「何を語ろうとしたのか伝わってこない」クラウド アトラス マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)
何を語ろうとしたのか伝わってこない
500年のあいだに主要人物が輪廻転生を繰り返し登場する。同じ役者が3〜6役をこなす。
生まれ変わりと時間的な相違から老若男女はもちろん人種も変わる。犬猫だけにはなっていなかったようだが、たぶんそうだろうとヤマをかけていても、けっこう見落としがある。
彼らを結ぶ証は身体のどこかにある「彗星の痣」のようなのだが、それがいったい何を意味するものなのかは語られない。したがって輪廻転生の概念は伝わるが、そのことによる運命的な出会いや事象といった語り口は長尺の割に浅い。
そのため、何を語ろうとしたのか曖昧で、結果的に仮装大会的な興味が優先してしまう。人が生まれ変わることへ、もっと深い意味を持たせてもよかったのではないだろうか。
何よりも、もう一度観たいという欲求が、ストーリーの再認識というよりも、誰が何処にいたのかという下世話な興味の方が上なのだ。そう思わせること自体、この作品の論点の曖昧さを物語っており、観る者の視点がズレてしまっている証しだ。
「2001年宇宙の旅」のように後になって評価される作品もあるが、この作品が一大叙事詩の名作として評価される時が来るかは微妙。未来人となって、この映画を古典名作として観ている自分を想像すると、ちょっと面白い。
原発の非安全性を隠匿する話はよくあるが、原油市場確保のためにわざわざ原発の安全性を故意に覆すという逆転した逸話は興味深い。科学にも自然に対しても謙虚であったなら原発もいいものが作れるということだろう。
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