劇場公開日 1956年1月29日

「草食系かと思いきや、ちょっとだけ肉食の早春物語。 間違ってレンタル。」早春(1956) きりんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0草食系かと思いきや、ちょっとだけ肉食の早春物語。 間違ってレンタル。

2024年10月25日
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鑑賞方法:DVD/BD

映画の始まりに流れるタイトルが佳いんですよねぇ、
麻布の紗に、白字の筆で、担当者と配役の役者の名前。
清廉な音楽が流れます。
「小津映画の世界」に、とっぷりと我らを誘ってくれます。

でも失敗!
初めて借りたDVDのつもりでしたが、見れば見るほど既視感が!😱
矢張り、すでに以前に借りたものでした。
またやっちゃいましたねー。
小津作品は、「題名」がどれもこれも似かよっていて“薄味”なんですから、ついつい、どの作品を観たのか忘れてしまうのです。どれもこれも同じ人が出ているし(笑)
それで、間違ってレンタルしてしまいました。

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でも平々凡々な庶民の暮らしや、サラリーマン稼業って、日々繰り返しの毎日で、こんなものなのかも知れません。

目覚ましで起きて、隣にはいつもの愛妻。
蚊取り線と蚊帳。
お向かいにはいつもの杉村春子がいて、あの声が聞こえる。
決まった電車で出社すると、上司は東野英治郎。

「きみ、電車一本早く出社するのもたまにはいいもんだね」。
「東京駅の利用者数は34万だそうだよ」。

駅に向かうサラリーマンたちは、草むらの空き地を抜けて、土の道を集まってくる。
こういう「昔の日本の光景」を見るのも乙なものです。
今や草むらも砂利道もありません。新宿の乗降者総数は、日に350万人だそうですから。

会社勤めをしながら家族を養い、
会社勤めに疲れて早春の誘惑に手を出す。
サラリーマンは今も昔も、あいも変わらずです。

勤め人、脱サラしたトリスバーのマスター、戦地帰りの先輩の不遇、左遷、倦怠期、エトセトラ。
戦後の庶民の新しい生活を小津は観察しています。

小津安二郎本人は、サラリーマンの経験はあったのだろうか? 浮気や不倫の経験は?

⇒ 彼は大店のボンボンで、学校に行かずに映画館に通い、代用教員を経て松竹に入ったようです。
生涯未婚でお母さんと暮らしたそうです。

故にか、
小津映画は全般にあっさりした作風で、どこか一歩引いていて、ドロドロにははまり込まないですよね。
ハッピーエンドっぽい小津の脚本なのですが、まさかあっけらかんと本気で、「淡島千景が夫婦関係を修復したのだ」と思っているのでは?と、僕は小津さんのお考えが心配になります。

きりん