青い山脈(1949)のレビュー・感想・評価
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噂から恋が始まり、思い込みから因習が打破される。
1949年。今井正監督。東京から私立の女学校にやってきた女性教師はある日、クラスの生徒(東京からの転校生)にきた男性からの手紙が生徒のいたずらだとわかったことから、男女交際が悪いわけではなく、いらずらこそが卑劣であると厳しい口調で説諭。すると、学校の品位や伝統を重んじる大多数の女生徒から反発の声があがり、保護者や町の有力者を巻き込んで大騒動になっていく、、、という話。
都市と農村の対比を前提に、学校の品位や伝統という名の封建的な因習に真っ向から立ち向かう気骨ある女性教師が、徐々に仲間を増やしていくのは物語の定番。また、いたずらの背景に、実際に当該生徒が高等学校の男子生徒と異性交際になりかけている事実があるというのもミソで、まったくの捏造ではない思い込みから噂が生まれ、噂との関係で事実が出来上がっていく。最後にすべてが明らかになったとき、噂はどうなるか、思い込みはどうなるかという興味が物語を駆動する。これも定番。
高校生と女学生の関係、女性教師と地元医師との関係、大人の権力関係、女性たちの分裂、など話が大きくなるところまでで前篇は終了。うまくできている。
ちなみに、大柄でのびのびとした準主役といっていい杉葉子、元祖「眼鏡女子」というべき若山セツ子、凛としたたたずまいの飯野公子、真面目青年の伊豆肇といった東宝ニューフェイスの面々がたくさん出演している。
民主主義の精神は更に拡張される時代になったのだと思います そろそろ21世紀の「青い山脈」が撮られるべき時代になったのだと思います
何度となくリメイクされた人気タイトルのオリジナルはこの今井正監督の1949年版です
日本映画のオールタイムベストにリストアップされているのも本作です
調べてみるとこうでした
本作を入れて都合5回の映画化です
つまり超人気コンテンツです
監督、雪子、沼田、新子、六助、配給
1949年版
今井正、原節子、龍崎一郎、杉葉子、池部良、東宝
1957年版
松林宗恵、司葉子、宝田明、雪村いづみ、久保明、東宝
1963年版
西河克己、芦川いづみ、二谷英明、吉永小百合、浜田光夫、日活
1975年版
河崎義祐、中野良子、村野武範、片平なぎさ、三浦友和、東宝
1988年版
斎藤耕一、柏原芳恵、舘ひろし、工藤夕貴、野々村真、松竹
さすがに東映版はないですねww
こうしてリスト化してみると、配役だけでそれぞれが本作のオリジナルをベースに、どこに焦点を当てて色付けして映画化しようとしたのかが伺えてきますね
原作は1947年6月から10月にかけて朝日新聞に連載された小説です
つまり新憲法が施行された翌月からの連載だったのです
戦後民主主義の教科書として当時大変な人気を博したそうです
その最初の映画化ですから、映画も大ヒットするのは当然でしょう
新憲法の精神を象徴する存在だったのだと思います
原作者の石坂洋次郎は弘前の生まれで、当地で女学校の教員であったので本作の女学校のモデルはそのときの記憶であろうとされているそうです
本作はこの原作を少しアレンジしながらも真っ正面から取り上げて、民主主義の日本をこれからこの若い世代が作り上げていくのだというメッセージに溢れています
本作は実は2部構成になっています
前編は本作で新子編と冒頭にでます
後編は「續青い山脈」のタイトルになっています
前編は1949年7月19日公開
後編は1週後の7月26日公開です
後編の冒頭には10分程度の前編のあらすじがあり東宝マークがでて改めて始まります
前編は93分、後編は83分ですから都合3時間もの超大作です
でも面白くて、演出もよくてダレもせずあっという間に観終えてしまいます
前編の主題歌はご存知超大ヒット曲「青い山脈」
後編の主題歌は「恋のアマリリス」
こちらは殆どの人が初めて聴く歌だと思います
原節子は29歳
当時の感覚だと既にオールドミスなのだと思いますが、もちろん若くて美しいです
梅太郎役の木暮実千代が彼女を初めて目にするシーンでこれは勝てないと一瞬で諦めるシーンが納得です
小津安二郎監督の「晩春」に出演するのは、本作の2ヵ月後のことになります
ラストシーンのプロポーズのシーンは心に残る名台詞です
「青い山脈」は1988年版以降はリメイクされていません
もはや現代性を持ち得なくなってしまったからだと思います
1988年版ですでに相当な無茶を重ねて映画に無理矢理したという印象です
本作公開から74年が経ちました
改めて民主主義がなんであるのかを映画にする意味なんかなくなっていて当然なのだと思います
そう思っていました
でも果たしてそうなのでしょうか?
