雲の剣風の剣
劇場公開日:1963年10月5日
解説
「素浪人捕物帖 闇夜に消えた女」の結束信二が オリジナル・シナリオを執筆、「右門捕物帖 蛇の目傘の女」の河野寿一が監督した時代活劇。撮影は、「雲切獄門帳」の松井鴻。
1963年製作/79分/日本
配給:東映
劇場公開日:1963年10月5日
ストーリー
江戸時代中期、不気味に鳴動する富士山は、江戸の人人を不安にしていた。その頃芝増上寺の神君家康の御霊屋から宝剣を盗み出した不敵な男がいた。牟礼大蔵という浪人者である。宝剣は天地正大の剣といい表と裏に風と雲という字が刻まれていた。かって富士浅間神社の宝剣であったものを増上寺に奉納された稀代の名刀なのだ。この事件を知った老中安藤対馬守は、責任問題になるのを恐れ公儀隠密の服部寅次郎に、この難事件にあたらせた。しかし、大蔵の行動を全て見ていた者がいた。己之吉という泥棒である。そして己之吉は、この宝剣を狙って大蔵の後を追っていた。大蔵は小田原の旅宿もみじ屋に急いでいた。そこには大蔵の父富士浅間流の剣客牟礼幽玄斎と娘のおゆうがいた。幽玄斎は富士山が怒るのは、悪政をする幕府に、名刀を奉納したからだと考えていたのだ。宝刀を中に安堵する幽玄斎に、盗賊の己之吉と隠密団の服部寅次郎らが襲ってきた。乱斗の最中、宝剣をもったおゆうは、追いつめられ宝剣を谷底に投げた。それを知った剣客浅間寛四郎が谷底を探すのをよそに宝剣は、山の娘わらびに拾われていた。がその宝剣も風魔の弥藤太に持ち去られた。激動の一夜が明けた。宝剣のゆくえを追う人はかわらない。寛四郎は、富士浅間流を再興するために天地正大の剣が是非欲しかったのだ。お互いに宝剣をゆずれぬ二人は、風魔の首領蚊竜斎の宝剣にせまったが、どうする事も出来なかった。大蔵が蚊竜斎に追いついた瞬間、風と雲が乱れ、天地が鳴動し、太陽が昇ると、剣は大蔵の手の中にあった。宝剣を狙って殺気みなぎる中に、大蔵は“永遠に富士の懐に戻そう”と火口に宝剣を投げ入れた。宝剣を追う人々の静かな目がそれを暖めていた。