「リスペクトを感じる」許されざる者 xtc4241さんの映画レビュー(感想・評価)
リスペクトを感じる
イーストウッドのこの名作に対する李監督のリスペクトを強く感じた。
「許されざる者」は、僕のNo1フェイバリットだから、
ストーリーはもちろん、その映像の細部までしっかりと頭に入っている。
そのディテールでいえば2つのシーンが強く心に残っているのだが・・・。
2つとは、賞金を求めて3人が荒野を行くシーン。
オリジナルでは太陽と川と風がきらめくように描かれていた。
水面に太陽がゆらゆら、その中を3人の乗った馬が走り抜けるシーンは
詩情性にあふれていた。
北海道に場所を移しても、真っ白な雪山の世界に、
見事な大自然を捉えていたを捉えていた。
もう一つは、長年の相棒がリンチにあって殺されたと聞いたときの、
主人公が、長年やめていたウィスキー(酒)に手を出して、
ごくりと飲み干すシーン。
そのときの戦慄といったら、息が止まる思いがしたのだ。
ここも重要なシーンとして、とらえていたことに満足を感じた。
だから、そのほかのところがオリジナルとは違っていてもしかたないと思う。
たとえば、日本版キッド役により重きを置いたことも、
残された子供をサポートするのが、違うものたちになったことも、
それはそれで、よく考えてのことだったような気がする。
だから、僕はこの映画について悪く言うつもりはないのだが。
完璧に近い作品をリメイクするといったとき、
この批判は織り込んでいただろう。
それでも、作りたかった。やりたかった。描きたかった。
このどうしようもない欲望は抑えられなかったのだと思う。
それが映画監督といおうか、アーティストだから。
役者たちもそのプレッシャーによく耐えていると感じた。
そこには、日本映画としての甘えは全くなかったと思っている。
ただ、オリジナルには到達することは難しかったというべきだろう。