「なぜ、死ななければならないのか」高地戦 critique_0102さんの映画レビュー(感想・評価)
なぜ、死ななければならないのか
随分と時間が経ってから、ようやくこの作品を観た。 図書館で借りた『韓国映画から見る、激動の韓国近現代史』という本に紹介されていたのが、鑑賞のきっかけだ。
劇中に登場する女性スナイパーの存在は、かつての名作『シュリ』を彷彿とさせる。それもそのはず、脚本を手掛けたのは『JSA』の原作者として知られるパク・サンヨンであることからも、その時代(のテーマ)を受け継いでいると言えるかもしれない。
物語は史実に基づいたフィクションだが、停戦合意から発効までの「空白の12時間」に起きた戦闘の悲哀が、残酷なまでに描き出されている。歴史映画としての完成度は凄まじく、韓国映画特有の激しい戦闘描写は、他の朝鮮戦争作品と比較しても群を抜いたレベルにある。
この作品の特筆すべき点は、南北兵士の間に通う、戦争を介した奇妙な「連帯感」だろう。それは、土の中に埋められた「土産物」という装置を通して描かれる。同じ民族同士での殺戮――それは、その傍らで「特需」に沸き、繁栄を享受していた日本という国の誰もが、知ることのなかった現実である。
「なぜ、死ななければならないのか」
その根源的な問いに対し、経済的・政治的な腐臭が漂う現代の日本では、もはや考えることさえ放棄してしまっているのではないか。この映画が突きつける現実は、あまりにも重い。
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