わが町(1956)
劇場公開日:1956年8月28日
解説
フィリッピンでドショッ骨を鍛えあげた男が、人力車の梶棒を握り、娘と孫娘を意地と正義で育てあげる男一代記。織田作之助の原作を「好人物の夫婦」の八住利雄が脚色、「洲崎パラダイス 洲崎パラダイス 赤信号」の川島雄三が監督、同じく高村倉太郎が撮影を担当。出演者は「六人の暗殺者」以来の辰巳柳太郎「太陽の季節」の南田洋子、「志津野一平 謎の金塊」の高友子、「花の運河」の大坂志郎、「洲崎パラダイス 洲崎パラダイス 赤信号」の三橋達也など。なお文筆界の粋人菅原通済も出演。
1956年製作/98分/日本
配給:日活
劇場公開日:1956年8月28日
ストーリー
明治三九年、フィリピンのベンゲット道路建設に働く佐度島他吉は警官と争ったため追放、日霧戦役大勝に酔う大阪天王寺の裏長屋に人力車と風呂敷包み一つで戻って来た。落語家〆団治、後家のおたかなど長屋は相変らずむさ苦しい。出航する前夜、情を交したお鶴が四つになる初枝を抱え苦労していると聞いた他吉は一時の意地もどこへやら。お鶴に代って夜店に出るようになる。やがてお鶴は急病で倒れ、他吉の鉄火ぶりを案じつつ息を引取る。その後二十年の歳月は流れ大正十五年。梶捧一筋に他吉の丹精の甲斐あり初枝も立派に成長、若者新太郎と二世を誓う仲となる。おたかの耳打ちでかんかんになった他吉も、自分とお鶴の仲を考え、二人を結婚させてやる。だが家を焼け出され他吉の許に転り込んでから腰抜け同然の新太郎。他吉は業を煮やし初枝や〆団治の反対を押し切って彼をフィリピンへ出稼ぎに行かせる。身重な初枝を庇い稼ぎまくる他吉の処にある日新太郎客死の報。初枝はそのショックで父を恨みつつ死ぬ。遺児君枝を片手に他吉は梶棒を握り続ける。初めは祖父を怖がり、いじけて、同じ親なし子の夕刊配達次郎とばかり遊んでいた君枝も、いつか他吉に懐いて来る。やがて第二次大戦勃発、他吉の心はペンゲットにとぶがそれも甲斐なく終戦。GIを乗せて稼ぐ他吉も年には勝てず君枝はタクシーのサーヴィス係。彼女はある日、サルベージ会社で潜水夫をしている次郎に逢い、他吉の望む日の丸湯の息子との縁談もよそに愛し合う仲となる。次郎がマニラに行くと知り他吉も二人の仲を許す。その頃、君枝の売り払った大切な俥で〆団治がポン引をしているのをみつけた他吉は怒って乱闘の末、大怪我。自分がフィリピンへ行く積りで貯めた金を使えと次郎へ遺書を残し、瀕死の身で何処かへ出かける。閉館したプラネタリュウム館で他吉の死体が発見されたのはその日の深更だった。