自分しか愛せない」。そのものずばり。
そんな彼にルビーを「彼女」にする力はない。
一方、その前にも、カルヴィンの良き理解者である、やり手のイケメンアニキも言っていた。どんなに愛していても、理解していると思っていても、「失うことがあるんだ」と。
そんなアニキの「現実的な」意見があるように、100%自分の思い通りの「彼女」を作り出したって、カルヴィンの「理想の彼女」にはできない。いや、カルヴィンでなくても、うまくいくかどうか。
カルヴィンは、ルビーが去ったあと、ハリーに励まされ、また本を書きだす。思い出のタイプライターを封印し、想像から生まれ、実在したルビーとのことを本にし、書き上げる。ここでカルヴィンは、自身の反省をする。
「妄想の嫁」「空気嫁」ではなく、「人間」を愛さなければいけないのだと。
そのラスト、カルヴィンは再び「ルビー」に出会う。
記憶のなくなったルビーかもしれない。別のルビーかもしれない。だが、「ホンを書き上げ、自身を反省した」カルヴィンは、その「ルビー」と「やり直せる」と素直になる。
これをハッピーエンドとするか、「女に振り回される」恐怖の一日が始まるのかは、人それぞれだが、これは彼女の、彼氏に対する、「私のこと、ちゃんと見てよね」という女性上から目線の映画であるのは間違いなく、もうずっと独身のままだった、ただの映画バカにとってみれば、こんな恐ろしい映画はない。
だが、こんなに励まされる映画もない。
追記
これを見て、つい西野カナさんの「トリセツ」を思い出した。「トリセツ」の歌詞がオンナのわがままばかりだ、といっているようでは、ダメなんだな。
そういう意味では、「トリセツ」前に観ておくべき映画だと思う。特に映画ばっかり見ている婚活男子にはオススメ。
ルビーが教えてくれた明るい世界
キモい男を演じさせたら比肩するものなしポール・ダノと、エリア・カザンの孫で本作の脚本も担当しているゾーイ・カザンの、プライベートでも恋人同士である二人による甘々なラブロマンス作品。かと思ったら全然違ってた。
解説にはロマンチックなラブコメディと書いてあるけど、まあ見当違いだね。
序盤は笑えるしラブコメの雰囲気あったけど、中盤以降は確実に違う。序盤の気持ちのまま中盤以降も観ちゃった人は意味がわからず低評価になるかもね。
本作は、主人公カルヴィンの成長物語で、ヒューマンドラマだろう。
カルヴィンがキモいというレビューがチラホラあるけど全くその通りなんだよ。カルヴィンはキモいんだよ。
しかしそれで低評価になってしまうのは、経過だけ見て結果を見てないからなんだよね。つまり序盤のラブコメの気持ちのままってことだね。
人付き合いが少なく、自分の価値観を押し付け、他者の価値観を受け入れないカルヴィンが、ルビーと過ごしてどう変わったのかが大事なんであって、途中でキモいのはキモくないとダメなんだよ。むしろキモいと思えたのならポール・ダノの演技を褒めてほしいものだよ。
それと終盤、カルヴィンがルビーに対してする行為についてだけど、許せるか許せないかとか、ここまで一体何を見てたんだと言いたい。
あの場面は涙を流してもいいくらいの悲劇的なシーンなんだよ。作品のクライマックスシーンでしょうが。
なぜ悲劇的なのかわからないならあと5回くらい観直したほうがいいんじゃないか。
理想の女性であるルビーと出会ったカルヴィンは、何でも思い通りになることに不満を覚えた。それでは人形と変わらないからだ。だから書きかけの小説を封印した。
本当にルビーを愛し始めたカルヴィンは人形ではなく人間として存在して欲しいと願ったが、自由になったルビーは当然、カルヴィンの気に入らない行動もとるようになる。
離れられそうになり、思い通りにいかない事に不満を覚えたカルヴィンは再び書き始めるのだが、やはりそれも気に入らない。
そしてついに、ルビーに小説の秘密を打ち明ける。
人形でいて欲しくないカルヴィンと思い通りにしたいカルヴィンの矛盾する心が爆発し、次々に意味のない命令を書きまくる。
それは、小説の魔法を抜け出してルビーが本当の人間になることを強く願うように。ルビーが命令を聞かなくなるように。
しかしカルヴィンの想いは届かなかった。ルビーはどこまで行っても人形のまま。
タイプライターのピリオドの印字が大写しになり、ルビーは倒れ込んでソファーの陰に姿が隠れた。
カルヴィンが魔法のような今の状態に、正にピリオドを打った。人形のままのルビーに別れを告げ、終わりにしたのだ。
他者とは面倒な存在だ。しかしその面倒があるからこそ人間なのだ。
自分の価値観だけでは世界は開けない。殻にとじ籠っていては新しい小説も書けない。
古いタイプライターをしまい、新しいノートパソコンにかえ、モートに貰った気に入らなかった椅子に座り、明るい外に向かって執筆するカルヴィンの姿は、キモかった少し前とは違い、明るく前向きに生きているように見える。
他者を受け入れること、愛することをルビーは教えてくれた。
エンディング、ここまでの流れだと、最後に新しい恋人を予感させる相手が登場して締めるのがお決まりだが、あれだけ愛していたルビーと違う相手っていうのもなんだなと思っていたところに、ルビーそっくりの別人登場で、ああそうか、その手があったなと妙に納得した。
良かった
ストーリーは普通だし、何か特別どうってわけじゃないけど、すごく素敵な映画だったな、と思える作品でした。シンプルだけど、「ありのままを愛す」って案外難しいし、大事なことよね…。あと、映像の色味とか全体的にオシャレな感じで良い。
お前は自分の創造物だと、主人公がルビーに告白して、好き放題にタイプライターで書きまくるシーンが印象的。究極あそこまで行かなくても、自分の身近な大切な人に、私はちゃんと丁寧に接してるかな?って考えてしまった。長い付き合いだからって、つい惰性で甘えちゃってるかも。思いやりをもって、愛をもって付き合わなくちゃいかん。と、一人で反省しました。
ホラー?
