「新しいヒーロー誕生の熱気、そして興味深い渡辺プロ誕生時の物語」嵐を呼ぶ男(1957) Kazu Annさんの映画レビュー(感想・評価)
新しいヒーロー誕生の熱気、そして興味深い渡辺プロ誕生時の物語
井上梅次原作・脚本・監督による1957年製作(100分)の日本映画。
原題:The Stormy Man、配給:日活。
やはり、前日にライバルの仲間に左手を痛めつけられてドラムが遂に叩けなくなった石原裕次郎が、少し間を置いて「オイラはドラマー」と左手でドラム叩きながら歌を歌い出すシーンは逆転性もあってなかなかの設定。爽快感もあった。
北原三枝のマネージャーと裕次郎のドラマーの関係は、 1956年に渡辺プロダクションを興した渡辺美佐(当時は曲直瀬)とベーシストの渡辺晋の関係をモデルにしたとか。
しょっぱなのシーンで、後に歌手として更に作曲家として活躍する平尾昌晃が歌っていた。ジャズ喫茶で歌っていところを渡辺美佐と井上監督に見そめられたとか。この映画のストーリーみたいだ。
裕次郎演ずる主人公国分正一が、北原三枝との仲取り持つからと、金子信雄演ずるジャズ評論家に自分の売り込みを持ちかけていたのが、興味深かった。決して正義感溢れる若者ではなく、売れるためには、際どいことも平気でするというキャラクター設定なのかと!あと、ジャズ界で売れるには、実力以上に評論家の後押しが重要との認識を、この映画では堂々とうち出していたのも、少々驚ろかされた。まあ、事実なんだろうけど。
また、いい年をした主人公裕次郎が、母親に自分がしていることを評価してもらえないと不貞腐れていたのにも、自分的には随分と驚かされた。エデンの東(1955)のジェームズ・ディーンみたいに親離れ出来ない主人公が、当時の流行りだったのか?
チャーリー・桜田役は紅白歌合戦8回出場ののジャズ歌手笈田敏夫。裕次郎のドラムの吹き替えは時代の寵児だった白木秀雄が担当。彼、渡辺プロに所属もわがままのせいか解雇され、1972年孤独死。映画のチャーリー役をまるで地でいっている様。チャーリーのドラム演奏は重鎮ドラマーとなる猪俣猛。裕次郎のドラム指導は当時のジャズブームの火付け役ジョージ川口で、留置場のワンシーンでジャズマンでもあったフランキー堺も出演と、当時の有名ドラマー多くが関与とか。
まあ映画自体はそれ程のものとは思えないが、何と言うか、新たなヒーロー誕生の熱気の様なものは、感じさせられた。また芸能マネジメントの激しい競争や暴力との絡み等、胡散臭さも垣間見れて、とても興味深くもあった。
監督井上梅次、脚色井上梅次、西島大、原作井上梅次、製作児井英生、撮影岩佐一泉、
美術中村公彦、音楽大森盛太郎、録音福島信雅、照明藤林甲、編集鈴木晃。
出演
石原裕次郎国分正一、青山恭二国分英次、小夜福子国分貞代、北原三枝福島美弥子、岡田眞澄福島慎介、高野由美福島愛子、芦川いづみ島みどり、山田禅二島善三、天路圭子有馬時子、白木万理メリー・丘、笈田敏夫チャーリー・桜田、金子信雄左京徹、市村俊幸持永、冬木京三種田、高品格健、峰三平乾分A、榎木兵衛乾分B、光沢でんすけ乾分C、八代康二乾分D、三島謙マネージャー滝、木戸新太郎バーテン矢野、寺尾克彦バーテン、柳瀬志郎吉田、二階堂郁夫長谷、林茂朗木村、加藤博司、汐見洋大熊教授、早川十志子福島邸の婆や早
、竹内洋子バーの女、小柴隆凡太郎、坂井一郎ボーイ、紀原耕留置所の警官、衣笠一夫浮浪者、阿井喬子テレビの女アナ、東郷秀美テレビのフロマネ。