赤線基地
劇場公開日:1953年12月8日
解説
「続思春期」の田中友幸の製作になり、「夜の終り」の谷口千吉監督になる基地問題の映画で、谷口千吉と新人木村武(1)が脚本を書き、「母と娘(1953)」の飯村正が撮影に当っている。音楽は「獅子の座」の団伊玖磨。出演者は「青色革命」の三國連太郎、「アナタハン」の根岸明美、「続思春期」の小林桂樹、青山京子、中北千枝子、ほかに東宝第五期ニューフュースの川合玉枝がデビューする。
1953年製作/90分/日本
配給:東宝
劇場公開日:1953年12月8日
ストーリー
十年ぶりに中共から帰還してきた河那辺浩一は、懐しい故郷、富士山麓御殿場の余りにも変り果てた姿に驚いた。家には祖父、母、弟妹達が健在であり、上の弟杉男は既に結婚して役場に勤めていたが、父は亡き人になっていた。土地は射撃場に接収され、生活に困窮して離れをGI相手の女由岐子に貸してあった。彼は十年間思い続けてきた恋人ハルエの消息を聞きただすが、皆言葉を濁して答えなかった。妹の静江は浩一の幼な友達で小学校教師の上西と婚約の仲だったが、パン助に宿を貸しているという理由で破談となった。浩一は由岐子に立退きを要求するが、好きでこんな商売をしているわけでないという返事しか聞けなかった。しかも尋ねていたハルエが黒ン坊の子供と、浩一の弟で情夫の健吉を連れて由岐子の許へ尋ねてくる。悄然とする浩一の姿に、由岐子はさすがに同情の眼ざしを注ぐのだった。上西は親類が如何に反対しようと静子と結婚すると誓い、浩一もまた新天地を求めて東京に出る決心をする。真面目になるから一緒に連れて行ってくれとしがつく由岐子を、浩一はふりきるように引き離すが、翌朝杉男や母に別れを告げて乗ったバスの中には、うって変った地味な身なりの由岐子が乗りこんでいた。浩一は話しかけようとするが、その時響き出した砲声に妨げられた。秀麗な富士を包んで轟く砲声が何時止むともなく続く中を、無言の浩一と由岐子を乗せてバスは駅へ向つて走って行った。