コミュ障でスランプの作家が書いた
恋愛小説の中の女の子が登場しちゃうって話で
主演のルビーはキュートでこのストーリーにピッタリ。
ストーリーも男の理想のお話、、、
と思ってたら途中からホラー?笑
自分が書く通りに変わっていくルビーの性格や感情は
結局はルビーの存在を否定することに繋がっている。
アニキがルビーの胸を大きくしろよとしきりに言っていたが性格だけでなく外見まで変えたらもはや
ルビーは名前だけの存在でいないものと同じになるのだから。
For her. ラブコメを期待したらホラーだった
観る前はラブコメなのかなっと思っていたのですが、観てみるとこれはホラーですね。最後のカルヴィンがタイプライター叩いてルビーを操るシーンはホント観てるのが辛くって「もう止めてあげて!」って何度も思いました。
いやー、でもこういう男いるわ。若くして成功して、その後引きこもってて社会に出てないので基本的に子供なんでしょう(社会に出てても子供な大人は沢山いますけど)。ルビーが自立しかけると、自分しか見えないようにして、今度はそれが重くなるとやっぱ止めるって。相手の事を全く考えてなくってメチャ我が儘!そう言えばやたらマザコンっぽかったですしね。母親の彼氏(アントニオ・バンデラス!)とは相容れない感じでしたね。
最終的にはルビーを解放してあげたカルヴィン君ですが、1人の相手と付き合っただけでコロコロ性格が変わっていくので色んな経験ができて、けっこう成長できたのではないでしょうか?男でも女でも異性をありのままに受け入れるって簡単なようでとっても難しい事なんですよね。かといって思い通りに操ったって上手くいきっこないし。そう言えば「アラジン」のジーニーですら人の心は操れないって言ってませんでしたっけ?
色々と性格が変わってくルビーを見事に演じたゾーイ・カザン。エリア・カザンのお孫さんらしいのですが、そもそもエリア・カザンって誰?っと思って調べてみると、作品には「波止場」「欲望という名の電車」「エデンの東」と観たことなくても名前は知ってる作品が並んでおりました。おー、才能って受け継がれるもんだなぁ。今後にも期待です。
I Promise…
最初に一言感想を述べると、「最高の映画!」です(笑)
現実と空想を丁寧に描いている映画でとにかく映画の雰囲気がとても心地よい。カット割りから音楽まで自分にとってどストライクでした。特にラストのシーンは最高で、ルビーの少しためてからの「やり直せる?」は「その会話をもう一度やり直せる?」っていう意味と「二人の関係をもう一度やり直せる?(ルビーはカルヴィンを覚えている)」の2つの解釈ができてとても深い。そして最後のカルヴィンの「I promise…」はルビーがまだ現実世界に居なかった時にカルヴィンに対してルビーが言った「あなたは絶対に飽きないわ。I promise…」と重なっていてとても味わい深い。
とにかく私はこの映画をオススメします。カップルで見るとイイかもしれないですね。
ルビー役の方初めて見るけどとても可愛かった…! この映画はなんだろ...
ルビー役の方初めて見るけどとても可愛かった…!
