ローマでアモーレのレビュー・感想・評価
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ウディ節マダマダ健在!オペラも笑えて楽しめました!
私はウディ・アレン映画の大ファンである。そして本作は、久し振りに彼自身も俳優としてカンバックをしている作品である為、つい甘い点を付けたくなってしまう。
その彼が今回演じる役処は、余りにも奇抜な企画ばかりをしていた、時代を先取りし過ぎて大きな成功を収める事も無いままに、引退してしまったクラシック音楽演出家ジェリー。そんな前衛的な作品ばかりを演出して来た彼は、引退後の現在でも、隠居生活などもっての他で、まだ老後は、50~60年は生き延びて、仕事のチャンスを覗っていると言う、根っからの仕事大好きキャラクターで、どこかウディ彼自身の人生に重ね合わせたようでもある。
今年78歳を迎えた彼も1年1作品位のペースをキープしながら作品を世に出し続けているのは、ジェリーのように仕事が何よりも好きである事だが、そんな彼の情熱の秘密とは一体何なのだろうか?
勿論、それこそは、彼がいつも様々に作品で描いて見せる、恋のから騒ぎ的な物語の演出こそが、彼の情熱の基盤になっている以外には無いだろう。
日本の監督で言うなら新藤兼人しかりである。
恋する気持ちをいつも胸に生きるのは、人生を楽しく明るく支える大きな活力源のようである。仕事も一つの恋と同じ働きの様でもある。
今回の作品も、登場人物は少し多めであるため、少しばかり落ち着きが無い感は有る。しかし、ウイット溢れた、彼特有の皮肉たっぷりのセリフではあるけれども、人間が大好きで大好きで命の限り、人生を謳歌しようとすると監督の彼の生きる姿勢がそのまま映画になっている。
彼の世界観は、やっぱり元気になれるし、楽しくて力強い作品だから大好きだ。
今回も恋する若者のエネルギーを描いて、ウディ節は随所に光る。
最近では、ロンドン・パリ・ローマと観光のメッカである、美しい街並と共に、ロマンチックな恋の芽生える街を描き続けている彼の作品は、そのロケーションを観るだけでも結構楽しめる。
そして今回は、イタリアの大表的芸術文化である、オペラを多数聴く事が出来たのも大きな楽しみの一つだった。
普通は、歳を重ねる毎に、故郷への回帰が強くなるものだが、彼は、昔ほどNYの街に執着する事無く、人間の生きる根源である、人を愛する、恋心にターゲットが絞り込まれているようだ。
やはり今作も、観てのお楽しみで、笑いの絶えない作品である為に、細かいエピソードを記すのは割愛するけれども、まだまだウディ・アレンなら50年位は映画を撮り続けそうな気配が残るような魅力に溢れた笑える作品でした。是非その笑いのパワーは、一見の価値が有るので映画館で、観客みんなで、楽しんで欲しいものですね!
やっぱりウディ・アレン。冷静に考えると、ちょっと不思議。
ウディ・アレン脚本・監督・出演のラブコメ。
いやぁ、ウディ・アレンの作品は一筋縄では行きませんね。『ミッドナイト・イン・パリ』の時もそうだったんですが(って言うか、『ミッドナイト・イン・パリ』は元々、現実と虚実が絡み合っているのがテーマ)、現実と虚実が絡み合っています。一日の話のようでもあり、何日も経過している話でもあり。現実の話でもあり、想像・空想・妄想の話でも有る。なんとも不思議です。
出演時は豪華絢爛です。アレック・ボールドウィン、ペネロペ・クルス、ジェシー・アイゼンバーグ・・・。見たことの有る俳優が結構出ています。もちろん、ウディ・アレンも。
あまり深く考えると、訳が判らなくなりそうなので、複雑には考えずに、美しいローマを舞台にした軽いラブコメということで良いのではないでしょうか。
原題が『To Rome with Love』。FromではなくToで有る所がミソなのかもしれません。確かに、ローマからというより、ローマに対して愛をという感じです。
アレンらしく皮肉がきつい
ウッデイ アレン出演、監督のアメリカ映画。
「それでも恋するバルセロナ」でスペインを描き、「ミッドナイト イン パリ」でパリの魅力を、かき口説いて説明してくれたウッデイ アレンが 今度はローマから「アレンのローマ」を作って欲しいという注文を受けて 作られた作品。 スペインもパリも良かったが、今回のイタリアは少々、皮肉が効き過ぎたか。
ストーリーは 4組の人々が、同じ時にローマを訪れていて、同時進行的に、様々な経験をする。
一組は