LGBTへの差別発言で総理秘書官がすぐさま解任されたニュースがつい先日ありました
憲法には結婚は両性の合意によると書かれてあります
もし21世紀の「青い山脈」があるとしたら偽ラブレター事件は同性の間で巻き起こるのかも知れません
雪子先生と沼田先生も同性となるのかも知れません
民主主義の精神は更に拡張される時代になったのだと思います
そろそろ21世紀の「青い山脈」が撮られるべき時代になったのだと思います
戦後日本の未来を明るく照らした躍動感あふれる今井作品
戦後日本映画で評価が高かった今井正監督作品とは縁が薄く、ほんの数作品しか鑑賞していない。そんな後ろめたさがありながら、この終戦4年後に制作された「青い山脈」だけは、当時の日本人が未来に抱いていた希望を、躍動感ある明朗なタッチで描き切った清々しさがあり、とても映画的で感動した。民主主義を育てようとする作者たちの熱き意図が、明るく堂々と描かれている。その純真な精神は、40年近く隔てた現在からすれば単なる青臭い若者論の常識程度に過ぎない。しかし、その精神的支柱を間違えなかったから、現在の発展があったと考えれば、無下に古臭いと批判するのも粋ではないだろう。特に演出技巧が優れているわけではないが、作品の出来以上にその内容に惚れてしまった。役者では、原節子が知性的な美しさを余すところなく表現していて強烈である。
1985年 2月11日
やっぱりオリジナル!
ようやく今井正版を見ることができた。女優陣が皆綺麗で色っぽい。
戦争直後だと感じられる台詞がいっぱい。民主主義が何たるかもわかってない時代だけに、戦争がもたらした開放感さえ感じられるのだ。島崎(原)が俗物的な町医者沼田(龍崎一郎))の発言に対して平手打ちをするところ、新子や下級生の和子(若山セツ子)の男に対する心理というのも手に取るようにわかる内容。芸者の駒子だって艶めかしくてたまらない。理事長もしてる町の実力者に弄ばれて妊娠だなんて、かなりシリアスなのだ。
続編があるけど、この映画そのものでは完結してないので、前後編のような扱い。理事会の前に対決姿勢をとる両者の作戦会議が対照的で、沼田が夜道で襲われるところでプツリと終わっている。
余分と思える箇所も全て伏線となっているくらい丁寧な作り。どうしてリメイクがダメなのか、このオリジナルを見てよくわかった。
池部良にハマりました
この作品で初めて池部良を見て、なんてカッコいい人だろうと思い、すっかりハマってしまいました。
金谷家で食卓を囲みながら新子との事を聞かれている時の、六助が箸を両手で持って唇の下にグリグリしてる仕草がすっごく可愛くてニヤニヤしちゃいました。
この時33歳だったというのに18歳の高校生役を見事に爽やかに演じていて、カッコ可愛い六助にずっとキュンキュンしてました(笑)
●ダビデとゴリアテ、いつの世も。
田舎と都会。新と旧。男と女。個人と集団。対立構造がわかりやすい。勝手に青春ど真ん中映画だと思ってたから、意外だった。ラストも考えさせる終わり方で、なかなか斬新。原節子や池部良がまぶしい。
実に6本ものリメイクと続編が作られた人気作。88年版に至ってはメチャクチャ現代風にアレンジされてる。バブリーな香りもするので、こっちもちょっと観たくなった。
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