「【”停戦はまだか。そして俺たちは敵ではなく戦争と戦う。”今作は、同民族ながら当時の米ソの政治思想により朝鮮戦争に駆り出された朝鮮の民の悲劇と、戦の中での僅かなる民族の絆を描いた作品である。】」高地戦 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”停戦はまだか。そして俺たちは敵ではなく戦争と戦う。”今作は、同民族ながら当時の米ソの政治思想により朝鮮戦争に駆り出された朝鮮の民の悲劇と、戦の中での僅かなる民族の絆を描いた作品である。】
ー 今作は、韓国映画界が、「JSA」「シュリ」を代表とした朝鮮戦争を舞台にした映画を作り続ける意味が分かる映画である。
劇中で、しばしば交わされる”停戦はまだか!”と言う戦士たちの悲痛な叫び。
そして、38度線を境に一進一退する両軍の攻防の中で芽生えた物資、手紙、写真での交流のシーンは哀切であるが、観る側に訴えかけるメッセージは明確であり、このシーンこそが韓国映画界が描きたかった事なのではないかと思うのである。
更に言えば、日本ももしかしたら北海道は共産主義国家に、青森以南は民主主義国家になっていた可能性も有った事も、思い出した作品でもある。-
■朝鮮戦争末期。韓国軍と人民(北朝鮮)軍がにらみ合う南北境界線エロック高地では、互いに領地を奪いあう一進一退の熾烈な攻防が続いていた。
この激戦地に派遣されたカン・ウンピョ中尉(シン・ハギュン)は、軍の中に味方をある戦いで多数撃ち殺し、人民軍の手紙を韓国に送っている”ワニ中隊”の内通者を探りに来たのである。
彼はそこで学友・キム・スヒョク中尉(コ・ス)と再会する。スヒョクは二等兵であったが、物凄いスピードで中尉になっていたのである。
更に、シン・イリョン大尉(イ・ジェフン)が、モルヒネを打ち乍ら指揮している事にも驚くのであった。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・冒頭、38度線の引き方で、韓国軍将校と米軍将校とで揉めているシーンから始まる。
・そして、舞台は南北軍の最前線であるエロック高地に移る。そこでは、激烈な闘いが繰り広げられているが、一時中断すると韓国軍たちは地面を掘り返し、人民軍からの酒と共に、多数の手紙を受け取るのである。
その事に驚くカン・ウンピョ中尉だが、徐々に何故に”ワニ中隊”のトップが何度も変わり(戦死)していたかに、気付いて行く過程の描き方が上手い。
・”ワニ中隊”はいつ終わるのか分からない朝鮮戦争の中、人民軍と殺し合いながらも、実は同民族としての絆を持っていたのである。そして、無謀な指示を出すトップをキム・スヒョク中尉が”戦死”させていたのである。
・更に、シン・イリョン大尉がモルヒネを打ち乍ら戦い続ける理由も描かれるのである。彼はある戦いで、人民軍に押され脱走する韓国軍が船に乗り切れなかったために、仕方なくある隊の兵士の殆どを撃ち殺していたのである。
その隊の、生き残りの精神を病んだ兵士にシン・イリョン大尉が真実を話し、大尉が彼に肩を背後から撃たれるシーン。だが、銃弾は貫通し、大尉は彼を咎める事無く立ち去るのである。
■上記のシーン意外に響くシーンは多数有れど、最少年の兵ソンシク二等兵(イ・デヴィッド)が、韓国のヒット曲を歌えと言われたのに、朝鮮民謡を歌うシーンからの、彼が凄腕スナイパー”2秒”(キム・オクビン)に撃ち殺されるも、再後半、戦争中断時に人民軍側から聞こえてくる彼が歌った朝鮮民謡が聴こえてくるシーン。
又、キム・スヒョク中尉が人民軍からの写真の中で見つけた美少女(キム・オクビン)と戦地で遭遇するシーンであろう。彼女は人民軍の凄腕スナイパーになっていたのである。そして、キム・スヒョク中尉は、カン・ウンピョ中尉の目の前で彼女に撃ち殺されるのである。
その後、山中で彼女と出会ったカン・ウンピョ中尉は、彼女をナイフで静に刺殺するのである。切なすぎるシーンである。
<漸く届けられた停戦の報。だが、その開始は12時間だった。その間に、韓国軍と人民軍が川で会うシーン。そして、その後草木すら生えていない高地での激烈な闘いのシーン。もうすぐ停戦なのに。シン・イリョン大尉も人民軍の傷だらけの顔のヒョン・ジョンユン中隊長(リュ・インスン)に撃ち殺されるのである。
そして、両軍で生き残ったカン・ウンピョ中尉とヒョン・ジョンユン中隊長とが、洞窟内で煙草を分け合うシーン。だが、ヒョン・ジョンユン中隊長の口から、煙草は静に落ちるのである。
今作は、同民族ながら当時の米ソの政治思想により朝鮮戦争に駆り出された朝鮮の民の悲劇と、戦の中での僅かなる民族の絆を描いた作品なのである。>