劇場公開日 2002年3月30日

「「私にはあの子の名前は一つだけよ」」WXIII 機動警察パトレイバー komasaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5「私にはあの子の名前は一つだけよ」

2024年9月28日
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鑑賞方法:VOD

一作目での榊の言葉、「人間の側が間違いを起こさなけりゃ機械も決して悪さをしないもんだ」。それを度々思い出させるシリーズ。

レイバーとの格闘後、自衛隊によって火炎放射器で焼かれる生物兵器。断末魔の叫びを上げるその身から剥がれ落ちる装甲、その下から豊かな乳房が露わになる。癌で亡くなったはずの少女が、確かにそこで生きて成長している証のようで、この生物を怪物と呼ぶことができなくなる。それよりも、その様子を満足気に眺める男と意志のない操り人形達、それらの方が大きな一頭の怪物に見える。

生物兵器に死んだ娘の癌細胞を埋め込むことで、娘を死を超越した存在として蘇らせた母。その行為は、最愛の娘に二度目の死を与えることになる、それも生きたまま焼き殺されるという過酷なかたちで。愚かではあるが愛情故の過ちに、これ程残酷な結末が必要なのかと恐ろしくなる。

最後、繁栄の象徴でもある東京のビル群を、大量の墓石に見立てた絵で締めくくられる。これが、この街の未来をもう少し見ていたくなったと前作の最後に言っていた柘植への回答なのだろうか。

komasa