この映画はなんだろ…
恋愛において相手に依存してしまう現象を、
ファンタジー要素をいれつつ可愛く描いた作品です。
カルヴィンの相手に依存する愛って
結局相手の事を想ってない愛なんだと。
自分が嫌だと思ったらすぐ相手を変えようとする。それではだめなんですよね笑
自分がなにかしら変わらなきゃ。
相手の時間も尊重するし、自分の時間も尊重する。相手の事を思って行動しなきゃですね、、
結局カルヴィンはルビーを手放します。こんな自分ではダメなんだと。。。
カルヴィンのお兄ちゃんがいい事言ってたのよく覚えています。人との関係で絶対ってない。いつ失っても分からない的なこと笑だからこそ人との出会いや付き合いって大切にしなきゃっておもうんだろうなぁ
『真実かもしれない。』
現実と夢の区別がつかなくなってしまった人、男性の思う通りにつくられた欲望まみれのお話かと思ったら、全然違うものでした。
脚本がルビーを演じるゾーイ・カザンだからか、きっと男女問わず楽しめる作品。
特に、最後のシーンはキュンとしました。ここからやり直してね、きっと今度はもっと上手くやれるんじゃないかな、って。
自分の願望通りに創ったって上手くいかない。これこそが人間の難しさや面倒臭さ、面白さや愛おしさだなあと感じました。
ふたりが上手くやっていくには、物語を書くのをやめたまま、お互いを思いやって、自分の意のままにしようとなんて思わないことが大切だったのかな。でも、そうしたらあの小説は創られなかったと思うと、皮肉なものですね。
『真実かもしれない、そう思って。』という台詞が印象的でした。他の映画や文学もそう考えるとワクワクするなと思いました。映画や文学も結局は人間を描いているんだから、ある意味真実ですよね。
恋愛は狂気
恋人への要求がだんだんと多くなっていったり、理想通りの恋人になっても満足できずにもっと思い通りにしたかったり。
一方的な思い込みと狂気で成立する恋愛を、嫌味なく可愛いらしく描いた良作です。
「ひとりよがりの愛」から「相手のことを思う愛」へと変化し成長する主人公を、全ての男性がお手本にしてくれたら、嬉しい!
騙された!
かわいい表紙に騙されました!笑
人間の欲と理想は近いようでかけ離れていますね。彼の貪欲さにだめだよと声をかけたくなるほど哀れで、でも、愛おしさをひしひしと感じました。
また、ちょっとしたホラーのようなラブコメディな雰囲気とファンタジーなのにリアルな生活のギャップに、違和感という名のたのしさを感じました。
鑑賞後、後半の狂気さと終わり方の印象が強く残っていて、切なさが残りました。
男の妄想心をくすぐる…?
デビュー作で天才と言われたものの、その後スランプ中の作家カルヴィン。ある時、夢で見た理想の女性をきっかけに再び創作意欲が戻り小説を書いていると、その女性ルビーが現実に現れ…!?
何とも風変わりなラブストーリー!
目の前に現れたのは、自分が創り上げた理想の女性で、自由に操る事が出来る。
ちょっと見方を変えれば、男の妄想大爆発!
自分だったら、好きなアノ女優に似せて、あ〜んな事やこ〜んな事を…妄想止まりません!
でもそこは、ジョナサン・デイトン&ヴァレリー・ファリスの「リトル・ミス・サンシャイン」の監督コンビ、実に巧く描く。
前半はコミカルにロマンチックに、後半は切なく。
自分が思い描いた理想の女性と恋するからと言って、万事上手くいくとは限らない。
擦れ違いが生じ、自分の理想通りに書き直し、その度に心が離れていく。
男女の関係って、難しい…。
終盤、ルビーは秘密を知る。
カルヴィンはある結末を書く。
彼なりのせめてもの愛の形。
一癖二癖ある役が多いポール・ダノが、冴えない作家を好演。
それにしてもこの人は巧い!
いずれ間違いなくオスカー俳優になる!
本作最大の源と言って過言ではないのが、ルビー役のゾーイ・カザン。
とっても魅力的!
聞けば、ハリウッド往年の大監督エリア・カザンの孫。
さらに本作では脚本も担当。
才女だ。
(ちなみにこの二人、実生活でも長年のカップルだとか。スウィートで自然なやり取りはその為か…)
新たな出会いを予感させるエンディングも余韻が残っていい。
同監督の「リトル・ミス・サンシャイン」より好きかも。
好編!
作る人の苦悩
劇場で見ました。
最初は自分もあんな彼女欲しいなってくらいでしか見てなかったけども、
男の一つの夢をかなえた主人公の苦悩って考え物だなって思う。
自分の思い通りになる女性を手に入れた時に自分が何を思うかって人それぞれだと思うけれども、多くの人が彼と同じ決断をするんじゃないでしょうか。
だって、自分の思い通りになる人がいても面白くないと思いますし。
自分が作ったストーリーの中で思い通りに動かないのは
主人公を投影した自分だけ。
そんな状況に追い込まれたら創作者は悩んでしまいますよね。
それでもゾーイ・カザンには惚れそうになってしまうんですけどね。
中学生が考えたみたいな話
主人公が小説家というのだが、こんな中学生が考えたみたいな話で、ベストセラー作家だなんてちゃんちゃらおかしすぎる。主人公がメガネのヒョロヒョロで、心閉ざしがちの実につまらないちんかすみたいな人物で、こんなのが描いた小説なんか絶対つまんないに決まってるからベストセラーを出すのも非常にとってつけたような感じだった。
ルビーが理想の女というのだが、老けてるしあんまり可愛くないので、そこは等身大の理想なのだなと感心した。
しかし、小説に書いて好きな設定を選べるというのなら「つかず離れずの距離感で、僕の求めるものを絶妙に察して対処してくれる」と書けばいいじゃないか。それで恋が破れるなら完全に自分のせいなので、そんなちんかすぶりならとてもいい話になると思う。
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