話の話

劇場公開日:2016年12月10日

話の話

解説・あらすじ

「アート・アニメーションの神様」として世界中のアニメーターたちから敬愛されるロシア人アニメーター、ユーリー・ノルシュテイン監督が、自身の記憶を色濃く反映させながらつづった映像叙事詩。トルコの詩人ナジム・ヒクメットの同名の詩をモチーフに、ロシア子守唄に出てくる狼の子が狂言回しとして登場。幼少時の戦争体験などノルシュテイン監督自身の様々な記憶を散りばめながら、モーツァルトとバッハの旋律に乗せて、時にユーモラスに、時に悪夢的に描き出す。その完成度と芸術性の高さから世界各地の映画祭で絶賛され、ノルシュテイン監督を代表する一作となった。2004年の特集上映「ユーリー・ノルシュテインの仕事」などで上映されている。16年12月には、ノルシュテイン監督の代表作6作品を集めた特集上映「アニメーションの神様、その美しき世界」にて、高画質・高音質でよみがえらせたデジタルリマスター版が上映。

1979年製作/29分/ソ連
原題または英題:Skazka skazok
配給:チャイルド・フィルム
劇場公開日:2016年12月10日

その他の公開日:1996年2月20日(日本初公開)

原則として東京で一週間以上の上映が行われた場合に掲載しています。
※映画祭での上映や一部の特集、上映・特別上映、配給会社が主体ではない上映企画等で公開されたものなど掲載されない場合もあります。

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(C)2016 F.S.U.E C&P SMF

映画レビュー

4.5 美しく不思議な芸術作品

2023年3月24日
PCから投稿

数年前どこの劇場で観たのか
都会の小さな映画館だった。
その美しさだけが記憶に残っている。

描き込まれたアニメーションというより
命を与えられたアニメーションがふさわしい
本当の芸術作品。

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星組

4.5 ウシとリンゴと戦争と

2021年7月3日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

怖い

興奮

難しい

ユーリー・ノルシュテイン監督作六本目。
監督の集大成。
鑑賞した全5作の要素を少しずつ取り入れていて、5本の中で最も難解で不気味な30分。
タイトルの通り“話の話”。
監督自身の幼少期の記憶を反映しているそうで、3つの物語を繋ぐストーリーテラー的なオオカミは、きっと幼少期の監督なのでしょう。
この話の中の3つの話。
ないようなあるような。内容がないようなんて…
人々の高揚感、戦争、童話的世界、男と女、光と闇、まさにまとめの6本目に相応しい。
光る紙に手を触れ、横の男性がニヤリと笑い、逃亡→赤ちゃんの流れは本当にホラーだった。
木の葉の落ちた池の魚は『霧の中のハリネズミ』の答えだったのか。
わからないからこそ考え深みにハマる。
考えれば考えるほど面白くなっていく『劇場版 バーニング』のような作品。
何故か共感してしまう自分もいたりいなかったり…

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唐揚げ

3.0 はじめてみるもの、ふれるもの、それは素敵なたからもの。

2020年5月6日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

2020年5月6日

映画 #話の話 (1979年)鑑賞

ロシアを代表する世界的アニメーション作家ユーリー・ノルシュテイン監督の作品。セルロイドに緻密に描き込まれた切り絵をベースにした短編アニメ。

反戦映画。代表作のひとつで狼の子を狂言回しに戦争の引き起こす悲劇と平和の大切さを描いた寓話的叙情詩

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とし

4.5 旅の終わりにふさわしい1本

2017年9月22日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

監督作品6作目、ノルシュテインの監督業の軌跡を2K修復画像でたどる旅も今回が最後になる。
また過去の5作品がほぼ10分ほどで完結したことに比べると、今回は29分とかなり長い。

灰色オオカミの子どもがなんらかの行動をしている「話」を軸として、絵のタッチは和紙に淡い線で描かれたようでどこか現実離れした場所で巨大な牛に縄跳びの縄を回してもらい少女が飛び跳ねている不思議な「話」、出征する兵士たちとその妻たちの「話」、青りんごを食べる子どもが自分の食いかけのりんごをカラスにも分け与える「話」の3つが絡む。そこで「話の話」というタイトルなのだろうか?
それぞれの「話」で絵柄が全く違うところも本作の見所の1つである。
お話に出てくる家はノルシュテインが幼少時に住んでいた家らしいので、おそらく灰色オオカミはノルシュテイン自身を投影したキャラクターなのだろう。
物語は乳を飲む赤ん坊のアップのシーンから始まり、灰色オオカミが泣き叫ぶ赤ん坊をゆりかごに寝かせてあやす。その後上記の他の3つの話が順番に登場し、誰もいなくなった家から橋へと画面がパンをする。姿は見えないもののノルシュテインが幼少時に好きだったという汽笛などの蒸気機関車の音とともにタンゴが流れてきて「話」の幕は閉じる。
ナレーションも一切なく時系列で物語が進むわけでもないのでいささかとりとめのない印象を受ける。
共同監督ではあるが、ノルシュテインの監督第1作目『25日・最初の日』にも授乳するシーンはあったが、前回は焦点が当たっていたのは母親だったのに対して本作では赤ん坊に焦点が当たっているのが興味深い。
シーンとシーンをつなぐ道具として、またこの物語の象徴として登場する青りんごが、雨に濡れそぼるシーンが2度ほどあるがどのような意味が内包されているのだろうか。

前作『霧の中のハリネズミ』では水のシーンは実写合成だった。
本作では1枚の葉が水上に舞い落ちるシーンがあるが、ノルシュテインはそれを墨の濃淡のような卓越した技法で表現した。やはりここにも前作と同様に水墨画の影響が見て取れる。
難解な作品と言える。が、だからこそ観た人それぞれが、美しい映像から紡ぎ出されるいずれかの「話」に幼少時の想いを馳せることができるかもしれない。

第3作目の『キツネとウサギ』以来、奥さんのフランチェスカを美術監督に迎えて二人三脚で作品を制作しているわけだが、実は美術はこのフランチェスカが1人で担当しているようだ。
インタビューおいてノルシュテインが奥さんを「オーチンハラショー」と誉め称えていたのも当たり前である。奥さんなくして彼の偉業はありえないのだから。
フランチェスカは出征する兵士たちと妻たちがタンゴを踊るシーンをわずか1日で描き上げたそうだ。

今回筆者が鑑賞した2K修復版Blu-rayは去年ノルシュテイン生誕75周年記念として日本で上映された映像をソフト化したものである。
フィルム上のゴミやキズを取り除いただけでなく色味もノルシュテインが記憶する当時の色に近付けている。
ソフト化に当たっては上映時からさらに1度補正をしてノルシュテインの承認を得ているようだ。
またDVD版には監督作品6作の他にノルシュテインがスタッフとして参加した『愛しの青いワニ』と『四季』が収録されているが、それらは本来彼の監督作品ではないことを考えれば今回2K修復してソフト化する際に収録から外されても問題ないだろう。

以前TV東京の番組『Youは何しに日本へ?』を観ていたところ、ノルシュテインを知らないスタッフがタイトル通りに彼にインタビューをしたわけだが、松尾芭蕉を愛し「芭蕉は単なる俳人でもなく旅人でもなく僧であり人生の奉仕者」であると深く理解している彼はたびたび日本を訪れているようである。
今年76歳の彼が1980年からかかりきりのゴーゴリ原作の『外套』はいまだ完成していない。
正直なところノルシュテインに残されている時間は短いだろう。一ファンとしてなんとしても完成してほしいと願うばかりである。

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曽羅密