街の野獣(1946)
劇場公開日:1946年9月24日
解説
休養中だった小坂哲人演出作品。
1946年製作/78分/日本
配給:松竹
劇場公開日:1946年9月24日
ストーリー
夜となく昼となく疾駆する京阪国道のトラックの群、そのトラックの一つ、斎木産業発送の見返り物資の絹製品を満載したトラックをある日強盗団のために襲われた。ところが時を移さず活動を開始した検察陣に未だ何等の手がかりも得られない。新任の若き検事渋谷徹はこの事件の背後に大がかりなギャング団の伏在しているのを看破ると、断乎、彼等の撲滅を決意する。だが、渋谷には復員後間もなく自暴自棄になって家を飛び出して、今ではかなり闇師の間で顔役となっている弟竜吉がある。ある日、渋谷検事は資本家であり、政界のボスである斎木産業の社長斎木の行動に不審を抱き、斎木の用心棒の如く付き添っている馬淵権三の行動を詳細に監視した結果、実は斎木と共謀している馬淵がこの重大事件の首謀者であることを突き止める。かくて盗まれた尨大な物資は馬淵の手から闇師の手へと次々に張りめぐらされ網の目をルートに流れて行くのであった。皮肉にも斎木の一味に加わって闇師に転落していた竜吉は兄の徹が検挙しようとする斎木や馬淵の犯行を偽りの証言によって妨害する。一方竜吉に惚れ込んでいる酒場のマダム、白木マスミは実は斎木の囲い者で嫉妬した斎木は、始め竜吉を片腕の如く信頼していたものの、次第に邪魔者視するようになって来た。悲境に陥った竜吉の胸に蘇って来るものは、やさしい母親の姿であり、愛情に充ちた兄の徹のことであり、また竜吉を心からもてなしてくれるミチ子のことであった。すると勃然と竜吉の胸に彼等ギャング仲間の醜行に対する憎悪が燃え上がって来た。かくて竜吉は敢然、斎木一味の悪徳の暴露を決意する。だが、これは竜吉自身の死を意味していた。マダムの内報を得て渋谷検事は厳粛な面持ちで、今やこの民衆の敵であり竜吉を死に至らしめた悪徳者ギャング団一味に対して徹底的な掃滅を決意して勇躍起上るのであった。