「陰鬱ながらレベルの高い、名作刑事ドラマ」WXIII 機動警察パトレイバー 葉読五式さんの映画レビュー(感想・評価)
陰鬱ながらレベルの高い、名作刑事ドラマ
本作は、二足歩行の作業用ロボット「レイバー」が普及した世界で、レイバー犯罪に立ち向かう警察官達を描いた「機動警察パトレイバー」シリーズの劇場版3作目である。
が、本作においてレイバーははっきり言ってオマケ要素に過ぎないレベルとなっている。レイバーを操るおなじみ特車二課の面々は最後の最後まで出てこないし、それ以外のレイバーすら作中ではほとんど顔を見せない。the movie2の時点でレイバーの出番はだいぶ少なかったが、正直ここまでくるとパトレイバーである必要性がない、というのは確かに最もな指摘ではあると思う。しかも、その代わりに出てくるのは異形の怪物である。まあ、これ自体は劇場版の前日譚であるOVA版にも似たようなエピソードが出てくるのだが、なまじ前作がリアリティ溢れ、評価も高い作品であるためこの点が不評になることも致し方ないとは思う
しかし、それでも本作は面白い映画だ。作中を通して漂う陰鬱な雰囲気のなかで繰り広げられる刑事達の捜査パートは映像的な派手さはないが面白い。黒幕が誰なのかは序盤の方で十分察しが付くのに、事件そのものの姿が見えてこない、その謎をじわじわと解き明かすストーリーは、恐怖感を与える演出も合わさって非常に面白いものとなっている。オリジナルキャラクター達も十分キャラが立っていて、何ともあまり好きになれない人間臭さを持っていて面白い(というにはラストを含めあまりにも陰惨すぎるが)これらの要素が、2000年前後のアニメーションに乗って展開される本作は、1,2と方向性は違うながらも負けず劣らずの魅力を持っている。レイバーの活躍を見たいのであればおすすめはできないが、そうでないならこれも一つのパトレイバー作品としてアリだと思う