「受け継がれ繰り返される壮大さ」クラウド アトラス N.riverさんの映画レビュー(感想・評価)
受け継がれ繰り返される壮大さ
公開時からの二度目の鑑賞。
とても複雑な構成で、明確な一つの結末や解決が提示されているわけでもない本作。
加えて3時間と長いのだから、かなり好き嫌いは分かれると思える。
が、自身には物語もキャスティングもドストライクであった。
作曲家、航海、70年代、老人ホーム、ネオソウル、荒廃未来と、
多彩なジャンルに時代が織り交ざり、とんでもない数の登場人物が出てくる。
しかしどの時代でも、どの世界でも、
過酷な運命の元、登場人物らが困難を打ち砕き、迷いながらも懸命に生きる姿には引き込まれた。
まるで業を背負ったようにあちらで死に、こちらで結ばれ。
関係さえ見えてきたなら立場を変えて繰り返される苦難と決断の波状攻撃に、切なさもひとしお。
積み重なるほどに全体を貫き浮かび上がってくるテーマの、
個人間にあるものではない、人類に連綿と受け継がれてゆく愛の壮大さよ。
描き方でこうも変わるものかと思わされる。
かつ、どのジャンルに時代も甲乙つけがたいほど完成度が高く、
演出もかぶることなく個性に満ちており、
まるでひと粒で何度も美味しいを地で行く贅沢さだった。
個人的にはネオソウルの筋と、作曲家の筋が秀逸と観る。
そこはトランスジェンダーであり、マトリックスの生みの親だからかと思わずにはおれない。
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