今は、初老の著名な建築家、ジョン(アレック ボールドウィン)が、自分が若かった頃に建築を学ぶために留学していたローマを再び訪れている。昔を思い出しながら、感傷に浸って かつて自分が住んでいた街を歩き回るうち、過去の自分に出会う。恋人と一緒に暮らしていたアパート、自分が建築家になるためのインスピレーションを与えてくれたローマ古代遺跡の数々、石畳、、。彼は恋人を訪ねてきた女友達に恋をして、同時に二人の女性達から立ち去られた。ほろ苦い思い出に、身をまかせる感傷旅行。
アレック ボールドウィンの若い頃を演じる、ジェシー アイゼンブルグとその恋人グレタ ゲーウィックの丁々発矢の早口会話が面白い。頭の良い若い人たちが、普通の人の会話の3倍くらいの早さで論議する姿が 理屈っぽいウィデイ アレン風と言える。
2組目は
新婚旅行で、田舎からミリ(アレクサンドラ マストロナード)と、アントニオ(アレクサンドロ テイべり)の二人がローマに来た。ローマに来た目的のひとつは 新妻を叔父叔母達に紹介することだが、親戚達はアントニオに、ローマで自分達の商売を引き継いで欲しいと思っている。親戚がホテルに訪ねて来ると言うのに、ミリはホテルから外に出て、迷子になってしまう。そこで偶然、彼女はあこがれの映画スターに会って、誘惑されホテルに。ところがホテルの部屋に強盗が入り、その上、現れたのは、探偵に付き添われた映画スターの妻だった。とんだ目にあう新婦だが彼女は、今まで田舎ではできなかったスリルたっぷりの貴重な経験を楽しんでいた。
一方、彼女をホテルで待つ新郎の部屋に、何の間違いか娼婦(ペネロペ クルーズ)が入ってくる。娼婦はさっそくベッドで商売を始めようとするが、そこに親戚一同が押しかけてくる。一同は娼婦と一緒にバチカン観光に行くことに。何やらかにやら、たくさんの出来事に巻き込まれた末、新婦は新郎の待つホテルに帰ってきて、一件落着。いかにも非現実的だが、イタリアならば こんなことも起きるかもしれない、と思わせる。
3話は
イタリア人と結婚することになった娘のために、その両親ジェリー(ウッデイ アレン)とフェリス(ジュデイー デイビス)が、アメリカからローマにやってくる。青年の父親、ジャン カルロ(ファビオ アルミアト)は葬儀屋を営んでいるが、めっぽうオペラを上手に歌いこなす。ジェリーは引退した音楽監督なので、そのつてで、この葬儀屋を、歌手として売り出そうとプロモート始めるが、彼は風呂場では朗々と歌えるが風呂を出ると、からっきしダメ。結局、舞台で簡易シャワーを運んで、シャワーを浴びながら歌わせて、オペラを成功させる。
ここでは、ローマでは一介の市民が プロのオペラ歌手並みにオペラを歌うのに面食らうアメリカ人を大いに笑っている。本物のテナーの人気オペラ歌手、ファビオ アルミアトが出演していて、素晴らしい歌声を聞かせてくれる。
4話は
平凡な事務職に就いているローマ市民、レオポルド(ロベルト ベニーニ)は、何の取り得も、才覚もあるわけでなく、平々凡々妻と子供達と暮らしていたが、ある日突然、パパラッチに追われる身に。朝食に何を食べたか、下着は何色か、とまでインタビューで問われて、それごとに大騒ぎされる。それに彼は、怖くなって、面食らって、逃げてばかり。そんな日も、しかし、突然何事もなかったように終わり、今度は誰も 彼に関心をもってくれない。騒がれなくなった彼は、かつてのパパラッチに追われていた、栄光の日々を思い出して、自分を失ってしまう。ここではパパラッチ好きの 熱しやすく冷めやすいイタリア人気質と、それに振り回される小市民を笑っている。
コメデイーだが、こんな風に イタリア人を笑ってばかりいていいのだろうか。ウッデイ アレンの笑いが わはは、と笑う楽しい笑いよりも ブラックなカラーが濃いことが気になる。それこそが、ウデイ アレンの味だろうが。
アレンはニューヨーク、ブロンクス生まれのユダヤ人。小男で醜い顔をしている。それを自分が一番承知している。子供のときから手品が好きで、人を笑わせ、ウッデイ アレンの名前で16歳のときからギャグやジョークを書いてきた。舞台にも映画にも進出して、駄作も含めて、沢山の作品を生み出してきた。特に、「アニー ホール」1977年、「マンハッタン」1979年、「カメレオンマン」1983年など、独特のおかしみで、愛好者を増やしてきた。
ウッデイ アレンの作品の特徴は とにかく よくしゃべることだ。会話が多く、おしゃべりすぎてしつこい。知的で神経質で ひとつのことに偏執狂的にこだわり、言い訳をのべつまくなしにしゃべり続ける。そのしつこさに辟易する。
今回の映画でも美声の葬儀屋を まわりの迷惑と反対を押し切って、簡易シャワーとともにオペラ舞台に強引に押し上げてしまう。全くしつこくてお手上げだ。笑うよりもげんなりしてしまう。この味が ウッデイのファンにはたまらないのだろう。
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