「12人の怒れる豪華俳優たちの私刑シーンに涙が…」オリエント急行殺人事件(1974) KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)
12人の怒れる豪華俳優たちの私刑シーンに涙が…
もう何度観たか分からないこの作品だが、
たまたまイギリスTV版の
「オリエント急行殺人事件」を観たので
比較として改めて鑑賞した。
しかし、視点の全く異なる作品だった。
上映時間の問題もあるだろうが、
TV版ではアームストロング家関係者の
一人一人のプロフィールには
あまり重点を置いてはいない。
むしろ、犯人12人の心情への寄り添いと、
真実・社会的正義との狭間の中で葛藤する
ポアロの苦悩に焦点があり、
シリーズ最終回でのポアロ自らの私刑行為
との関連から判断すると、これも価値ある
「オリエント…」のように感じた。
さて、今回のルメット版の鑑賞、
これまで、これほど涙を誘われた事は
無かったような気がする。
犯してはならない行為と
理屈では理解するものの、
ポアロの聴き取りと12名による私刑のシーン
では、丁寧に描かれた犯人それぞれの
愛する人への想いが思い出され、
涙が溢れるばかりだった。
その後、
ケネス・ブラナー版も公開されたが、
全体構成や演出の上手さによる
作品の完成度、
そして、感情を揺さぶられるとの点では、
やはりこのルメット版が
一番ではないだろうか。
シドニー・ルメット監督には、
「十二人の怒れる男」「狼たちの午後」や
「旅立ちの時」等々、
たくさんの名作で楽しまさせて頂いたが、
改めてこの作品の完成度の高さに、
名作に浸ることの出来た喜びを感じる
鑑賞となった。
因みに、
私のシドニー・ルメット監督のベストワンは
「プリンス・オブ・シティ」です。
KENZO一級建築士事務所さん
初めまして
「男はつらいよ」等 私の拙いレビューに
共感をくださいましてありがとうございました。
アガサ・クリスティ作品のファンなので
素晴らしいレビュー嬉しいです。
私もイギリステレビ版
ポアロはデヴィッド・スーシェ氏の
印象が強いのですが
このルメット監督版
それぞれの心情がよく伝わってきて泣きました。