花の慕情

劇場公開日:

解説

吉屋信子の「花」から、池田忠雄・杉田彰・沢村勉の三人が脚色し、「脱獄囚」の鈴木英夫が監督、「女であること」の飯村正が撮影したラヴ・ロマンスである。「東京の休日(1958)」の司葉子、「弥次喜多道中記」の宝田明・草笛光子、「杏っ子」の三井美奈に、杉村春子、千秋実、長岡輝子などが出演する。いけ花指導は勅使河原蒼風。色彩はイーストマン・カラー。パースペクタ立体音響。

1958年製作/97分/日本
原題または英題:The Flower
配給:東宝
劇場公開日:1958年8月5日

ストーリー

堂本梢は二十四歳、華道の才に恵まれ、新葉流の父亡き後代って多くの子弟に花を教えていた。花福の店主矢波は、梢の容貌と気品に惹かれ、店の二階を花の教室に提供していた。また料亭をやっている義母の梨枝は二代目を継ぐ息子浩太郎のためにも、梢の将来に大きな期待をかけていた。だがこの目算も、浩太郎が学友の淳二と冬山で遭難死したことからすっかりはずれた。捜査が続けられ山小屋で待つ間、梨枝は淳二の兄慎一が山へ行くことを保証したことから、慎一を恨み、母の松代を罵った。間もなく、梢は新葉流の二代目家元を継ぐことになった。そして、矢波との結婚話がもち上った。が、梢は気が進まなかった。出稽古の帰り、梢は慎一に出会った。慎一をわが家に招じ入れた梢は、彼に各流家元のいけ花展覧会に出品する写真を撮ってくれるよう頼んだ。当日、梢の作品を写し終えた慎一は梢と会場を見て廻った。その姿を、会場へ姿を現わした梨枝と矢波は、苦い顔で眺めていた。また松代も、梢に今後一切慎一とつきあわぬよう電話して来た。翌日、そのことを詑びに来た慎一に、いまや花一筋に生きる決意の梢は求婚を退けた。数日後、慎一の妹藍子は、慎一が傷心のあまり静岡の友人宅に身を寄せていることを告げた。それを聞いた梢の気持はまた乱れ、静岡へ向った。帰途、慎一は発病し梢の別荘で看護を受けた。旬日後、稽古に出向いた梢は、稽古がとりやめになっていることを聞かされた。というのは、二人が別荘にいることを中傷する文書が会員に配布され、品行の悪い梢から授業を受けることを拒否されていたのだった。矢波もまた、結婚話が聞き入れられないとみると、堂本家も別荘も自分の金から出ていることを告げ返還を迫った。矢波に返す家の登記書類を女中に託すと、梢は姿を消した。彼女は南伊豆の山深いところに落着いた。一カ月も過ぎたある日、梢は宿に泊りあわせた老人に呼ばれた。それは彼女のいけた花に眼をみはった斯界の権威菱川華翁だった。話を聞いた翁は、慎一と結婚して再び花で世に出るよう力づけた。丘陵の道を歩きながら梢が決心に明るい微笑を浮べた時、前方から慎一の駈けつける姿が眼に入って来た。

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