怪談おとし穴
劇場公開日:1968年6月15日
解説
「喜劇 初詣列車」の舟橋和郎がシナリオを執筆し、「ラーメン大使」の島耕二が監督した怪談もの。撮影は「毒薬の匂う女」の小原譲治。
1968年製作/78分/日本
原題または英題:The Pit of Death
配給:大映
劇場公開日:1968年6月15日
ストーリー
倉本治夫は、月商数十億円を誇る日本貿易の業務部長。鋭敏明晰な頭脳と抜群の行動力で、出世街道を驀進する若きエリートだった。社長の信頼も厚く、やがて社長令嬢みどりと結婚した。世界一周の豪華新婚旅行から帰った翌日、倉本は一人の男の訪問を受けた。男は文書部に勤務していた西野悦子の兄だった。彼は悦子が失踪したことや妊娠していたことに心当りを求めてやって来たのだった。倉本は西野を冷たくあしらった。社内に異変がおこったのは、それからだった。深夜無人の文書部室からタイプの音が響き、悦子が使っていた席に坐るタイピストは次々と体調をくずしていった。悦子の怨霊だと騒ぐ部下を叱り、倉本は不敵に微笑んだ。悦子を殺害したのは、その倉本だった。倉本は悦子と婚約していたが出世欲には勝てなかった。倉本は南米のバイヤーと年間九十八万ドルの契約を結んで、社長に認められたが、その蔭には悦子の肉体提供という犠牲があったのだ。やがて悦子は、倉本とみどりの結婚話が進んでいることを知り、倉本に結婚を迫った。悦子を捨てるかそれとも出世を諦めるか。倉本は綿密な計画を練り、悦子を深夜の会社に呼び寄せた。屋上と地下を結ぶパイプシャフトに投込まれた悦子の死体は、誰にも発見されなかった。ある夜、倉本が一人会社で残業をしていると、タイプの音が聞えてきた。だが文書部に人影はなく何の異常もなかった。ところが次の一瞬、倉本の顔が蒼ざめた。何気なく触れた椅子に、ぬくみがあったからだ。時計は悦子を殺した時刻を指している。そして彼が目をやるところすべてに、自分を見つめる悦子の顔があった。さすがの倉本も錯乱した。幻覚か、誰かの策謀か、あるいはまだ悦子が生きているのかも。倉本は死体確認に地下室に降りていった。そこには、西野が待ち構えており、追いつめられた倉本は、自分が悦子にしたようにパイプシャフトに落ちていった。