「それでも人は、人の感情を信じたい」脳男 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
それでも人は、人の感情を信じたい
巷を脅かす連続爆弾テロ。
容疑者として捕まった一人の男、鈴木一郎。彼は驚異的な頭脳と身体能力を持ちながらも、人の感情が一切無かった…。
邦画にしては珍しいハードなバイオレンス・サスペンス。グロい描写もあり、全国公開の大手映画会社の作品にしては天晴れ。見世物的な「悪の教典」とは訳が違う。
韓国サスペンスや園子温作品を見慣れていると物足りない部分もあるが、邦画もいよいよハードなバイオレンスに目覚めた?
実は、あまり予備知識無しで鑑賞。
なので一番驚いたのは、生田斗真は犯人じゃないんだ(笑)
犯人はサイコな女の子。あちこちの映画雑誌にも普通に書いてあるし(笑)
脳男とサイコな爆弾魔の戦いに、脳男の過去と脳男から感情を引き出そうとする精神科の女医の苦悩が複雑に絡む。
一切の感情を排され、祖父から「この世の悪を殺せ」と叩き込まれて育てられた脳男は、言わば殺人ロボット。
いくら手を下したのが極悪人ばかりとは言え、人を殺めた時点で人殺し。罪は罪。
爆弾魔も似た境遇を持つが、犯行を快楽として行う爆弾魔とは決定的に違う。
無い感情の奥底に眠る本当はあるかもしれない感情を信じ、彼をそうした過去が哀しい。
生田斗真が熱演。イメージを一新させるダークな役を演じきり、唯一認めるジャニーズの演技派だ。
松雪泰子も、自らの過去と脳男の境遇に葛藤する精神科医を、ほんのり色気も漂わせて演じる。
圧巻は二階堂ふみ。イッちゃってるサイコな爆弾魔を怪演。ただ可愛いだけじゃなく、これからも楽しみ。
二階堂ふみが出てるので、染谷将太も出演。出番は少ないが、印象と衝撃を残す。(それにしても、この二人はもはやコンビか?)
江口洋介はいつものクールな雰囲気とは違うワイルドな刑事を熱く演じていたが…一人だけちょっと浮いてたかな?
ツッコミ所やご都合主義も少々感じるが、ハード路線を一貫し、おセンチになり過ぎないモヤモヤとした感が残る締めくくりも悪くない。
今年は邦画に大型サスペンスが多く控えているが、その一発目、なかなか楽しめた。