陽のあたる椅子

劇場公開日:

解説

佐野洋の原作より、秋山正が脚色、「あの娘に幸福を」の川崎徹広が監督したサラリーマンもの。撮影は、「続社長外遊記」の鈴木斌。

1965年製作/88分/日本
配給:東宝
劇場公開日:1965年3月13日

ストーリー

渋沢夏樹は四十六歳で帝都建設の庶務課長である。誠実さで課長の席を温めてはいるものの、社交下手と上役との疎遠で、彼のもとに来るのは日陰のパッとしない椅子ばかりであった。その彼に、建設会社ではもっとも重要なポスト、経理課長の椅子がまわってきた。しかし、これには、経理課員平川の三百四十万にのぼる横領事件死が原因で渋沢の堅物が適任とされたからだ。陽のあたる椅子、それは多忙な毎日であった。又平川の横領精算の仕事も、渋沢にとって大きな重荷であった。ある日、平川の退職金をあてに妻澄子が、その申請に会社に訪ねて来た。帳簿不正の事実を聞いて驚き途方にくれる澄子に、何とか退職金をと思う渋沢だが、横領繰入れは、動かせないことであった。堅物部長で通る渋沢が、澄子に同情したのも、こうした事実にであった。アパートに訪ねる渋沢、それをむかえる若い澄子。いつか、それは渋沢にとって、想像もしなかった喜びとなった。澄子もこの社会的地位のある中年男に魅せられていった。そんなある日出張先の松島で楽しい旅の記念に撮った一枚の写真が思わぬ波絞を呼ぶことになった。渋沢の旧友で、今は金に困っている荒木が、その写真をネタに「二百万の見せ手形を書いてくれ」とからんだのだ。見返りとして五百万の四人連名の約手を受けとり一時はのがれたものの、やがてその見せ手形も、五百万の見返手形もインチキとわかった。振出し日の翌日から裏書き名が始っているのである。「私を告訴すれば、貴方も馘でしょう」くずれるように坐りこむ渋沢に、荒木の目は冷く光った。アパートを訪ねた渋沢に、澄子までが、変心を露骨にした。「二百万二百万」とうわごとのように言いながら、逃げまわる澄子の首をしめようとした時、以外な澄子の言葉が「やっぱりあなたは最初からすべてを知っていたのね、二百万円で済むなら預金通帳から私が」と嘲笑していた。

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